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・「自己破産したら、親が亡くなったときの遺産も実家も取られる」
・「遺産はきょうだいに全部譲ってしまえば、取られずに済む」
こんな不安や思い込みから、自己破産に踏み切れずにいる人も多いのではないでしょうか?
しかし、自己破産で処分の対象になるのは、「破産手続開始の時において有する」財産です(破産法34条1項)。法務省は、「債務者が破産手続開始後に新たに取得した財産」を自由財産(手元に残せる財産)の例に挙げています。つまり、親が亡くなった時期によって、遺産の扱いは大きく変わります。
とはいえ、自己破産の申立て前や手続きの途中で親が亡くなった場合は、相続放棄や遺産分割を自己判断で進めると、免責に響くおそれがあるのも事実です。
本記事では、親が亡くなった時期(申し立てる前・手続き中・免責が確定した後)ごとの相続の扱い、相続放棄と遺産分割の注意、親に借金があった場合、個人再生・任意整理との違いについて紹介します。
自己破産を考えている人はもちろんのこと、「親の遺産や実家のことが気になって決められない」という人も、相続放棄や遺産分割の話し合いをする前にしっかりと確認しておきましょう。

父が高齢で、実家は父の名義です。私が自己破産したら、父が亡くなったときに実家の私の取り分まで取られますか。

お父さまが亡くなる時期によって変わります。自己破産で処分の対象になるのは、手続きが始まった時点で持っている財産だからです。手続きが始まった後に受け継いだものは、法務省が説明する「開始後に新たに取得した財産」にあたると考えられます。

もう母は亡くなっていて、遺産の分け方はまだ決めていません。これはどうなりますか。

申し立てる前に亡くなっている場合は、相続した分も財産として扱われます。分け方がまだ決まっていなくても、申立書に書く必要があります。相続放棄や遺産の分け方を決める前に、弁護士に相談してください。順番を間違えると、免責に響くおそれがあります。
🔎 30秒でわかる結論
- ★処分の対象は「破産手続開始の時において有する」財産(破産法34条1項)。親が亡くなった時期で扱いが変わる
- ★申し立てる前に親が亡くなっていれば、相続した分は財産として扱われる。遺産分割がまだでも申立書に書く(札幌地裁は相続財産と遺産分割協議の有無の確認を求め、高知地裁の記載例には、亡くなった親の不動産について遺産分割が「未了」か「終了」かを答える欄がある)
- ★破産手続開始の決定の後に親が亡くなった場合は、法務省が自由財産に挙げる「開始後に新たに取得した財産」にあたると考えられる(相続を名指しした公的資料は見当たらない)
- ★開始決定の前に相続が始まり、開始決定の後に相続放棄をしても、破産財団に対しては限定承認の効力にとどまる(破産法238条1項。破産管財人が放棄の効力を認めることもできる=同条2項)
- ★遺産の分け方を自分の取り分ゼロで決めるのは要注意。最高裁は、遺産分割協議は詐害行為取消しの対象になると判断している(平成11年6月11日)
📖 この記事でわかること
- 親が亡くなった時期で、相続の扱いは変わる
- 申し立てる前に親が亡くなっていた場合
- 自己破産の手続き中に親が亡くなった場合
- 免責が確定した後に親が亡くなった場合
- 相続放棄・遺産分割で、やってはいけないこと
- 親に借金があった場合
- 個人再生・任意整理なら、相続はどうなる?
- 債務整理のデメリットと、それでも今動く理由
- 今の状況ごとに、最短でやること
親が亡くなった時期で、相続の扱いは変わる

