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・「司法書士のほうが安いから、司法書士に頼めば十分だ」
・「借金の合計が140万円を超えていたら、司法書士には頼めない」
任意整理を考えはじめて、こんなふうに思っている人も多いのではないでしょうか?
しかし、どちらも正確ではありません。司法書士法3条1項7号と裁判所法33条1項1号が定める「140万円」は、最高裁判所(平成28年6月27日判決)が「当該債務整理の対象となる個別の債権の価額」で判定すると判断しています。借金の合計額ではなく、1社ごとの金額です。また、弁護士・司法書士の費用に公的な一律料金表はなく、「司法書士なら必ず安い」とも言えません。
とはいえ、1社でも140万円を超える借入先があるのに司法書士に依頼すると、その相手方との交渉は代理してもらえず、途中で頼み直しになるのも事実です。
本記事では、弁護士と司法書士で「できること」がどう違うのか、費用は公的な数字でどう見えるのか、そしてあなたはどちらに頼むべきかを、司法書士法・裁判所法・弁護士法の条文と最高裁判例、日弁連・日司連のルール、法テラスの公表資料をもとに紹介します。
すでにどこかへ相談しようと決めている人はもちろんのこと、費用の違いが気になって迷っているという人も、選び方の基準をしっかりと理解しておきましょう。

任意整理をしようと思うんですが、弁護士と司法書士のどっちに頼めばいいのか分からなくて。司法書士のほうが安いと聞きました。

費用だけで決めると、あとで頼み直しになることがあります。まず見るのは「1社ごとの残高」です。そこで答えがほぼ決まります。

合計で200万円あります。もう司法書士は無理ですか?

合計ではなく1社ごとの金額で判断します。200万円でも、1社あたりが全部140万円以下なら司法書士も候補です。逆に1社で150万円あれば、その相手との交渉は弁護士でないと代理できません。

なるほど……。じゃあ、どっちに頼んでも同じことと、違うことを教えてください。

はい。どちらに頼んでも受任の通知で直接の取立ては原則止まります。違うのは「代理できる範囲」「裁判所の手続きでの立場」「報酬のルール」の3つです。順番に見ていきましょう。
🔎 30秒でわかる結論
- 「140万円」は借金の合計ではなく、1社ごとの債権額で判定する(最高裁 平成28年6月27日判決)
- 1社でも140万円を超える借入先があれば、その相手方との交渉は司法書士では代理できない=弁護士に頼む
- 全社140万円以下なら、法務大臣の認定を受けた司法書士(司法書士法3条2項)も弁護士も候補
- 自己破産・個人再生は、司法書士は「裁判所……に提出する書類……を作成すること」(司法書士法3条1項4号)まで。申立ての代理人になれるのは弁護士
- 費用に公的な一律料金表はない(日弁連)。公的な目安は法テラスの立替基準(任意整理1社 43,000円〜)。上限ルールは日弁連=解決報酬金1社2万円以下・減額報酬10%以下/日司連=1社あたり合計50,000円以下・減額報酬10%以下
- どちらに頼んでも、受任の通知で貸金業者からの連絡は通常止まる(法テラス/貸金業法21条1項9号)
- 迷っている時間にも遅延損害金と信用情報のコストがかかる。1社ごとの残高を書き出して、まず無料相談で「どちらに頼めるか」を確認するのが最短
📖 この記事でわかること
- 結論:まず「1社ごとの残高」を見る(140万円の本当の意味)
- 弁護士と司法書士で「できること」はどう違うか
- 費用はどちらが安いのか——公的な数字だけで確認する
- どちらに頼んでも共通すること(受任通知・信用情報・面談)
- ケース別:あなたはどちらに頼むべきか
- 迷っている間に起きていること
- よくある質問
結論:まず「1社ごとの残高」を見る(140万円の本当の意味)
「140万円」という数字がどこから来ているのか、条文を順に確認します。ここを押さえると、ネット上の「合計140万円まで」という説明が正確ではないことが分かります。
| 根拠 | 何を決めているか | 内容 |
|---|---|---|
| 司法書士法3条1項7号 | 司法書士が相談に応じ、裁判外の和解を代理できる範囲 | 「民事に関する紛争(簡易裁判所における民事訴訟法の規定による訴訟手続の対象となるものに限る。)であつて紛争の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は仲裁事件の手続若しくは裁判外の和解について代理すること」 |
| 裁判所法33条1項1号 | その「額」がいくらか | 「訴訟の目的の価額が百四十万円を超えない請求(行政事件訴訟に係る請求を除く。)」=140万円 |
