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・「自己破産したら、年金まで取り上げられてしまう」
・「年金暮らしだから、自己破産なんてできない」
こんな話を聞いて、年金で暮らしながら返せない借金を抱え、身動きが取れずにいる人も多いのではないでしょうか?
しかし、年金を受け取る権利は、法律で原則として差し押さえが禁止されています(国民年金法24条・厚生年金保険法41条1項)。差し押さえが禁止された財産は破産財団(債権者への配当にあてる財産)に入らず(破産法34条3項2号)、法務省も、破産しても配当に回らないものについて「公的な保険の給付金債権や生活保護を受ける権利なども破産者が行使でき、その給付金などは債権者への支払には充てられません。」と説明しています。
とはいえ、年金は口座に振り込まれた後は預金として扱われ、延滞が続いて裁判を起こされると、口座の預金を差し押さえられることがあるのも事実です。
本記事では、自己破産で年金がどうなるか、年金が入る口座の差し押さえ、未納の年金保険料、年金をあてにした借入れの注意、生活保護との関係、個人再生・任意整理での扱いについて紹介します。
年金で暮らしながら借金を返している人はもちろんのこと、「親の年金生活と借金が心配」という家族の人も、口座が差し押さえられる前にしっかりと確認しておきましょう。

年金が月に12万円ほどです。カードローンの返済が苦しくて……。自己破産したら、この年金も取られるんでしょうか。

これから受け取る年金は、借金の返済には回されません。年金を受け取る権利は、法律で原則として差し押さえが禁止されているからです。自己破産をしても、年金はこれまでどおり受け取れます。

よかった……。じゃあ、このまま少しずつ返していっても大丈夫ですよね?

返せているうちは大丈夫ですが、返済が止まると危なくなります。年金も、口座に振り込まれた後は「預金」になります。返済が止まって裁判を起こされると、年金が入る口座の預金を差し押さえられることがあります。取り戻すには裁判所への申立てが必要で、認められるとは限りません。差し押さえられる前に動くのがいちばん確実です。
🔎 30秒でわかる結論
- ★年金を受け取る権利は、原則として差し押さえ禁止(国民年金法24条・厚生年金保険法41条1項。例外は税金などの滞納処分)。差し押さえが禁止された財産は破産財団に入らない(破産法34条3項2号)。自己破産しても年金は受け取れる
- ★危ないのは口座に入った後。延滞が続いて裁判になると、年金が振り込まれる口座が差し押さえられることがある。取り戻すには「差押禁止債権の範囲変更」の申立てが要り、認められるとは限らない(大阪地裁Q&A)
- ★破産手続が始まれば、借入先は個別に取り立てられなくなる(破産法100条1項・42条1項)。同時廃止などで手続きが終わった後も、免責の裁判が確定するまでは強制執行(差し押さえ)ができない(249条1項)
- ★未納の年金保険料は、自己破産しても消えない(国民年金法95条・破産法253条1項1号の組み合わせ)。60歳未満で払えない保険料は「免除」(50歳未満は納付猶予も)を申請する
- ★個人再生・任意整理でも年金を手放すことはない。ただし返していける見込みが前提
📖 この記事でわかること
- 自己破産しても年金は受け取れる?
- 危ないのは「口座に入った後」の年金
- 破産手続が始まれば、借入先は個別に取り立てられなくなる
- 未納の年金保険料は自己破産で消える?
- 年金をあてにした借入れの注意
- 生活保護を受けている・考えている場合
- 個人再生・任意整理なら、年金はどうなる?
- 債務整理のデメリットと、それでも今動く理由
- 今の状況ごとに、最短でやること
自己破産しても年金は受け取れる?