どうして、亡くなった時期で変わるんですか。

自己破産では、財産を数える「基準の時点」が決まっているからです。それが、裁判所が破産手続開始の決定をした時点です。申し立てた日ではないので注意してください。
民法882条は「相続は、死亡によって開始する。」と定め、896条は相続人が「相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。」と定めています。つまり、親が亡くなった瞬間に、相続人は遺産を受け継ぎます。
一方、破産法34条1項は、「破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。」と定めています。破産財団とは、債権者への配当に充てるために、お金に換える対象になる財産のことです。そして法務省は、自由財産の例として「(3)債務者が破産手続開始後に新たに取得した財産」を挙げています。
| 親が亡くなった時期 | 相続した財産の扱い |
|---|---|
| 申し立てる前 | 開始の時に持っている財産として、破産財団に入る(34条1項)。申立書に書く |
| 申し立てた後〜破産手続開始の決定の前 | 同じく、開始の時に持っている財産として破産財団に入る(開始決定の前に相続放棄が認められていれば別) |
| 破産手続開始の決定の後 | 「開始後に新たに取得した財産」(法務省)にあたると考えられる |
| 免責が確定した後 | 手続きとは関係なく、ふつうに相続する |
※開始決定の後の相続について、相続を名指しして扱いを書いた公的資料は見当たりません。上の整理は、破産法34条1項の文言と法務省の説明によるものです。実際の扱いは、亡くなった日と開始決定の日を弁護士に伝えて確認してください。
✅ このセクションのまとめ
自己破産で処分の対象になるのは、破産手続開始の決定の時点で持っている財産です。親が亡くなったのがその前か後かで、相続した財産の扱いが変わります。
万が一支払いが難しい場合は、少しでも早い段階で弁護士などの専門家に相談してください。
申し立てる前に親が亡くなっていた場合

母の遺産は、まだ分けていません。私が何かを受け取ったわけではないので、書かなくていいですよね?

いいえ、書く必要があります。分け方が決まっていなくても、相続人であることに変わりはありません。札幌地裁は、親が亡くなっている場合は相続放棄をしたかどうか、遺産分割の話し合いをしたかどうかまで確認するよう求めています。
📄 札幌地裁「破産・免責申立書の書き方と留意事項」
「(12) 不動産以外に相続した財産(21ページ) 質問に従って書いてください。特に、親や配偶者が死亡している場合には、相続放棄の有無を確認し、相続放棄していない場合には、相続財産(負の財産も含む。)の内容及び状況、あなた以外の相続人の有無及び人数、遺産分割協議の有無についても必ず確認し、それらに関する資料も提出してください。」
高知地裁の申立書の記載例(2019年7月版)にも、「申立人の両親等で,不動産を所有していたままで亡くなった方はいますか」という問いがあり、遺産を分ける話し合いが「未了」か「終了」か、家庭裁判所で相続放棄の手続をしたかを答える欄があります。
申し立てる前に親が亡くなっていれば、相続した分は、開始の時に持っている財産として破産財団に入ります(34条1項)。実家の土地や建物の持分も同じです。「遺産分割がまだだから」「登記を変えていないから」といって、書かなくていいことにはなりません。
💡 ここ、勘違いされがち
相続した財産を書かずに申し立てると、財産を隠したことになりかねません。破産法252条1項1号は、「債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿」などを、免責を許可しない事由に挙げています。裁判所の調査で虚偽の説明をすることも、同じく免責を許可しない事由です(同項8号)。
✅ このセクションのまとめ
申し立てる前に親が亡くなっていれば、遺産分割がまだでも、相続した分は財産として申立書に書きます。札幌地裁は、相続放棄の有無や遺産分割協議の有無まで確認するよう求めています。
すでに親が亡くなっていて、遺産をどう扱えばいいかわからないという方は、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
自己破産の手続き中に親が亡くなった場合