| 最高裁判所 平成28年6月27日 第一小法廷判決 | 140万円を「何で」判定するか | 「債務整理を依頼された認定司法書士……は、当該債務整理の対象となる個別の債権の価額が司法書士法3条1項7号に規定する額を超える場合には、その債権に係る裁判外の和解について代理することができない」(裁判要旨) |
出典:e-Gov法令検索「司法書士法」「裁判所法」/裁判所「最高裁判所判例集 平成26(受)1813」(2026年9月時点)
💡 ここ、勘違いされがち
「合計で140万円」ではありません。判定するのは借入先ごとの債権額です。合計300万円でも、1社あたりがすべて140万円以下なら司法書士も候補になります。逆に合計150万円でも、1社から150万円を借りていれば、その相手方との交渉は司法書士では代理できません。
もうひとつ条件があります。この業務を行えるのは、司法書士法3条2項が定める「……法務大臣が指定するものの課程を修了した」「法務大臣が……必要な能力を有すると認定した」「司法書士会の会員である」司法書士に限られます(いわゆる認定司法書士)。法務省も「法務大臣の認定を受けた司法書士は,簡易裁判所において取り扱うことができる民事事件(訴訟の目的となる物の価額が140万円を超えない請求事件)等について,代理業務を行うことができます」と案内しています。
💡 今日できる判断手順
判断の手順は3つだけです。①借入先ごとの残高を書き出す→②1社でも140万円を超えていれば弁護士→③全社140万円以下なら弁護士・認定司法書士の両方が候補で、次の章の「できること」と「費用」で比べる。残高が正確に分からなくても、請求書や会員ページの数字で十分です。
万が一支払いが難しい場合は、少しでも早い段階で弁護士などの専門家に相談してください。
弁護士と司法書士で「できること」はどう違うか

140万円以下なら、あとは同じなんですか?

任意整理の交渉だけなら近いです。ただ、裁判所を使う手続きになったときと、訴えられたときの立場が違います。条文で確認しましょう。
弁護士法3条は、弁護士の職務を「訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うこと」と定めています。金額の上限はなく、裁判所の手続きで代理人になれます。
一方、司法書士法3条1項は業務を号ごとに列挙しています。債務整理に関係するのは、4号「裁判所若しくは検察庁に提出する書類若しくは電磁的記録……を作成すること」、6号「簡易裁判所における次に掲げる手続について代理すること」(訴訟の目的の価額が140万円以下)、そして前の章で見た7号(裁判外の和解の代理・140万円以下)です。6号にはただし書があり、上訴の提起(自ら代理人として関与した事件のものを除く)のほか「……再審及び強制執行に関する事項(ホに掲げる手続を除く。)については、代理することができない」とされています。
| 場面 | 弁護士 | 認定司法書士 |
|---|---|---|
| 任意整理(債権者との交渉) | 金額の上限なし | 1社あたり140万円以下の債権のみ(最判平成28年6月27日) |
| 過払い金の返還請求 | 上限なし。訴訟も代理 | 140万円以下=交渉と簡易裁判所の訴訟まで(3条1項6号・7号)。超えれば代理不可 |
| 自己破産・個人再生(裁判所の手続き) | 申立ての代理人になれる | 裁判所に提出する書類の作成(3条1項4号)。代理人にはなれず、申立人は本人のまま |
| 貸金業者から訴えられた・支払督促が届いた | 地方裁判所の訴訟も代理 | 簡易裁判所の手続き(140万円以下)のみ代理。強制執行に関する事項は代理不可(3条1項6号ただし書) |
出典:e-Gov法令検索「弁護士法」3条/「司法書士法」3条1項4号・6号・7号(2026年9月時点)
💡 ここ、勘違いされがち
任意整理のつもりで相談したら、自己破産や個人再生のほうが適切だと判断されることは珍しくありません。日司連の「債務整理事件の処理に関する指針」7条3項も、「破産手続・民事再生手続の申立てを選択することが適切であるにもかかわらず、安易に任意整理の手続を選択してはならない」と定めています。残高が収入に比べて大きい場合は、最初から弁護士も候補に入れておくほうが、手続きが変わったときの頼み直しを避けられます。
借入先ごとの残高がはっきりしない、どの手続きになるか見当がつかないという方は、少しでも早めに債務整理を検討するのがおすすめです。
費用はどちらが安いのか——公的な数字だけで確認する
日弁連は「弁護士の費用は、個々の弁護士がその基準を定めることになっており、標準小売価格というようなものはありません」と説明しています。司法書士も同じで、日司連の指針5条2項は「報酬表を提示する等して報酬額及び費用、またその算定方法を明示したうえで十分に説明を行い」書面を交付することを求めています。つまり費用は事務所ごとの報酬表で決まり、「弁護士だから高い」「司法書士だから安い」という決まりはありません。公的に確認できる数字は、次の3つです。
