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・「差し押さえられたら、給料は全部持っていかれる」
・「もう差し押さえられたのだから、今さら何をしても遅い」
こんな不安を抱えている人も多いのではないでしょうか?
しかし、民事執行法152条1項は給料の4分の3にあたる部分は差し押さえてはならないと定めており、法テラスも「手取額の4分の3に相当する部分(手取額が44万円を超える場合は、33万円まで)」は守られると説明しています。取り立てまでにも、差押命令の送達から四週間の猶予があります。
とはいえ、何もしないまま放置すれば、差押えは毎月続き、遅延損害金で借金そのものは増え続けていくのも事実です。
本記事では、差押えで守られる範囲、取り立てまでの期間、裁判所に申し立てられる手続き、そして差押えを止めうる道について、条文と裁判所・法テラスの説明にもとづいて紹介します。
現在すでに差押命令を受け取っている人はもちろんのこと、督促が続いていてこの先差し押さえられるかもしれないという人も、守られる範囲と対応の期限についてしっかりと理解しておきましょう。

会社に、裁判所から給料の差押えの書類が届いたそうです。もう給料は全部持っていかれるんでしょうか。

いいえ。民事執行法152条は、給料の4分の3にあたる部分は差し押さえてはならないと定めています。全額ではありません。

でも、もう差し押さえられた後です。今さら何をしても遅いですよね……。

そう決まってはいません。給料の差押えは、あなたに差押命令が届いた日から四週間経たないと取り立てができない、と裁判所も案内しています。

四週間……。その間に何かできることがあるということですか。

はい。裁判所に範囲の変更を申し立てる道(民事執行法153条1項)と、手続きそのもので差押えを止める道(破産法42条、民事再生法39条など)があります。ただし、いずれも「必ず認められる」ものではありません。
🔎 30秒でわかる結論
- 給料の差押えで守られるのは、法テラスの説明では「手取額の4分の3に相当する部分(手取額が44万円を超える場合は、33万円まで)」。裁判所は同じことを「原則として相手方の給料の4分の1(月給で44万円を超える場合には、33万円を除いた金額)を差し押さえることができます」と説明しています。
- 債権者が実際に取り立てられるのは、あなたに差押命令が送達された日から四週間を経過した後(給料等以外は一週間)。
- 生活に著しい支障が生じる場合は、差押範囲の変更(減縮)を裁判所に申し立てられる(民事執行法153条1項)。ただし裁判所は「申立てがあれば、必ず差押範囲変更が認められるわけではありません」と明記しています。
- 自己破産・個人再生は、条文そのものが強制執行を止める仕組みを持っている(破産法42条1項2項・249条1項2項/民事再生法26条1項2号・39条1項)。一方、任意整理に強制執行を止める条文上の効力はありません。
- 税金・社会保険料の滞納による差押え(滞納処分)は、これらとは別のルールで動きます。
📖 この記事でわかること
- 差押えで「持っていかれない」範囲が、条文と公的機関の説明でどう決まっているか
- 給料・賞与・退職金で、守られる範囲がどう違うか
- 銀行口座を差し押さえられたとき、残高がどう扱われるか
- 差押命令が届いてから、取り立てまでにどれだけ時間があるか
- 差押範囲の変更(減縮)の申立てとは何か、いつまでにするのか
- 差押えを止めうる道と、それぞれの条文の根拠
- 放置した場合に、実際に何が続くのか
そもそも、なぜ差押えができるのか(債務名義)