もし手続きの途中で父が亡くなったら、どうなりますか。

「破産手続開始の決定」の前か後かで分かれます。開始決定の後なら、受け継いだ遺産は「開始後に新たに取得した財産」にあたると考えられます。開始決定の前なら、開始の時に持っている財産として破産財団に入ります。
申し立ててから破産手続開始の決定が出るまでの間に親が亡くなった場合は、開始の時にはすでに相続人なので、相続した分は開始の時に持っている財産になります(開始決定の前に家庭裁判所で相続放棄が認められていれば、初めから相続人とならなかったものとみなされます=民法939条)。
この場合に気をつけたいのが、破産法238条です。同条は、開始決定の前に相続が始まっていた場合に、開始決定の後に相続を承認したり放棄したりしたときの効力を定めています(申し立てる前に親が亡くなっていた場合も同じです)。
📄 破産法238条(破産者の単純承認又は相続放棄の効力等)
「破産手続開始の決定前に破産者のために相続の開始があった場合において、破産者が破産手続開始の決定後にした単純承認は、破産財団に対しては、限定承認の効力を有する。破産者が破産手続開始の決定後にした相続の放棄も、同様とする。」
「2 破産管財人は、前項後段の規定にかかわらず、相続の放棄の効力を認めることができる。この場合においては、相続の放棄があったことを知った時から三月以内に、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。」
限定承認とは、「相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をする」ことです(民法922条)。つまり、開始決定の後にした相続放棄は、破産財団に対しては原則として限定承認の効力になるということです。放棄したつもりでも、破産財団との関係では相続を受け入れ、受け継いだ財産の範囲で親の債務を負う扱いになります。例外として、破産管財人は放棄の効力を認めることができます(238条2項)。
開始決定の後に親が亡くなった場合は、破産財団に入るのは開始の時に持っていた財産(34条1項)なので、その後に受け継いだ遺産は、法務省のいう「開始後に新たに取得した財産」にあたると考えられます。
| 親が亡くなった時期 | 相続した財産 | 相続放棄の効力 |
|---|---|---|
| 開始決定の前(申し立てる前を含む) | 開始の時に持っている財産として破産財団に入る | 開始決定の後にした放棄は、破産財団に対しては限定承認の効力(238条1項)。管財人が放棄の効力を認めることもできる(同条2項) |
| 開始決定の後 | 「開始後に新たに取得した財産」(法務省)にあたると考えられる | 238条1項は「破産手続開始の決定前に」相続が始まった場合の規定なので、この場合には当たらない |
✅ このセクションのまとめ
手続きの途中で親が亡くなった場合は、破産手続開始の決定の前か後かで扱いが分かれます。開始決定の前に相続が始まっていれば、開始決定の後にした相続放棄は、破産財団に対しては限定承認の効力にとどまります(破産法238条1項。管財人が放棄の効力を認めることもできる=同条2項)。
そのため、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談するようにしてください。
免責が確定した後に親が亡くなった場合

自己破産の手続きが終わって免責が確定した後に親が亡くなったら、遺産は受け取れますか。

受け取れます。免責が確定した後に受け継ぐ遺産は、処分の基準になる「破産手続開始の時」よりずっと後に手に入る財産だからです。ほかの相続人と同じように、相続を承認するか放棄するかを選べます。
破産財団に入るのは「破産手続開始の時において有する」財産です(34条1項)。破産の手続きが終わり、免責が確定した後に親が亡くなった場合は、処分の基準になる「開始の時」よりずっと後に受け継いだ財産です。その遺産が破産手続で処分されることはありません。
「自己破産をした人は相続できない」という決まりもありません。相続人は、亡くなった人の「一切の権利義務を承継する」(民法896条)ので、遺産だけでなく、親の借金も受け継ぐ点は、ほかの相続人と同じです。
✅ このセクションのまとめ
免責が確定した後に親が亡くなった場合は、ほかの相続人と同じように相続できます。親に借金があれば、相続放棄を選ぶこともできます。
これから自己破産を考えていて、親の相続のことも気になるという方は、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
相続放棄・遺産分割で、やってはいけないこと

どうせ取られるなら、遺産はきょうだいに全部渡して、私の取り分はゼロにしておけばいいですか。

おすすめしません。自己判断で決めるのは避けてください。遺産の分け方の話し合いは、債権者から取消しを求められることがあると、最高裁が判断しています。相続放棄と遺産分割では扱いが違うので、どちらを選ぶかも含めて、弁護士と決めましょう。
| 最高裁の判断(裁判要旨) | |
|---|---|
| 相続放棄 | 「相続の放棄は、民法四二四条の詐害行為取消権行使の対象とならない。」(最高裁 昭和49年9月20日判決) |
| 遺産分割協議 | 「共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となる。」(最高裁 平成11年6月11日判決) |
※詐害行為取消しは、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを、債権者が裁判所に請求できる制度です(民法424条1項)。2つの判決は民法424条についてのもので、破産手続の中で同じように扱われるかを直接示した公的資料は見当たりません。
遺産分割の話し合いで自分の取り分をゼロにすると、本来受け取れたはずの財産を手放すことになります。申し立てる前にこれをすると、財産を減らす行為として問題にされるおそれがあります。破産法252条1項1号は、「債権者を害する目的で」財産を隠したり、「債権者に不利益な処分」をしたりすることを、免責を許可しない事由に挙げています。
| 行動 | 考え方 |
|---|---|
| 遺産分割で自分の取り分をゼロにする | 最高裁は、遺産分割協議は詐害行為取消しの対象になると判断(平成11年)。自己判断でしない |
| 相続した預金や現金を、きょうだいに渡す | 財産を減らす行為として、免責を許可しない事由(252条1項1号)の問題になりうる |
| 相続した財産を申立書に書かない | 財産を隠す行為・虚偽の説明(252条1項1号・8号)になりうる |
| 開始決定の後に相続放棄をする | 開始決定前に相続が始まっていた場合、破産財団に対しては限定承認の効力(238条1項。管財人が放棄の効力を認めることもできる) |
| 相続放棄をするか、遺産分割で分けるかを決める | 申し立てる前に、弁護士と一緒に決める |
✅ このセクションのまとめ
遺産の分け方で自分の取り分をゼロにしたり、相続した財産をきょうだいに渡したりするのは、自己判断でしないでください。相続放棄と遺産分割では扱いが違うので、選び方から弁護士に相談しましょう。
きょうだいとの遺産の分け方を決めようとしているという方は、話し合いの前に、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
親に借金があった場合