借金の返済に回すために、年金を止められたりしないんですか。

止められません。年金を受け取る権利は、借入先が差し押さえることも、自己破産の手続きで配当に回されることもない財産です。条文で確かめてみましょう。
国民年金法24条は、「給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。」と定めています。厚生年金保険法41条1項も、「保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。」としています。
そのうえで破産法34条3項2号は、「差し押さえることができない財産」は破産財団に属しないと定めています。破産財団とは、債権者への配当のためにお金に換える対象になる財産のことです。年金を受け取る権利は、ここに入りません。
📄 法務省「第11話 自己破産は最後の切り札?」
「例えば、生活に不可欠な衣類や日用品、99万円までの現金などは、債権者への支払には充てられません。また、公的な保険の給付金債権や生活保護を受ける権利なども破産者が行使でき、その給付金などは債権者への支払には充てられません。」
| 年金の種類 | 差し押さえ | 根拠 |
|---|---|---|
| 国民年金(老齢基礎年金など) | 原則として禁止 | 国民年金法24条 |
| 厚生年金(老齢厚生年金など) | 原則として禁止 | 厚生年金保険法41条1項 |
| 例外 | 老齢基礎年金・付加年金・老齢厚生年金を「国税滞納処分(その例による処分を含む。)」で差し押さえる場合 | 各条のただし書 |
※ただし書の例外は、税金などの滞納処分の場合です。カード会社や消費者金融などの借入先が、年金を受け取る権利を差し押さえることはできません。
なお、自己破産をしたことを理由に年金が止まる、という定めは見当たりません。老齢年金を受け取れるかどうかは、保険料を納めた期間や免除を受けた期間などで決まります(日本年金機構)。
✅ このセクションのまとめ
年金を受け取る権利は原則として差し押さえが禁止されていて(国民年金法24条・厚生年金保険法41条1項)、破産財団にも入りません(破産法34条3項2号)。自己破産をしても、年金はこれまでどおり受け取れます。
万が一支払いが難しい場合は、少しでも早い段階で弁護士などの専門家に相談してください。
危ないのは「口座に入った後」の年金

年金が差し押さえられないなら、返済が遅れても生活はなんとかなりますよね。

そうとは限りません。差し押さえが禁止されているのは「年金を受け取る権利」です。口座に振り込まれたお金は、銀行に預けている「預金」として差し押さえを受けることがあります。
返済が止まったまま放っておくと、借入先は裁判を起こし、判決などをもとに財産を差し押さえることができます。そのとき対象になりやすいのが、年金が振り込まれる口座の預金です。
📄 大阪地裁「差押禁止債権の範囲変更申立てQ&A」Q1
「差押えによって,一般的な生活水準と比較してあなた(債務者)の生活に著しい支障が生じる場合,例えば生活保護費や公的年金などの公的給付の振込口座が差し押さえられ,生活が成り立たなくなる場合などに,あなた(債務者)の申立てにより,差押えの範囲を変更(減縮)するかどうかを裁判所が決定する制度です。」
この「差押禁止債権の範囲変更」は、民事執行法153条1項にもとづく申立てです。ただし大阪地裁のQ&Aは、「この申立てをしても,あなたの希望どおりの決定が出るとは限りません」(Q10)と書いています。さらに、公的年金の振込口座の場合は、「この預貯金債権の原資がこれらの公的給付によるものであることの立証も必要になります。」(Q11)とされています。
法テラスは、口座に入った年金が差し押さえられる可能性があるときの対応として、「以後の差押えに備え、振込口座を変更する、振込以外の方法で受け取るなどの対応が考えられます。」と案内しています。また、差し押さえられた預金は引き出せませんが、「差押え後に入金した預金であれば、その預金口座から引き出すこともできます(再度差押えを受けた場合等を除きます。)。」とも説明しています。
| 段階 | 年金の状態 | できること |
|---|---|---|
| 返済が苦しい・延滞し始めた | 口座に入った年金はまだ自由に使える | 差し押さえの前に、借金そのものを整理する(今がいちばん選択肢が多い) |
| 裁判を起こされた・判決が出た | 口座の預金が差し押さえられるおそれ | 急いで相談。手続きの段取りを組む |
| 口座が差し押さえられた | 差し押さえられた額の範囲で引き出せない。差押え後に入金した分は引き出せる(法テラス) | 差押禁止債権の範囲変更の申立て(民事執行法153条1項)。原資が年金であることの立証が必要で、認められるとは限らない(大阪地裁) |
✅ このセクションのまとめ
年金を受け取る権利は守られていても、口座に入った後のお金は差し押さえを受けることがあります。取り戻す申立てには立証の負担があり、認められる保証もありません。差し押さえの前に動くのがいちばんの守りです。
年金が入る口座の差し押さえが心配という方は、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
破産手続が始まれば、借入先は個別に取り立てられなくなる