急に差し押さえられるものなんですか。いきなり来た気がして怖いです。

いきなりではありません。強制執行には、その前提として「債務名義」という書類が必要だと決まっています。
民事執行法22条は、「強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。」と定め、その一つとして「一 確定判決」「四 仮執行の宣言を付した支払督促」を挙げています。また5号は、「金銭の一定の額の支払……を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載され、又は記録されているもの(以下「執行証書」という。)」を挙げています。
つまり、差押えの前には、裁判・支払督促・公正証書のどれかが必ず先にあるということです。裁判所は支払督促について「債務者が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議の申立てをしなければ、裁判所は、債権者の申立てにより、支払督促に仮執行宣言を付さなければならず、債権者はこれに基づいて強制執行の申立てをすることができます。」と説明しています。
💡 ここ、勘違いされがち
「まったく心当たりがない」場合は、届いた郵便を開封しないまま置いていないか、住民票と違う場所に住んでいて書類が届いていなかったのではないか、を確認してください。書類が届いた段階でできることは、「督促状・裁判所からの通知が届いたら?」で条文とともに整理しています。
給料は「全部」持っていかれない ── 4分の3と33万円のルール

4分の3が守られる、というのはどういう計算になるんでしょうか。

条文は二段構えです。原則は4分の3。ただし、その4分の3が政令の額を超えるときは、政令の額までになります。
民事執行法152条1項は、こう定めています。
📖 条文(差押禁止債権)
「次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。……二 給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権」(民事執行法152条1項2号)
この「政令で定める額」は、民事執行法施行令2条1項に書かれています。「一 支払期が毎月と定められている場合 三十三万円」。半月ごとなら16万5千円、旬ごとなら11万円、毎日なら1万1千円です(同項2号・3号・5号)。賞与についても、同条2項が「賞与及びその性質を有する給与に係る債権に係る法第百五十二条第一項の政令で定める額は、三十三万円とする。」と定めています。
この条文を、公的機関は一般向けに次のように説明しています。
📖 公的機関による説明
法テラス:「(2)給料や賞与のうち、手取額の4分の3に相当する部分(手取額が44万円を超える場合は、33万円まで)」(差し押さえることができない「債権」には、どのようなものがありますか。)
裁判所:「例えば、給料の差押えの場合、原則として相手方の給料の4分の1(月給で44万円を超える場合には、33万円を除いた金額)を差し押さえることができます。」(債権執行(債務名義に基づく差押え))
言い方が逆なだけで、同じことを指しています。守られるのが4分の3、差し押さえられるのが4分の1。そして手取額が44万円を超えると、守られる額は33万円で頭打ちになります。表にすると次のとおりです(支払期が毎月の場合)。
| 手取額(月) | 守られる額(差押禁止) | 差し押さえられる額 |
|---|---|---|
| 16万円 | 12万円 | 4万円 |
| 24万円 | 18万円 | 6万円 |
| 32万円 | 24万円 | 8万円 |
| 44万円 | 33万円 | 11万円 |
| 60万円 | 33万円(4分の3が33万円を超えるため頭打ち) | 27万円 |
※民事執行法152条1項・同法施行令2条1項1号、および法テラス「差し押さえることができない「債権」には、どのようなものがありますか。」・裁判所「債権執行(債務名義に基づく差押え)」の説明から計算した目安です。実際の金額は差押命令の記載と裁判所の判断によります。
💡 ここ、勘違いされがち
よく誤解されますが、「33万円までは必ず守られる」わけではありません。条文は「4分の3」を原則とし、その4分の3が33万円を超えるときだけ33万円で頭打ちにする、という書き方です。つまり手取額が44万円を超えると、超えた分はそのまま差押えの対象になっていきます。
① 退職金は「4分の3」だけ(33万円の頭打ちがない)
退職手当については、民事執行法152条2項が「退職手当及びその性質を有する給与に係る債権については、その給付の四分の三に相当する部分は、差し押さえてはならない。」と定めています。1項と違い、政令の額による頭打ちの文言がありません。法テラスも「(3)退職金のうち、手取額の4分の3に相当する部分」と説明しています。
② 養育費などのための差押えは「2分の1」になる
民事執行法152条3項は、養育費や婚姻費用などの扶養義務に係る金銭債権を請求する場合について、「……前二項中「四分の三」とあるのは、「二分の一」とする。」と読み替えを定めています。法テラスも「※請求債権が養育費や婚姻費用の場合は、上記(1)~(3)の差押禁止範囲が2分の1に縮減されます。」と説明しています。つまり養育費の不払いを理由とする差押えでは、守られる範囲が半分に狭くなります。
✅ このセクションのまとめ
給料の差押えで守られるのは手取額の4分の3、手取額が44万円を超えるときは33万円まで。退職金は4分の3のみ(頭打ちなし)。養育費等の請求による差押えでは2分の1に縮減される。
生活が立ち行かなくなる前に、まずは無料相談で現状を話してみてください。
銀行口座を差し押さえられたとき、残高はどうなるか