父にも借金があるかもしれません。私が相続したら、また借金が増えてしまいますか。

何もしないと、親の借金も受け継ぐことになります。ただ、家庭裁判所で相続放棄をすれば、初めから相続人ではなかったことになります。期限は、原則として、親が亡くなって自分が相続人になったと知った時から3か月です。
相続人は、亡くなった人の「一切の権利義務を承継する」(民法896条)ので、遺産だけでなく借金も受け継ぎます。相続人は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に」、相続を承認するか放棄するかを決めなければなりません(民法915条1項)。この期間内に放棄などをしなければ、単純承認をしたものとみなされます(民法921条2号)。
| 相続放棄(裁判所の案内より) | |
|---|---|
| 申述する先 | 家庭裁判所(民法938条) |
| 期間 | 自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内。家庭裁判所は期間を伸ばすこともできる |
| 費用 | 収入印紙800円分(申述人1人につき)と連絡用の郵便切手 |
| 効果 | 「初めから相続人とならなかったものとみなす」(民法939条) |
ただし、開始決定の前に親が亡くなり、開始決定の後に相続放棄をする場合は、238条の決まりがかかります。親の財産と借金のどちらが多いかによって、放棄するのが得か、限定承認がいいかも変わります。自分が相続人になったと知った時から3か月の期限があるので、親の借金が見つかったら、自分の破産を依頼している弁護士にすぐ伝えてください。
✅ このセクションのまとめ
親に借金がある場合は、家庭裁判所で相続放棄をすれば受け継がずに済みます。期限は原則3か月で、収入印紙800円などがかかります。開始決定の前に親が亡くなり、開始決定の後に放棄する場合は238条の決まりがかかるので、弁護士と決めてください。
万が一支払いが難しい場合は、少しでも早い段階で弁護士などの専門家に相談してください。
個人再生・任意整理なら、相続はどうなる?

実家を手放したくありません。自己破産以外の方法なら、相続した分を残せますか。

個人再生や任意整理なら、相続した財産を手放さずに済む道があります。ただ、個人再生では、相続した財産の評価額が、最低限返す額を決める計算(清算価値)に入ります。
個人再生は、財産を処分せずに、借金を減らした額を原則3年で返していく手続きです。裁判所は「その返済総額が、債務者が自分の財産を処分して返済に当てる場合の額(清算価値)を上回らなければなりません」と説明しています。
千葉地裁の個人再生の書式には、財産目録に「12 相続財産」の欄があり、「被相続人、続柄、相続分、相続時期、相続した財産及び評価額を記載してください。」「遺産分割未了の場合も含みます」と書かれています。なお、相続した不動産(実家の持分など)は、相続財産の欄ではなく「11」の不動産の欄に書くよう指示されています。相続した財産は手元に残せますが、その評価額が、最低限返す額を決める計算(清算価値)に入るということです。
任意整理について、法テラスは「裁判所などの公的機関を利用せず、当事者が私的に話合いをして、支払額や支払方法について合意をする手続です。」と説明しています。裁判所に財産を申告して処分する手続きではないので、相続した財産を手放すことはありません。ただし、法テラスはデメリットとして「債権者の了解と支払原資が必要になる。」とも書いています。
| 自己破産 | 個人再生 | 任意整理 | |
|---|---|---|---|
| 申し立てる前に相続した財産 | 破産財団に入る(34条1項) | 手元に残る。評価額は清算価値に入る(千葉地裁の書式) | 手元に残る |
| 遺産分割がまだの相続 | 開始の時に持っていれば申立書に書く(札幌地裁の案内) | 「遺産分割未了の場合も含みます」として申立書に書く(千葉地裁の書式) | 裁判所に申告する手続きではない |
| 借金 | 免責されれば支払義務がなくなる | 減額した額を原則3年で返す | 話し合いで返し方を決める |
| 向いている人 | 返せる見込みがない | 収入があり、財産を残したい | 利息の見直しなどで返していける |
※個人再生の最低限返す額は、借金の額と清算価値などで決まります(小規模個人再生は民事再生法174条2項4号・231条2項3号・4号)。
✅ このセクションのまとめ
個人再生なら相続した財産を手放さずに済みますが、評価額が最低限返す額を決める計算(清算価値)に入ります。任意整理は財産を処分する手続きではありませんが、相手の了解と返していける収入が前提です。
親から受け継いだ実家などを残したまま借金を整理したいという方は、どの手続きが合うかを、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
債務整理のデメリットと、それでも今動く理由