自己破産を申し立てたら、もう口座を差し押さえられることはないんですか。

申し立てただけで、自動的に止まるわけではありません。裁判所が「破産手続開始の決定」をした後は、借入先は破産の手続きの外で個別に取り立てることができなくなり、破産財団の財産にすでにされていた差し押さえも効力を失います。
破産法100条1項は、「破産債権は、この法律に特別の定めがある場合を除き、破産手続によらなければ、行使することができない。」と定めています。さらに42条1項は、破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産に対する強制執行などで「破産債権若しくは財団債権に基づくもの」は「することができない。」とし、同条2項は、すでにされている強制執行などは「破産財団に対してはその効力を失う。」としています。
同時廃止(破産管財人を選ばずに、開始の決定と同時に手続きを終える方法)などで破産手続が終わった後は、249条1項が働きます。免責許可の申立てがあり、かつ破産手続廃止の決定などがあったときは、免責許可の申立てについての裁判が確定するまで、破産者の財産に対する破産債権にもとづく強制執行は「することができず」、すでにされているものは「中止する。」と定められています。自己破産を申し立てると、原則として同時に免責許可の申立てをしたものとみなされます(248条4項)。免責許可の決定が確定すると、中止していた手続きは「その効力を失う。」とされています(249条2項)。
さらに法務省は、「破産手続が始まった後に破産者が取得した財産は、破産者がその後自由に使うことができ、債権者への支払には充てられません。」と説明しています。手続きが始まった後に振り込まれる年金は、そのまま生活に使えるということです。
💡 ここ、勘違いされがち
申し立てる時点で口座に残っている預金は、年金が元になっていても、預金として申告します。預金がどう扱われるかは、裁判所の運用や自由財産の拡張(破産法34条4項)しだいです。また、借入先の銀行の口座に年金が振り込まれている場合は、銀行が預金と借金を相殺することがあります(破産法67条1項)。受取口座をどうするかは、申し立てる前に弁護士に相談してください。
✅ このセクションのまとめ
破産手続開始の決定があれば、借入先は破産の手続きの外で取り立てられなくなり(破産法100条1項・42条1項)、同時廃止などで手続きが終わった後も、免責の裁判が確定するまでは強制執行ができません(249条1項)。手続きの開始後に振り込まれる年金は、自由に使えます(法務省)。
そのため、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談するようにしてください。
未納の年金保険料は自己破産で消える?