口座も差し押さえられました。給料と同じように4分の3は残るのでしょうか。

そこは正直にお伝えします。民事執行法152条は「給料等の債権」についての規定で、預貯金そのものに同じ規定は置かれていません。
民事執行法152条1項が挙げているのは、「債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権」(1号)と「給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権」(2号)です。預貯金債権について「4分の3は差し押さえてはならない」と定めた規定は、152条には置かれていません。
ただし、口座の中身が全部なくなるという意味ではありません。法テラスは、預金が差し押さえられた場合について次のように説明しています。
📖 公的機関による説明
「差し押さえられた預金は引き出すことはできません。ただし、預金の額が差押債権の額を上回っていた場合、その上回っている部分は、差押え後も引き出すことができます。なお、差押え後はその預金口座に入金することができますし、差押え後に入金した預金であれば、その預金口座から引き出すこともできます(再度差押えを受けた場合等を除きます。)。」
(法テラス「預金が差し押さえられました。差し押さえられた時点で預金口座に入っていた預金はどうなるのですか。」)
つまり、差し押さえられるのは「差押債権の額」までであり、それを超える残高や、差押え後に入金された分は別の扱いになります。ただし「再度差押えを受けた場合等を除きます」と書かれているとおり、同じ口座がもう一度差し押さえられる可能性は残ります。
年金の振込口座について、法テラスはさらに踏み込んだ説明をしています。「差押命令が振込口座を開設している金融機関に送達される前に、引き出して現金化しておくことが考えられます。また、以後の差押えに備え、振込口座を変更する、振込以外の方法で受け取るなどの対応が考えられます。」。公的機関が示している対応であり、財産を隠すこととは意味が違います。ただし、自己破産を検討している場合は、財産の扱いについて事前に専門家へ確認してください(「債務整理でやってはいけないこと」を参照)。
差押命令が届いてから、取り立てまでにある「四週間」

もう差し押さえられたのだから、明日にでも持っていかれるんですよね。

給料の場合は違います。あなたに差押命令が送達された日から四週間を経過するまで、債権者は取り立てできません。
民事執行法155条1項は、原則として「金銭債権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から一週間を経過したときは、その債権を取り立てることができる。」と定め、155条2項が給料等について「一週間」を「四週間」に読み替えると定めています。東京地方裁判所は、この点を次のように案内しています。
📖 裁判所の案内
「債務者に債権差押命令が送達された日から1週間(給料等債権の差押えで請求債権に民事執行法151条の2第1項各号に掲げる義務に係る金銭債権が含まれていない場合は4週間)経過したときは、取立権が発生し、債権者は第三債務者からその差押債権を取り立てることができます。」
(東京地方裁判所「債権差押命令の申立てをされる方へ」)
| 差し押さえられたもの | 債権者が取り立てられるようになる時期 | 根拠 |
|---|---|---|
| 給料・賃金・俸給・退職年金・賞与・退職手当 | あなたへの差押命令の送達から四週間を経過した後 | 民事執行法155条2項 |
| 預貯金など、上記以外の金銭債権 | あなたへの差押命令の送達から一週間を経過した後 | 民事執行法155条1項 |
※養育費等の金銭債権が請求債権に含まれている場合は、給料等でも「四週間」への読み替えの対象から外れます(民事執行法155条2項かっこ書き・東京地裁の案内)。
💡 ここが動ける時間
この四週間は、あなたのために置かれた時間です。民事執行法145条4項は「裁判所書記官は、差押命令を送達するに際し、債務者に対し、最高裁判所規則で定めるところにより、第百五十三条第一項又は第二項の規定による当該差押命令の取消しの申立てをすることができる旨……を教示しなければならない。」と定めています。届いた書類のなかに、その案内が入っているはずです。
💡 ここ、勘違いされがち
一方で、差押えの効力そのものは、会社(第三債務者)に差押命令が届いた時点で発生しています。民事執行法145条5項は「差押えの効力は、差押命令が第三債務者に送達された時に生ずる。」と定め、裁判所も「差押命令が第三債務者に送達されると、差押えの効力が生じます。」と説明しています。四週間あるのは「債権者が取り立てられる時期」であって、「会社に知られない期間」ではありません。
そのため、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談するようにしてください。
差押範囲の変更(減縮)の申立て ── 裁判所に出せる書類