相続のことはわかりました。でも、債務整理そのもののデメリットも気になります。

先にお伝えしますね。デメリットはあります。そのうえで、親が亡くなってから慌てて動くより、今のうちに手続きの順番を決めておくほうが、選べる道は多く残ります。
| デメリット | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 自己破産では財産を失う | 「生活に必要な家財道具等の一定の財産以外は、失うことになる。(ただし、99万円以下の現金は手元に残せる。)」 | 法テラス |
| 個人再生では財産の額が返す額に響く | 返済総額が清算価値を上回らなければならない | 裁判所 |
| 任意整理には相手の了解と原資が要る | 「債権者の了解と支払原資が必要になる。」 | 法テラス |
| 借入れ・カードが作りにくくなる | 「信用情報を取り扱う機関に登録されることにより、数年間は、借入れやクレジットカードの作成が難しくなる。」(任意整理) | 法テラス |
親が亡くなった後は、相続放棄の3か月の期限と、自分の破産の手続きが同時に進むことになります。そのうえ、返済が滞って裁判を起こされれば、相続した預金や給料が差し押さえられることもあります。
今のうちに相談すれば、どの手続きを選ぶか、相続が起きたときにどう動くかを、先に決めておけます。なお、本記事は、相続の時期に合わせて申立ての時期を操作することを勧めるものではありません。財産や事情は、ありのまま申告するのが前提です。
✅ このセクションのまとめ
債務整理にはデメリットがありますが、相続が起きてから慌てて動くと、選べる手続きも順番も限られます。親が元気なうちに、手続きの段取りを決めておくのが近道です。
親が高齢で、相続のことが気になって債務整理を先延ばしにしているという方は、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
今の状況ごとに、最短でやること
| 今の状況 | 最短でやること |
|---|---|
| 親がすでに亡くなっていて、遺産分割がまだ | 分け方を決める前に相談。親の財産のわかる範囲の資料と相続人の一覧、自分の借入先の一覧を持っていく |
| 親が亡くなったばかりで、親に借金がありそう | 3か月の期限があるので、すぐ相談。相続放棄と自分の破産の順番を決める |
| 自己破産の手続き中に親が亡くなった | 依頼している弁護士にすぐ伝える。亡くなった日と開始決定の日を確認する |
| 親が高齢で、実家が親の名義 | 今のうちに相談し、どの手続きを選ぶか、相続が起きたときどう動くかを決めておく |
| 実家を残したい | 個人再生や任意整理で残せるかを相談する |
そのため、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談するようにしてください。
よくある質問
Q. 免責が確定した後に親が亡くなったら、遺産は受け取れますか。
A. 受け取れます。破産財団に入るのは「破産手続開始の時において有する」財産なので(破産法34条1項)、開始の時よりずっと後に受け継いだ財産が破産手続で処分されることはありません。
Q. 自己破産の手続き中に親が亡くなったら、遺産は取られますか。
A. 破産手続開始の決定の前か後かで変わります。開始決定の前に亡くなっていれば、相続した分は開始の時に持っている財産として破産財団に入ります。開始決定の後なら、法務省が自由財産に挙げる「開始後に新たに取得した財産」にあたると考えられます。相続を名指しした公的資料は見当たらないので、弁護士に確認してください。
Q. 自己破産する前に相続放棄をすれば、遺産を取られずに済みますか。
A. 放棄の時期によって変わります。開始決定の前に家庭裁判所で相続放棄が認められれば、初めから相続人とならなかったものとみなされるので(民法939条)、その遺産は財産に入らないと考えられます。最高裁は、相続放棄は民法424条の詐害行為取消しの対象にならないと判断していますが(昭和49年9月20日)、破産手続での扱いを直接示したものではありません。また、開始決定の前に相続が始まり、開始決定の後に放棄した場合は、破産財団に対しては限定承認の効力にとどまります(破産法238条1項。管財人が放棄の効力を認めることもできる=同条2項)。放棄の時期と方法は弁護士と決めてください。