昔、国民年金の保険料を払えなかった時期があって、督促が来ています。これも自己破産でなくなりますか。

残念ながら、なくなりません。年金の保険料は税金と同じやり方で集めるものなので、自己破産で免責されない請求権にあたります。ただ、60歳未満で国民年金の保険料を払う立場にある人は、これから払えない分について「免除」(20歳以上50歳未満なら「納付猶予」も)を申請できます。放っておくのがいちばん損です。
国民年金法95条は、保険料などの徴収金は「国税徴収の例によつて徴収する。」と定めています。破産法は、国税徴収法や国税徴収の例によって徴収できる請求権を「租税等の請求権」と呼び(97条4号)、253条1項1号で免責の効力が及ばない請求権に挙げています。この条文の組み合わせから、未納の国民年金保険料は、自己破産をしても支払う義務が残ります。
日本年金機構は、未納の保険料について、督促状で指定した期限までに納めないと「財産の差押えを行います。」と案内しています。あわせて、「国民年金第1号被保険者の世帯主および配偶者は国民年金保険料を連帯して納付する義務があります。」とも書いています。
一方で、払えないときのための制度があります。国民年金の第1号被保険者は、日本国内に住所がある20歳以上60歳未満の人で、老齢を理由とする厚生年金などを受けられる人は除かれます(国民年金法7条1項1号)。第1号被保険者は、60歳に達した日の翌日に資格を失います(9条3号)。年金を受け取っている人は、ふつうは新たに保険料を払う立場にありません。この第1号被保険者向けに、日本年金機構は、「収入の減少や失業等により国民年金保険料(以下「保険料」)を納付することが経済的に困難な場合」の手続きとして、免除制度と納付猶予制度を案内しています。
| 内容(日本年金機構) | |
|---|---|
| 免除の種類 | 「全額、4分の3、半額、4分の1の4種類があります。」 |
| 失業などのとき | 「失業・倒産・事業の廃止などの事実を確認できたときは、失業等した方の前年所得にかかわらず、免除・納付猶予を受けられる特例があります。」 |
| 納付猶予の対象 | 「20歳以上50歳未満の方で、本人・配偶者の前年所得(※)が一定額以下の場合」 |
| さかのぼれる期間 | 「保険料の納付期限から2年を経過していない期間(申請時点から2年1カ月前までの期間)が申請できます。」 |
| 未納との違い | 全額免除の期間は、老齢基礎年金を受け取る際に全額納付したときの「2分の1(税金分)」を受け取れる。未納のままだと受け取れない。受給資格期間にも、免除・納付猶予の期間は入るが、未納の期間は入らない |
| 後から納める | 「10年以内であれば申し出により後から納付(追納)」できる |
出典:日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」(2026年10月時点)
💡 ここ、勘違いされがち
督促が来ている古い未納分のうち、納付期限から2年を過ぎた分は、免除や納付猶予をさかのぼって申請できません(日本年金機構)。未納の保険料の督促と、ほかの借金を合わせてどう払うかは、借金の整理と一緒に専門家へ相談してください。
✅ このセクションのまとめ
未納の年金保険料は、自己破産しても支払う義務が残ります(国民年金法95条・破産法253条1項1号)。60歳未満で払えない保険料は、未納のままにせず免除(50歳未満は納付猶予も)を申請すれば、将来の年金への影響を小さくできます。
返済が難しく滞納が長引いてしまう場合は、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
年金をあてにした借入れの注意

年金を担保にお金を借りられると聞いたことがあります。それで返済をしのげませんか。

それは絶対にやめてください。国の年金担保貸付はすでに終わっていて、いま「年金を担保に貸します」と言うのは違法な業者です。
📄 厚生労働省「違法な年金担保融資にご注意ください」
「年金担保貸付制度は、令和4年3月末で申込受付を終了しました。」
「年金受給権を担保とした金銭の借入申込を受けることは法律で禁止されています。」
「「年金を担保にお金を借りられます」などと宣伝して借入れを勧誘することは、例外なく全て違法です。」
厚生労働省は、年金が振り込まれる口座から返済を受けるために、年金証書や預金通帳、キャッシュカードなどを引き渡させたり保管したりする行為や、年金の振込口座からの自動振替を金融機関に頼むよう求める行為も、貸金業法で禁止されていると案内しています。福祉医療機構も、年金担保貸付事業は「2022年3月末をもって申込受付を終了しており」としています。
厚生労働省が年金担保貸付をやめた理由として挙げているのは、「生活費に充てられるべき年金が返済に充てられて利用者の困窮化を招くこと等の指摘」です。年金を返済にあてて暮らしが苦しくなっているなら、借り換えで先送りするのではなく、借金そのものを整理するほうが早く楽になります。
✅ このセクションのまとめ
国の年金担保貸付は令和4年3月末で終わり、いま年金を担保に貸すとうたう業者は違法です(厚生労働省)。通帳やカードを預けさせる業者にも近づかず、借金そのものの整理を相談してください。
万が一支払いが難しい場合は、少しでも早い段階で弁護士などの専門家に相談してください。
生活保護を受けている・考えている場合