差し押さえられた金額では、家賃も光熱費も払えません。どうすればいいですか。

その状況のために、裁判所に申し立てる手続きがあります。裁判所自身が説明しているものです。
民事執行法153条1項は、「執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部若しくは一部を取り消し、又は前条の規定により差し押さえてはならない債権の部分について差押命令を発することができる。」と定めています。裁判所は、この制度を一般向けに次のように説明しています。
📖 裁判所の説明
「差押えによって債務者の生活に著しい支障が生じる場合(例えば、生活保護費や年金の振込口座が差し押さえられ、生活が成り立たなくなる場合)などに、差押えの範囲を変更(減縮)する制度として、差押範囲の変更の手続があります。裁判所は、申立てにより、債務者と債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部又は一部を取り消す(差押えの範囲を減縮する)ことができます(民事執行法153条1項)。」
(裁判所「裁判手続 民事事件Q&A」)
ここで、過度な期待を持たないための事実も、同じページに書かれています。裁判所は「債務者が差押範囲変更の申立てをすると、裁判所は、債務者や債権者から提出された資料をもとに、申立てを認めるかどうかを判断します。したがって、申立てがあれば、必ず差押範囲変更が認められるわけではありません。また、差押範囲変更が認められても、債務者の債務が減るわけではありません。」と明記しています。
| 項目 | 裁判所の説明 |
|---|---|
| 申立てをする裁判所 | 債権差押命令を発令した裁判所 |
| 申立ての時期 | 債権者が、第三債務者から差し押さえた金銭債権の支払を受ける前に申立てをする必要がある |
| 判断のしかた | 債務者や債権者から提出された資料をもとに、認めるかどうかを裁判所が判断する(必ず認められるわけではない) |
| 認められた場合の効果 | 差押えの範囲が減縮される。債務そのものが減るわけではない |
出典:裁判所「裁判手続 民事事件Q&A」(差押範囲変更(減縮)の申立てについて)(2026年8月時点)
※裁判所のページには「運用に関する記載は、一例を記載したものであり、記載された内容と異なる運用をしている庁もあります」との注記があります。実際の手続きは、差押命令を出した裁判所にご確認ください。
✅ このセクションのまとめ
差押範囲の変更(減縮)は、生活に著しい支障が生じる場合に差押命令を出した裁判所へ申し立てる制度(民事執行法153条1項)。債権者が支払を受ける前に申し立てる必要があり、必ず認められるわけではなく、認められても債務そのものは減らない。
差押えを止めうる道は、条文に書かれている