① 公的に確認できる「目安」=法テラスの立替基準
法テラス(日本司法支援センター)は、弁護士・司法書士費用等の立替制度を使って任意整理を依頼する場合の費用の目安を公表しています。
| 債権者数 | 着手金 | 実費 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 1社 | 33,000円 | 10,000円 | 43,000円 |
| 2社 | 49,500円 | 15,000円 | 64,500円 |
| 3社 | 66,000円 | 20,000円 | 86,000円 |
| 4社 | 88,000円 | 20,000円 | 108,000円 |
| 5社 | 110,000円 | 25,000円 | 135,000円 |
| 6〜10社 | 154,000円 | 25,000円 | 179,000円 |
| 11〜20社 | 176,000円 | 30,000円 | 206,000円 |
| 21社以上 | 198,000円 | 35,000円 | 233,000円 |
出典:法テラス「任意整理 費用の目安」(2026年9月時点)
同じページには「原則として報酬金は発生しませんが、過払金を回収できた場合、報酬金が発生します」「実際の費用は、事件の内容等により審査によって決まります。必ずこの金額になるとは限りません……」と書かれています。これは法テラスの立替制度を使う場合の目安であって、一般の事務所に直接依頼したときの料金ではない点に注意してください。立替制度の利用には、収入・資産が一定基準以下であることなど3つの条件と審査があり、立て替えられた費用は「分割でのお支払いとなります。利息等はありません」。
② 弁護士の報酬「上限」=日弁連の規程
日弁連は「債務整理事件処理の規律を定める規程」で、2011年4月1日以降に受任した債務整理事件の弁護士報酬にルールを設けています。消費者の任意整理事件について、着手金は「上限規制はなし」ですが、「任意整理事件の処理をしている間の管理手数料とか、引き直し計算の計算手数料といった名目での手数料を取ることは禁止」されています(規程10条・11条)。報酬金の上限は、③の司法書士のルールと並べて下の表にまとめます(いずれも消費税別)。
③ 司法書士の報酬「上限」=日司連の指針
日本司法書士会連合会(日司連)も、「債務整理事件の処理に関する指針」(令和7年2月19日〜20日理事会決定・同年4月23日〜24日理事会改正)で報酬の上限を定めています。9条1項は、任意整理事件の報酬について「債権者又はヤミ金一人あたり50,000円を超える額を請求し、又は受領してはならない」とし、同2項でこの額を「事件着手時に発生する報酬に限らず、その後に発生する報酬及びその他の名目の報酬の合計額」としています(減額報酬・過払金返還報酬・支払代行手数料は別枠)。
| 項目 | 弁護士(日弁連の規程) | 司法書士(日司連の指針) |
|---|---|---|
| 着手金 | 上限規制なし(ただし計算手数料・管理手数料などの名目の手数料は禁止) | 1社あたり合計50,000円以下に含まれる(9条) |
| 解決報酬金 | 1社あたり2万円以下が原則。商工ローンは5万円以下 | 独立した区分はなく、着手金などと合算して1社あたり50,000円以下(9条) |
| 減額報酬 | 減額分の10%以下 | 減額され、又は免れた元本金額の10%以下(10条) |
| 過払金報酬 | 訴訟によらない場合20%以下/訴訟による場合25%以下 | 訴訟によらずに回収した場合20%/訴訟により回収した場合25%(11条) |
| 分割払いの支払代行 | 送金代行手数料は例外的に可(規程16条) | 依頼者1人につき1か月あたり1,000円以下(12条)。強制は不可 |
| その他の名目の報酬 | 個別手数料は原則受領禁止(規程11条) | 名目のいかんにかかわらず禁止(13条) |
出典:日弁連「債務整理の弁護士報酬のルールについて」/日司連「債務整理事件の処理に関する指針」(2026年9月時点)
💡 ここ、勘違いされがち
数字から言えるのはここまでです。司法書士には「1社あたり合計5万円」という上限があり、弁護士の着手金には上限がない——これは構造の違いであって、実際の金額は事務所ごとの報酬表で決まります。「安いほう」だけで選び、あとから140万円を超える借入先が出て弁護士に頼み直せば、費用は二重にかかります。安さを比べるのは、1社ごとの残高で候補を絞ったあとです。
そのため、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談するようにしてください。
どちらに頼んでも共通すること(受任通知・信用情報・面談)

弁護士じゃないと、取立てが止まらないとか、ブラックリストの期間が長くなるとか、ありますか?