年金だけでは足りなくて、生活保護も考えています。借金があっても受けられますか。

受けられるかどうかは、お住まいの福祉事務所が判断します。借金との関係は別の記事でくわしくまとめています。ここでは、カードローンなどの借金の返済は保護費の計算で考慮されない点と、手続きの費用の立替えが使える点を押さえておきましょう。
厚生労働省の研修資料(生活保護受給者向け)は、自立更生のための貸付金など一部の例外を除いて、借入れについて「借入金の返還についても、必要経費としては認められない。」と書いています。カードローンなど生活費の借入れについて、収入から返済分を差し引いて保護費を計算する、という扱いにはならないということです。
法テラスは、「生活保護を受給している場合でも、法テラスの立替制度はご利用いただけます。生活保護を受給中の間は、返済は猶予されます。」と説明しています。また、「生活保護を受給している方を除き、自己破産事件の予納金は立替えの対象とはなりません。」とあり、生活保護を受けている人は自己破産の予納金も立替えの対象になります。
なお、生活保護の生活扶助を受けている人は、国民年金の保険料が法定免除になります(国民年金法89条1項2号・日本年金機構)。
✅ このセクションのまとめ
カードローンなどの借金の返済は、生活保護の計算で必要経費として認められません(厚生労働省の研修資料。自立更生のための貸付などは例外)。生活保護を受けている人は、法テラスの立替制度を使え、受給中は返済が猶予されます。
年金だけでは生活と返済が両立しないという方は、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
個人再生・任意整理なら、年金はどうなる?

自己破産ではなく、年金から少しずつ返していく方法はありますか。

あります。個人再生や任意整理です。どちらも年金を手放す手続きではありません。ただ、どちらも「返していける収入」が前提なので、年金の額で返せる計画が立つかがポイントです。
個人再生(小規模個人再生)を使えるのは、民事再生法221条1項によれば「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込み」があり、住宅ローンなどを除いた借金の総額が5,000万円を超えない人です。大阪地裁の倒産部Q&Aも、「継続又は反復した収入を得られる見込みがあるが,多額の債務(借金)を負ったため返済ができない場合に利用することができる手続きです。」と説明しています。
千葉地裁の小規模個人再生の申立書の書式には、収入の欄に「□ 年金、各種扶助等の受給」の項目があり、「年金や各種扶助の受給証明書のコピーを添付してください。」と書かれています。年金を収入として書く欄がある、ということです。ただし、年金だけの収入で個人再生ができるかは、返す額と年金の額などから個別に判断されます。
任意整理について、法テラスは「利息制限法所定の利率で計算し直した残元金を3~5年程度の期間で分割返済する内容で合意するケースが多いようです。」と説明しています。年金から毎月いくら返せるかが、合意できるかどうかの分かれ目です。法テラスは「債権者には、この話合いに応じる義務はありません。」とも書いています。
| 自己破産 | 個人再生 | 任意整理 | |
|---|---|---|---|
| 年金を受け取る権利 | 破産財団に入らない | 手放さない | 手放さない |
| 借金 | 免責されれば支払義務がなくなる(未納の保険料・税金などは残る) | 減額した額を分割で返す | 話し合いで返し方を決める(3〜5年程度が多い) |
| 年金生活で気をつけること | 申立て時の預金は申告が必要 | 年金で返していける計画が立つか | 年金で返していける額で合意できるか |
✅ このセクションのまとめ
個人再生も任意整理も、年金を手放す手続きではありません。どちらも返していける収入が前提で、年金の額で計画が立つかを専門家と確かめる必要があります。
年金で返していけるか、自己破産がいいのか迷っているという方は、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
債務整理のデメリットと、それでも今動く理由