借金そのものを整理する方向では、差押えはどうなりますか。

自己破産と個人再生は、手続きそのものに強制執行を止める効力が条文で定められています。任意整理にはありません。
| 道 | 条文にどう書かれているか | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 差押範囲の変更(減縮)を申し立てる | 執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部若しくは一部を取り消すことができる | 民事執行法153条1項 |
| 自己破産(手続開始の決定) | 破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産に対する強制執行……は、することができない/既にされているものは、破産財団に対してはその効力を失う | 破産法42条1項・2項 |
| 自己破産(免責許可の申立て後) | 当該申立てについての裁判が確定するまでの間は……強制執行……はすることができず、既にされているものは中止する/免責許可の決定が確定したときは、その効力を失う | 破産法249条1項・2項 |
| 個人再生(開始の決定) | 再生手続開始の決定があったときは……再生債権に基づく強制執行等の手続……は中止し | 民事再生法39条1項 |
| 個人再生(開始の申立て後・中止命令) | 裁判所は……必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で……中止を命ずることができる | 民事再生法26条1項2号 |
※条文は e-Gov法令検索の原文から引用。いずれも要件を満たし、裁判所が手続きを開始・決定することが前提であり、「申し立てれば必ずそうなる」ものではありません。
任意整理は、差押えを止める条文を持っていない
ここは正直に書きます。任意整理は、法テラスの説明では「裁判所などの公的機関を利用せず、当事者が私的に話合いをして、支払額や支払方法について合意をする手続」とされています。裁判所を通さない話し合いであるため、任意整理そのものに、進行中の強制執行を止める条文上の効力はありません。実務では債権者との交渉のなかで扱われることになりますが、「任意整理をすれば差押えが止まる」と保証することはできません。
なお、弁護士や司法書士に依頼して通知が届いた後の取立てについては、貸金業法21条1項9号が、「弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ……訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること」を禁止しています。ただし、これは貸金業者による取立て行為の規制であって、裁判所を通した強制執行を止めるものではありません。
💡 ここ、勘違いされがち
税金・社会保険料の滞納による差押え(滞納処分)は、別の枠組みです。国税徴収法76条が独自の差押禁止額を定めており、破産をしても租税等の請求権は免責されません(破産法253条1項1号)。税金の滞納については、「税金・国民健康保険料の滞納は債務整理で減る?」で猶予・分納の制度を条文で整理しています。
差押えを止める方法を探しているという方は、少しでも早めに債務整理を検討するのがおすすめです。
放置したら、どうなるのか(淡々と事実だけ)

とりあえず、このまま様子を見るのは……だめですか。

選ぶのはご自身です。ただ、放置したときに何が続くのかは、条文からはっきり分かります。
① 差押えは、翌月以降の給料にも続く
民事執行法151条は、「給料その他継続的給付に係る債権に対する差押えの効力は、差押債権者の債権及び執行費用の額を限度として、差押えの後に受けるべき給付に及ぶ。」と定めています。一度差し押さえられると、毎月、その債権者の債権と執行費用の額に達するまで差押えが続きます。裏を返せば「限度として」と書かれているとおり、その額に達すれば終わります。終わりのない手続きではありません。
② 待っている間に、金額のほうが増える
利息制限法7条1項は、「第四条第一項の規定にかかわらず、営業的金銭消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が年二割を超えるときは、その超過部分について、無効とする。」と定めています。つまり貸金業者からの借入れの遅延損害金は年20%までは有効であり、返済が止まっている間、その割合で増えていきます。差し押さえられて回収される額より増える額のほうが大きければ、いつまでも終わりません。
③ ほかの債権者も、同じ道を通れる
差押えの前提となる債務名義(民事執行法22条)は、債権者ごとに取得されます。1社が判決や支払督促を取ったという事実は、ほかの債権者にとっても同じ道が使えることの裏返しです。また、差押範囲の変更が認められたとしても、裁判所が明記しているとおり「債務者の債務が減るわけではありません」。
💡 事実として
放置は「何も選ばない」ことではなく、「毎月の差押えと、増え続ける遅延損害金を選ぶ」ことになります。範囲変更の申立てには「債権者が支払を受ける前」という時期の制約もあり、動くのが早いほど選べる幅が広い、というのが公的な説明から読み取れる構造です。
会社に知られてしまうことについて