ありません。取立てが止まる仕組みも、信用情報の扱いも、面談の義務も、どちらに頼んでも同じです。ここは安心して大丈夫です。
① 受任の通知で、直接の取立ては原則止まる
貸金業法21条1項9号は、「債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士、弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し」、その旨の書面による通知があった場合に、正当な理由がないのに本人へ直接、電話・電報・ファクシミリ・訪問で弁済を要求し、「直接要求しないでほしい」と求められたにもかかわらず、なお要求を重ねることを禁止しています。条文の「弁護士等」に司法書士・司法書士法人が含まれている点が重要です。
法テラスも「弁護士や司法書士が債務整理(任意整理・自己破産・個人再生等)の依頼を受け、貸金業者に対してその旨の通知を行った場合、通常、貸金業者からの連絡は止まります」と案内しています。
② 信用情報の扱いは同じ
CIC(株式会社シー・アイ・シー)は、よくある質問で「特定調停や民事再生の申請および債務整理を依頼した事実に関するコメントは登録されません」と回答しています。弁護士に頼んでも司法書士に頼んでも、「依頼した」こと自体は登録されません。登録されるのは、債権者側が報告する「債務整理」などの取引の事実です。JICC(株式会社日本信用情報機構)は「取引事実に関する情報」として「債権回収、債務整理、保証履行、強制解約、破産申立、債権譲渡等」を挙げ、2019年10月1日以降の契約では「契約継続中及び契約終了後5年以内」としています。弁護士か司法書士かで、この期間は変わりません。
③ 面談と説明は、どちらも義務
日弁連の規程3条は、受任する予定の弁護士が「当該債務者と自ら面談をして」、債務の内容・資産や収入や生活費などの生活状況・不動産の処理に関する希望・処理に関する意向を聴取しなければならないと定めています。続く4条は、事件処理の方針及び見通し・弁護士費用のほか、資格の制限・信用情報機関への登録・不動産等の資産を失う可能性といった不利益事項を説明しなければならないとしています。
日司連の指針4条1項も、受任する予定の司法書士が「自ら依頼者又はその法定代理人と直接面談を行わなければならない」(面談できない合理的な理由があり、かつ依頼者が希望する場合はテレビ電話・ウェブ会議も可)と定め、5条で契約書の交付と報酬表の提示、6条で「事例に応じ予想される不利益を十分に説明しなければならない」としています。
💡 ポイント
つまり、電話やフォームだけで契約が決まることは、弁護士でも司法書士でもルール上あり得ません。面談で事情を聴き、方針・費用・不利益を説明する——ここまでが受任の前提です。「話を聞いてから依頼するかどうかを決める」は、あなたの権利ではなく制度の前提です。
返済が難しく滞納が長引いてしまう場合は、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
ケース別:あなたはどちらに頼むべきか
ここまでの条文とルールを、状況別に当てはめます。自分の行がどれかを確かめてください。
| あなたの状況 | 向いている相談先 | 理由 |
|---|---|---|
| 1社でも140万円を超える借入先がある | 弁護士 | その債権の裁判外の和解は司法書士では代理できない(最判平成28年6月27日) |
| 全社140万円以下で、収入から返していける見込みがある | 弁護士・認定司法書士のどちらも候補 | 対応範囲と報酬表を比べて選ぶ |
| 残高が収入に比べて大きく、自己破産・個人再生になりそう | 弁護士 | 司法書士は裁判所に提出する書類の作成まで(司法書士法3条1項4号) |
| 訴えられた(簡易裁判所で140万円以下の訴訟を除く)、または差押えの通知が来た | 弁護士 | 司法書士の代理は簡易裁判所の140万円以下の手続きに限られ、強制執行に関する事項は代理できない(3条1項6号ただし書) |