この年で自己破産なんて、家族にも申し訳なくて……。デメリットも知っておきたいです。

先にお伝えしますね。デメリットはあります。そのうえで、返済が止まって年金が入る口座を差し押さえられると、暮らしへの打撃が大きくなるおそれがあります。
| デメリット | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 自己破産では財産を失う | 「生活に必要な家財道具等の一定の財産以外は、失うことになる。(ただし、99万円以下の現金は手元に残せる。)」 | 法テラス |
| 税金・保険料などは残る | 租税等の請求権は免責されない | 破産法253条1項1号 |
| 任意整理には相手の了解と原資が要る | 「債権者の了解と支払原資が必要になる。」 | 法テラス |
| 借入れ・カードが作りにくくなる(任意整理の例) | 「信用情報を取り扱う機関に登録されることにより、数年間は、借入れやクレジットカードの作成が難しくなる。」(任意整理) | 法テラス |
一方で、法テラスは「自己破産をしたからといって、選挙権がなくなる、戸籍や住民票に記載される、銀行の普通預金口座も使用できなくなる、ということはありません。」と書いています。年金を受け取る口座も、借入先の銀行でなければ使い続けられます。
毎月の年金から返済を続けていると、食費や医療費を削ることになります。そのうえ返済が止まって裁判を起こされれば、年金が入る口座を差し押さえられ、取り戻すには裁判所への申立てと立証が必要になります。口座を差し押さえられる前に、借金そのものを整理するのが近道です。
✅ このセクションのまとめ
債務整理にはデメリットがありますが、年金を受け取る権利は手放さずに済みます。口座を差し押さえられる前に相談するのが、年金生活を守るいちばんの近道です。
年金から返済を続けて生活が苦しいという方は、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
今の状況ごとに、最短でやること
| 今の状況 | 最短でやること |
|---|---|
| 年金から返済していて、生活が苦しい | 年金の額・借入先の一覧・通帳を持って相談。どの手続きが合うかを決める |
| 延滞していて、督促が来ている | 裁判を起こされる前に、今すぐ相談する |
| 裁判所から書類が届いた・判決が出た | 口座の差し押さえが近い。急いで相談する |
| 年金が入る口座を差し押さえられた | 差押禁止債権の範囲変更の申立て(民事執行法153条1項)を含め、すぐ相談する |
| 借入先の銀行で年金を受け取っている | 相殺されないよう、受取口座をどうするか申し立てる前に相談する |
| 60歳未満で国民年金の保険料を払えていない | 年金事務所で免除(50歳未満は納付猶予も)を申請。借金の整理は専門家に相談 |
| 「年金を担保に貸す」と勧誘された | 応じない。違法です(厚生労働省) |
そのため、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談するようにしてください。
よくある質問
Q. 自己破産したら、年金はもらえなくなりますか。
A. 自己破産を理由にもらえなくなることはありません。年金を受け取る権利は原則として差し押さえが禁止されていて(国民年金法24条・厚生年金保険法41条1項)、破産財団にも入りません(破産法34条3項2号)。自己破産をしたことを理由に年金が止まる、という定めも見当たりません。ただし、税金などの滞納処分(国税滞納処分とその例による処分)は、各条のただし書で例外とされています。
Q. 年金が振り込まれる口座は差し押さえられますか。
A. 差し押さえられることがあります。口座に入ったお金は預金として差し押さえを受けることがあり、大阪地裁のQ&Aも公的年金の振込口座が差し押さえられる場合を挙げています。取り戻すには差押禁止債権の範囲変更の申立てが必要で、年金が元になっていることの立証も求められ、認められるとは限りません。
Q. 自己破産したら、未納の国民年金保険料もなくなりますか。
A. なくなりません。保険料は「国税徴収の例によつて徴収する」もので(国民年金法95条)、破産法の「租税等の請求権」として免責の効力が及びません(253条1項1号)。60歳未満で払えない保険料があるなら、日本年金機構の免除・納付猶予を申請してください(納付猶予は50歳未満。納付期限から2年を経過していない期間までさかのぼれます)。
Q. 年金暮らしでも自己破産できますか。
A. 年金暮らしであることを理由に自己破産ができない、という定めはありません。収入が年金だけで返せない借金があるなら、自己破産を含めて検討できます。生活保護を受けている人は、法テラスの立替制度を使え、受給中は返済が猶予されます(法テラス)。
Q. 年金収入だけで個人再生はできますか。
A. 年金だけの収入では使えない、という定めはありませんが、認められるかは個別に判断されます。個人再生は「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込み」がある人の手続きで(民事再生法221条1項)、千葉地裁の申立書の書式には年金を収入として書く欄があります。返す額と年金の額などで見通しが変わるので、弁護士に確認してください。
Q. 親が年金生活で借金を抱えています。家族が代わりに払う必要はありますか。
A. 保証人になっていなければ、子どもが親の借金を代わりに払う義務はありません(親が亡くなったときの相続は別の問題です)。ただし保証人になっている場合は、親が自己破産をしても保証人への請求は残ります(破産法253条2項)。親本人が相談するのがいちばんですが、家族が付き添って相談窓口を探すこともできます。
まとめ
自己破産と年金について押さえておくことは、次のとおりです。
🔎 30秒でわかる結論
- 年金を受け取る権利は原則として差し押さえ禁止で、破産財団にも入らない(国民年金法24条・厚生年金保険法41条1項・破産法34条3項2号)。自己破産しても年金は受け取れる
- 口座に入った年金は、預金として差し押さえを受けることがある。取り戻す申立ては立証が必要で、認められるとは限らない(大阪地裁)
- 破産手続が始まれば、借入先は個別に取り立てられなくなる(破産法100条1項・42条1項)。手続きが終わった後も、免責の裁判が確定するまでは強制執行ができない(249条1項)