いちばんつらいのは、会社に知られたことです。仕事を続けられるでしょうか。

会社に届くのは、法律でそう決まっているからです。あなたが何かを漏らしたからではありません。
給料を差し押さえるということは、法律上は「あなたが会社に対して持っている給料債権」を差し押さえるということです。そのため民事執行法145条1項は、「執行裁判所は、差押命令において、債務者に対し債権の取立てその他の処分を禁止し、かつ、第三債務者に対し債務者への弁済を禁止しなければならない。」と定め、同3項は「差押命令は、債務者及び第三債務者に送達しなければならない。」と定めています。ここでいう第三債務者が、給料を支払う会社です。
つまり、会社に書類が届くのは手続き上そうなると決まっているからです。なお、差押命令は債務者と第三債務者に送達されるものであり、同僚や取引先に通知される仕組みは条文にありません。家族や会社に知られる経路については、「債務整理は家族・会社にばれる?」で整理しています。
💡 ここ、勘違いされがち
裁判所は「相手方が既に退職している場合などには、差押えはできません」とも説明していますが、退職しても債務そのものは消えません。また民事執行法152条2項は退職手当についても4分の3が差押禁止と定めており、退職金が差押えの対象になりうることが条文から分かります。
債務整理で差押えに対応する場合の、デメリット

差押えを止めるために債務整理をしたら、そのあと何が起きますか。

良いことだけではありません。先に不利な事実からお伝えします。
| 起きること | 内容 |
|---|---|
| 信用情報への登録 | CIC・JICCは契約期間中および契約終了後5年間、全国銀行協会(KSC)は取引情報が契約終了日(未完済の場合は完済日)から5年を超えない期間、官報情報は当該決定日から7年を超えない期間 |
| 官報への掲載 | 自己破産・個人再生は裁判所の手続きのため官報に掲載される(任意整理は裁判所を通さない) |
| 財産の処分 | 自己破産では、破産財団に属する財産は換価される(自由財産の範囲を除く。破産法34条) |
| 保証人への影響 | 免責の効力は保証人には及ばない(破産法253条2項)。再生計画も保証人に対する権利には影響を及ぼさない(民事再生法177条2項) |
| 税金は減らない | 租税等の請求権は非免責債権(破産法253条1項1号) |
※各項目の出典URLは記事末尾の「出典」に記載しています。
特に保証人については、あなたの手続きが保証人の支払義務をなくすことはありません。詳しくは「債務整理をすると保証人・連帯保証人はどうなる?」で条文とともに整理しています。
これらも、範囲と期間が決まっている話です。信用情報の登録はCICで契約終了後5年間、JICCで契約終了後5年以内、官報情報も当該決定日から7年を超えない期間で区切られています。財産の処分も破産財団に属する財産が対象で、破産法34条が定める自由財産の範囲は手元に残ります。一生ついて回るという話ではありません。
それでも、毎月の差押えと増え続ける遅延損害金をそのままにするより、範囲と期間が条文で決まっている手続きに進むほうが、今後の見通しは立てやすくなります。
返済が難しく滞納が長引いてしまう場合は、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
早めに相談したほうがよい状況・待っても変わりにくい対応
早めに専門家に相談したほうがよい状況
- 差押えで生活費が足りず、家賃や光熱費が払えない
- 生活保護費や年金の振込口座が差し押さえられた
- 差押命令が届いたが、心当たりの債務名義が分からない
- 複数の債権者から督促が続いている
- 給料に加えて、口座も差し押さえられている
- 養育費など、守られる範囲が2分の1になる差押えを受けている
待つことで状況が良くなりにくい対応
- 届いた書類を開封せずに置いておく
- 「審査なし」をうたう業者から借りて差押え分を埋める
- 差押範囲変更の申立てを、債権者が支払を受けた後に検討する
- 一部だけ返済して様子を見る(時効が更新される場合がある)
- 差押えが終わるのを待つ(遅延損害金は増え続ける)
よくある質問