| 過払い金が140万円を超えそう | 弁護士 | 過払い金も「個別の債権の価額」で判定される |
| 借入先が1〜2社で、いずれも少額 | どちらも候補 | 司法書士は1社あたり合計50,000円以下の上限(日司連指針9条)が目安になる |
どの行に当たるか迷うなら、借入先ごとの残高を書いた紙を1枚持って無料相談に行くだけで、その場でどちらに頼めるかが判定できます。取引履歴を取り寄せて利息制限法1条の上限で計算し直すと債務額が変わることもあるため、すべての借入先を隠さず出すことが、頼み直しを避けるいちばんの近道です。
万が一支払いが難しい場合は、少しでも早い段階で弁護士などの専門家に相談してください。
迷っている間に起きていること
「弁護士か司法書士か」で悩んでいる間も、時計は止まっていません。貸金業者からの借入れで返済が遅れれば、遅延損害金は利息制限法7条1項の上限である年2割(20%)まで課され得ます。信用情報の「契約終了後5年以内」(JICC)というカウントは、決着させて初めて動き出します。督促を放置すれば、支払督促や訴訟という裁判所の手続きに進み、その段階では司法書士に頼めない場面が増えます。
💡 ここ、勘違いされがち
選ぶのに使っていい時間は、1社ごとの残高を書き出すまでです。それが済めば、弁護士か司法書士かの答えは今日出ます。出た答えを持って、まず無料相談で確認してください。依頼するかどうかは、話を聞いてから決められます。
そのため、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談するようにしてください。
よくある質問
Q. 借金の合計が140万円以下なら、どの司法書士にも頼めますか?
A. 頼めるのは認定司法書士だけです。司法書士法3条2項は、簡裁訴訟代理等関係業務を、法務大臣が指定する研修の課程を修了し、法務大臣が必要な能力を有すると認定した、司法書士会の会員である司法書士に限っています。法務省も「簡裁訴訟代理等関係業務は,業務を行うのに必要な能力を有すると法務大臣が認定した司法書士に限り,行うことができるとされています」と案内しています。相談のときに認定を受けているかを確認してください。
Q. 司法書士に頼んだあとで、140万円を超える借入先が見つかったらどうなりますか?
A. その借入先については、司法書士は裁判外の和解を代理できません(最高裁 平成28年6月27日判決)。その相手方との交渉は弁護士に頼み直すことになります。取引履歴を取り寄せて利息制限法の上限で計算し直すと、当初の請求額より債務が増減することもあります。最初の相談で、借入先を1社も隠さず出すことが頼み直しを避ける方法です。
Q. 弁護士のほうが高いというのは本当ですか?
A. 公的な一律料金表はありません。日弁連は「弁護士の費用は、個々の弁護士がその基準を定めることになっており」と説明しています。ルール上の違いは、弁護士は着手金に上限規制がなく(手数料名目の上乗せは禁止)、司法書士は1社あたり合計50,000円以下という上限がある点です。実際の金額は事務所ごとの報酬表で決まるため、相談のときに報酬表を見せてもらうのが確実です。費用そのものが不安なら、法テラスの立替制度(無利息の分割)の対象になるかをあわせて確認してください。
Q. 司法書士に自己破産や個人再生を頼むとどうなりますか?
A. 司法書士ができるのは「裁判所……に提出する書類……を作成すること」(司法書士法3条1項4号)までです。申立ての代理人にはなれないため、裁判所に対する申立人は本人のままです。弁護士に依頼した場合は、弁護士が代理人として手続きを進めます。任意整理のつもりで相談しても、面談の結果として自己破産・個人再生が適切と判断されることはあるため、残高が大きい場合は最初から弁護士も候補に入れておくと頼み直しを避けられます。