- 未納の年金保険料は残る(国民年金法95条・破産法253条1項1号)。60歳未満で払えない分は免除(50歳未満は納付猶予も)を申請
- 年金担保の貸付は終了。「年金を担保に貸す」業者は違法(厚生労働省)
年金の額がわかる書類と、借入先の一覧、年金が入る口座の通帳を持って相談すれば、どの手続きが合うか、受取口座をどうするかを弁護士と一緒に決められます。口座が差し押さえられる前に、まず相談してください。
借金に関する相談は、無料で受け付けている窓口が多くあります。まずは話だけでも聞いてみるのがおすすめです。
📚 出典(公的機関・法令)を見る
- e-Gov 国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)7条1項1号・9条3号(被保険者の資格)・24条(受給権の保護)・89条1項2号(法定免除)・95条(徴収) https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000141
- e-Gov 厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)41条1項(受給権の保護) https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115
- e-Gov 破産法(平成十六年法律第七十五号)34条3項2号・4項・42条1項・2項・67条1項・97条4号・100条1項・248条4項・249条1項・2項・253条1項1号・2項 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075
- e-Gov 民事執行法 153条1項(差押禁止債権の範囲の変更) https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004
- e-Gov 民事再生法 221条1項(小規模個人再生の要件) https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225
- 法務省「第11話 自己破産は最後の切り札?」 https://www.moj.go.jp/seinen/chapter_11/commentary.html
- 大阪地方裁判所「差押禁止債権の範囲変更申立てQ&A」 https://www.courts.go.jp/osaka/vc-files/osaka/2020/0200401_14minn_kaitei_04/04_tenpufairu/04_01_p.pdf
- 大阪地方裁判所 第6民事部(倒産部)Q&A https://www.courts.go.jp/osaka/saiban/minjibu6/index.html
- 千葉地方裁判所 小規模個人再生手続開始申立書(収入の欄) https://www.courts.go.jp/chiba/vc-files/chiba/2024/minji/saisei/02_2_20240426.pdf
- 法テラス よくある相談「口座に入金された年金が、差し押えられる可能性があります。どうすれば良いですか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/saiban-shikko-001.html
- 法テラス よくある相談(差し押さえられた預金の引き出し) https://www.houterasu.or.jp/site/faq/saiban-shikko-002.html
- 法テラス よくある相談「自己破産のメリット・デメリットは何ですか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-hasan-002.html
- 法テラス よくある相談「任意整理のメリット・デメリットは何ですか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-niniseiri-002.html
- 法テラス「やさしい日本語」借金・債務整理 https://www.houterasu.or.jp/site/yasasiinihongo/saimu-kashitsuke.html
- 法テラス 民事法律扶助(立替)Q&A https://www.houterasu.or.jp/site/soudan-tatekae/tatekaeqa.html
- 日本年金機構「国民年金保険料の強制徴収」 https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo/kyoseichoshu.html
- 日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」 https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150428.html
- 厚生労働省「違法な年金担保融資にご注意ください」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_13756.html
- 独立行政法人福祉医療機構「ご案内2026」 https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/goannai2026-full.pdf
- 厚生労働省 年金担保貸付事業の廃止に関する資料 https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000600315.pdf
- 厚生労働省 家計改善支援事業従事者研修資料(生活保護受給者向け) https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001092869.pdf
本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の判断は弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。(制度・数値は2026年10月時点)
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