細かいところが、まだ不安です。

よく聞かれることを、条文と公的機関の説明にあたりながらまとめました。
Q. 差押えは、給料の全額に及ぶことはありませんか。
A. 民事執行法152条1項は、支払期に受けるべき給付の4分の3にあたる部分(その額が政令で定める額を超えるときは政令の額に相当する部分)は差し押さえてはならないと定めています。法テラスは「手取額の4分の3に相当する部分(手取額が44万円を超える場合は、33万円まで)」と説明しています。ただし養育費等の請求による差押えでは、同条3項により2分の1に縮減されます。
Q. 差押えは、いつ終わりますか。
A. 民事執行法151条は、継続的給付に対する差押えの効力は「差押債権者の債権及び執行費用の額を限度として」差押え後に受けるべき給付に及ぶと定めています。その限度に達すれば終わります。何か月かかるかは、債権額と毎月差し押さえられる額によります。
Q. 差押範囲の変更を申し立てれば、差押えは止まりますか。
A. 裁判所は「申立てがあれば、必ず差押範囲変更が認められるわけではありません」「差押範囲変更が認められても、債務者の債務が減るわけではありません」と明記しています。また、債権者が第三債務者から支払を受ける前に申し立てる必要があります。
Q. 自己破産をすれば、必ず差押えは止まりますか。
A. 破産法42条2項は、破産手続開始の決定があった場合、破産財団に属する財産に対して既にされている強制執行は「破産財団に対してはその効力を失う」と定めています。また249条1項は、免責許可の申立て後の一定の場合に強制執行が中止すると定め、2項は免責許可の決定が確定したときに効力を失うと定めています。ただし、破産手続を開始するかどうかは裁判所が判断しますし、税金など非免責債権に基づくものは扱いが異なります。「必ず止まる」とは言えません。
Q. 差押えが始まったら、もう債務整理はできませんか。
A. 差押えを受けていることを理由に債務整理ができなくなる、と定めた条文は確認できません。むしろ破産法42条・249条、民事再生法26条・39条は、強制執行が進行している状態を前提にした規定を置いています。
Q. 差し押さえられた口座は、もう使えませんか。
A. 法テラスは「差押え後はその預金口座に入金することができますし、差押え後に入金した預金であれば、その預金口座から引き出すこともできます(再度差押えを受けた場合等を除きます。)」と説明しています。ただし、再度差押えを受ける可能性は残ります。
Q. 相談にはお金がかかりますか。
A. 公的な窓口としては法テラス(日本司法支援センター)があり、民事法律扶助では資力等の要件を満たす場合に無料の法律相談や、弁護士・司法書士費用の立替えの制度があります。費用の考え方は「債務整理の費用が払えない…」にまとめています。
まとめ
差押えの書類を見た瞬間の恐怖は、「全部持っていかれる」「もう何もできない」という想像から来ています。ですが公的な説明を読むと、守られる範囲(手取額の4分の3、44万円超なら33万円まで)、取り立てまでの四週間、裁判所に出せる差押範囲の変更の申立て(民事執行法153条1項)、そして手続きそのものが強制執行を止める仕組み(破産法42条・249条/民事再生法26条・39条)が、いずれもはっきり書かれています。
同時に、裁判所自身が「必ず認められるわけではありません」「債務が減るわけではありません」と書いていることも事実です。任意整理には強制執行を止める条文上の効力がなく、税金の滞納処分は別の枠組みで動き、債務整理を選べば信用情報・官報・保証人への影響というデメリットもついてきます。どれが使えるかは事案によります。だからこそ、差押命令の書類を手元に置いたまま、早めに専門家に見てもらうのが現実的です。
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📚 出典(公的機関・法令)を見る
- 民事執行法 第22条(債務名義)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004
- 民事執行法 第145条(差押命令/第3項の送達・第4項の教示義務・第5項の効力発生時期)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004
- 民事執行法 第151条(継続的給付の差押え)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004
- 民事執行法 第151条の2(扶養義務等に係る定期金債権を請求する場合の特例)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004
- 民事執行法 第152条(差押禁止債権/第1項4分の3・第2項退職手当・第3項2分の1読替)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004
- 民事執行法 第153条(差押禁止債権の範囲の変更)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004
- 民事執行法 第155条(差押債権者の金銭債権の取立て/第1項一週間・第2項四週間)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004
- 民事執行法施行令 第2条(差押えが禁止される継続的給付に係る債権等の額/第1項1号 毎月33万円・第2項 賞与33万円)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/355CO0000000230
- 裁判所「債権執行(債務名義に基づく差押え)」(差押えの効力の発生時期・給料の4分の1・月給44万円超は33万円を除いた金額・取立ては送達から1週間/給料は4週間) https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_08/index.html