Q. 法テラスは、弁護士と司法書士のどちらでも使えますか?
A. 制度の名称そのものが「弁護士・司法書士費用等の立替制度」で、どちらも対象です。利用には「収入や資産が一定基準以下であること」「勝訴の見込みがないとはいえないこと」「民事法律扶助の趣旨に適すること」の3つの条件と審査があり、立て替えられた費用は「分割でのお支払いとなります。利息等はありません」。任意整理の費用の目安は、この記事の表のとおり1社43,000円からです。
Q. 相談したら、その場で決めないといけませんか?
A. いいえ。日弁連の規程4条は、受任に際して方針・見通し・費用・不利益事項の説明を義務づけ、日司連の指針5条・6条も契約書の交付・報酬表の提示・不利益の説明を求めています。説明を受けたうえで依頼するかどうかを決めるのが、制度の前提です。相談だけで持ち帰って構いません。
まとめ:「1社ごとの残高」を書き出せば、答えは今日出る
司法書士法3条1項7号と裁判所法33条1項1号が定める140万円は、最高裁判所(平成28年6月27日判決)が「当該債務整理の対象となる個別の債権の価額」で判定すると判断しています。合計ではなく1社ごとです。1社でも140万円を超えていれば弁護士、全社140万円以下なら弁護士・認定司法書士のどちらも候補になります。
自己破産・個人再生では、司法書士は裁判所に提出する書類の作成まで(司法書士法3条1項4号)で、申立ての代理人になれるのは弁護士です。費用に公的な一律料金表はなく、公的な目安は法テラスの立替基準(任意整理1社43,000円〜)、上限ルールは日弁連の規程(解決報酬金1社2万円以下・減額報酬10%以下)と日司連の指針(1社あたり合計50,000円以下・減額報酬10%以下)です。
どちらに頼んでも、受任の通知で貸金業者からの連絡は通常止まり(法テラス/貸金業法21条1項9号)、信用情報の扱いも、面談と説明の義務も変わりません。迷っている時間にコストがかかる一方で、判断に必要なのは1社ごとの残高だけです。書き出した紙を持って、いま動いてください。
借金に関する相談は、無料で受け付けている窓口が多くあります。まずは話だけでも聞いてみるのがおすすめです。
📚 出典(公的機関・法令)を見る
- e-Gov法令検索「司法書士法」(3条1項4号=裁判所若しくは検察庁に提出する書類若しくは電磁的記録の作成/6号=簡易裁判所における手続の代理・ただし書=上訴の提起(自ら代理人として関与した事件のものを除く)、再審及び強制執行に関する事項は代理不可/7号=紛争の目的の価額が裁判所法33条1項1号に定める額を超えない民事紛争の相談・裁判外の和解の代理/3条2項=簡裁訴訟代理等関係業務は研修修了・法務大臣認定・司法書士会会員の司法書士に限る) https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000197
- e-Gov法令検索「裁判所法」(33条1項1号=訴訟の目的の価額が百四十万円を超えない請求) https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000059
- e-Gov法令検索「弁護士法」(3条=訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする) https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC1000000205
- 裁判所「最高裁判所判例集 平成26(受)1813 平成28年6月27日 第一小法廷判決」(裁判要旨=債務整理を依頼された認定司法書士は、当該債務整理の対象となる個別の債権の価額が司法書士法3条1項7号に規定する額を超える場合には、その債権に係る裁判外の和解について代理することができない) https://www.courts.go.jp/hanrei/85969/detail2/index.html
- 法務省「司法書士の簡裁訴訟代理等関係業務の認定」(法務大臣の認定を受けた司法書士は,簡易裁判所において取り扱うことができる民事事件(訴訟の目的となる物の価額が140万円を超えない請求事件)等について,代理業務を行うことができます/業務を行うのに必要な能力を有すると法務大臣が認定した司法書士に限り,行うことができる) https://www.moj.go.jp/MINJI/minji116.html
- 日本弁護士連合会「弁護士費用(報酬)とは」(弁護士の費用は、個々の弁護士がその基準を定めることになっており、標準小売価格というようなものはありません) https://www.nichibenren.or.jp/legal_advice/cost/legal_aid.html
- 日本弁護士連合会「債務整理の弁護士報酬のルールについて」(規程3条=受任弁護士自らの個別面談による事情聴取/4条=事件処理方針・不利益事項の説明/着手金は上限規制なし・計算手数料等の名目の手数料は禁止(10条・11条)/解決報酬金1社あたり2万円以下・商工ローン5万円以下/減額報酬金 減額分の10%以下/過払金報酬金 訴訟によらない場合20%以下・訴訟による場合25%以下/2011年4月1日以降の受任事件に適用) https://www.nichibenren.or.jp/legal_advice/cost/legal_aid/saimuseiri.html