- 裁判所「裁判手続 民事事件Q&A」(差押範囲変更(減縮)の申立て/申立てをする裁判所・申立ての時期・必ず認められるわけではない・債務が減るわけではない) https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_minzi/index.html
- 東京地方裁判所「債権差押命令の申立てをされる方へ」(取立権の発生=送達から1週間、給料等債権は4週間) https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minzi_section21/sasiosae_mousitate_saiken/index.html
- 裁判所「支払督促」(受け取ってから2週間以内に異議の申立てをしなければ仮執行宣言が付され、強制執行の申立てができる) https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_22/index.html
- 法テラス「差し押さえることができない「債権」には、どのようなものがありますか。」(給料や賞与のうち手取額の4分の3/手取額が44万円を超える場合は33万円まで/退職金/養育費等は2分の1に縮減) https://www.houterasu.or.jp/site/faq/saiban-shikko-003.html
- 法テラス「預金が差し押さえられました。差し押さえられた時点で預金口座に入っていた預金はどうなるのですか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/saiban-shikko-002.html
- 法テラス「口座に入金された年金が、差し押えられる可能性があります。どうすれば良いですか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/saiban-shikko-001.html
- 破産法 第42条第1項・第2項(他の手続の失効等)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075
- 破産法 第249条第1項・第2項(強制執行の禁止等)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075
- 破産法 第253条第1項第1号(租税等の請求権は非免責)・第2項(保証人には及ばない)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075
- 破産法 第34条(破産財団の範囲・自由財産)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075
- 民事再生法 第26条第1項第2号(他の手続の中止命令等)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225
- 民事再生法 第39条第1項(再生手続開始の決定による他の手続の中止)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225
- 民事再生法 第177条第2項(再生計画は保証人に対する権利に影響を及ぼさない)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225
- 利息制限法 第7条第1項(営業的金銭消費貸借の遅延損害金は年2割超が無効)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000100
- 貸金業法 第21条第1項第9号(弁護士等からの通知後の取立て行為の規制)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/358AC1000000032
- 国税徴収法 第76条(給与の差押禁止額)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000147
- 法テラス「任意整理とは何ですか。」(裁判所などの公的機関を利用せず、当事者が私的に話合いをして、支払額や支払方法について合意をする手続) https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-niniseiri-001.html
- CIC「CICが保有する信用情報」(クレジット情報の保有期間=契約期間中および契約終了後5年間) https://www.cic.co.jp/guide/credit-information/possession/
- JICC「信用情報の内容と登録期間」 https://www.jicc.co.jp/aboutus/credit-info/registration
- 全国銀行協会 全国銀行個人信用情報センター「センターの概要」(情報の登録期間=取引情報は契約期間中および契約終了日(完済されていない場合は完済日)から5年を超えない期間/官報情報は当該決定日から7年を超えない期間) https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/about/
- 法テラス(民事法律扶助・無料法律相談) https://www.houterasu.or.jp/
本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の判断は弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。(制度・数値は2026年8月時点)
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