- 日本弁護士連合会「債務整理事件処理の規律を定める規程」(会規第93号・PDF。3条=債務の内容・資産収入生活費その他の生活状況・不動産の処理に関する希望・処理に関する意向を自ら面談して聴取/4条=資格等の制限・信用情報機関への登録・資産を失う可能性等の不利益事項の説明) https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/rules/kaiki/kaiki_no_093.pdf
- 日本司法書士会連合会「債務整理事件の処理に関する指針」(令和7年2月19日〜20日理事会決定・同年4月23日〜24日理事会改正・PDF。4条=受任予定の司法書士が自ら直接面談/5条=契約書の交付・報酬表の提示/6条=不利益の説明/7条3項=安易に任意整理を選択してはならない/9条=任意整理事件の報酬は債権者一人あたり50,000円を超えてはならない・着手時以後の報酬及びその他の名目の報酬の合計額/10条=減額報酬10%/11条=過払金返還報酬20%・25%/12条=支払代行手数料 1か月あたり1,000円以下/13条=その他の報酬の禁止/8条3項=消費税額を含まない) https://www.shiho-shoshi.or.jp/association/info_disclosure/statement_list/uploads/eef60054829e003e2c157ee6edde90442d7e2ec8.pdf
- 日本司法書士会連合会「『債務整理事件の処理に関する指針』策定についての会長声明」 https://www.shiho-shoshi.or.jp/association/info_disclosure/statement_list/898/
- 法テラス「任意整理 費用の目安」(1社43,000円/2社64,500円/3社86,000円/4社108,000円/5社135,000円/6〜10社179,000円/11〜20社206,000円/21社以上233,000円=着手金+実費/原則として報酬金は発生しないが過払金を回収できた場合は発生/実際の費用は審査によって決まる) https://www.houterasu.or.jp/site/soudan-tatekae/seirihiyou.html
- 法テラス「弁護士・司法書士費用等の立替制度のご利用の流れ」(収入や資産が一定基準以下であること・勝訴の見込みがないとはいえないこと・民事法律扶助の趣旨に適すること/立替えた費用は分割でのお支払い・利息等はありません) https://www.houterasu.or.jp/site/soudan-tatekae/goriyou.html
- 法テラス よくある相談「弁護士や司法書士に債務整理を依頼すると、貸金業者からの連絡が止まるのですか。」(弁護士や司法書士が債務整理の依頼を受け、貸金業者に対してその旨の通知を行った場合、通常、貸金業者からの連絡は止まります) https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-niniseiri-004.html
- 法テラス よくある相談「任意整理とは何ですか。」(裁判所などの公的機関を利用せず、当事者が私的に話合いをして、支払額や支払方法について合意をする手続) https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-niniseiri-001.html
- e-Gov法令検索「貸金業法」(21条1項9号=弁護士、弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(弁護士等)に委託した旨の書面通知後、正当な理由なく本人へ直接弁済を要求し、直接要求しないよう求められたにもかかわらずさらに要求することの禁止) https://laws.e-gov.go.jp/law/358AC1000000032
- e-Gov法令検索「利息制限法」(1条=元本10万円未満 年2割・10万円以上100万円未満 年1割8分・100万円以上 年1割5分/7条1項=営業的金銭消費貸借の賠償額の予定は年2割を超える部分が無効) https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000100
- CIC よくあるご質問「裁判所へ特定調停や民事再生を申請した場合、および弁護士・司法書士に債務整理を依頼した場合、自分の信用情報にその事実がコメントとして登録されますか?」(特定調停や民事再生の申請および債務整理を依頼した事実に関するコメントは登録されません) https://www.cic.co.jp/faq/detail/cre/cre01/002586.html
- JICC「信用情報の内容と登録期間」(取引事実に関する情報=債権回収、債務整理、保証履行、強制解約、破産申立、債権譲渡等/契約日2019年10月1日以降=契約継続中及び契約終了後5年以内) https://www.jicc.co.jp/aboutus/credit-info/registration
本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の判断は弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。(制度・数値は2026年9月時点)
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