Q. 遺産分割で、自分の取り分をきょうだいに譲ってもいいですか。
A. 自己判断でしないでください。最高裁は、遺産分割協議は詐害行為取消しの対象になると判断しています(平成11年6月11日)。財産を債権者に不利益に処分する行為は、免責を許可しない事由にもなりえます(破産法252条1項1号)。
Q. 相続した財産を申告しないとどうなりますか。
A. 財産を隠すことや、裁判所の調査で虚偽の説明をすることは、免責を許可しない事由です(破産法252条1項1号・8号)。札幌地裁は、親や配偶者が亡くなっている場合は、相続放棄の有無や遺産分割協議の有無まで確認して書くよう求めています。必ず申告してください。
まとめ
自己破産と相続について押さえておくことは、次のとおりです。
🔎 30秒でわかる結論
- 処分の対象は「破産手続開始の時において有する」財産(破産法34条1項)。親が亡くなった時期で扱いが変わる
- 申し立てる前に亡くなっていれば、相続した分は財産として申立書に書く。遺産分割がまだでも同じ(札幌地裁・高知地裁の案内)
- 開始決定の後の相続は、法務省が自由財産に挙げる「開始後に新たに取得した財産」にあたると考えられる。免責が確定した後の相続は、ふつうに受け取れる
- 開始決定の前に相続が始まり、開始決定の後にした相続放棄は、破産財団に対しては限定承認の効力(238条1項。管財人が放棄の効力を認めることもできる)。遺産分割で取り分をゼロにするのは自己判断でしない
- 個人再生なら相続した財産を残せるが、評価額は清算価値に入る。任意整理は財産を処分する手続きではない
親の財産のわかる範囲の資料と相続人の一覧、自分の借入先の一覧を持って相談すれば、どの手続きを選ぶか、相続が起きたときにどう動くかを弁護士と一緒に決められます。相続放棄や遺産の分け方を決める前に、まず相談してください。
借金に関する相談は、無料で受け付けている窓口が多くあります。まずは話だけでも聞いてみるのがおすすめです。
📚 出典(公的機関・法令)を見る
- e-Gov 破産法(平成十六年法律第七十五号)34条1項(破産財団の範囲)・238条(破産者の単純承認又は相続放棄の効力等)・252条1項1号・8号(免責許可の決定の要件等) https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075
- e-Gov 民法(明治二十九年法律第八十九号)424条1項(詐害行為取消請求)・882条・896条・915条1項・921条2号・922条・938条・939条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 法務省「借金等の返済が困難となった被災者の方へ」Q5「破産手続をとると,手元の財産は無くなってしまうのですか。」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00098.html
- 札幌地方裁判所「破産・免責申立書の書き方と留意事項」((12) 不動産以外に相続した財産) https://www.courts.go.jp/sapporo/vc-files/sapporo/file/hasan_saisei/R6.1_moushitatesyonokakikata.pdf
- 高知地方裁判所 破産手続開始・免責許可申立書の記載例(2019年7月版) https://www.courts.go.jp/kouchi/vc-files/kouchi/file/hasan1-2_20190701.pdf
- 千葉地方裁判所 小規模個人再生手続開始申立書(財産目録「12 相続財産」) https://www.courts.go.jp/chiba/vc-files/chiba/2024/minji/saisei/02_2_20240426.pdf
- 裁判所「個人再生」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_18/index.html
- 裁判所「相続の放棄の申述」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
- 最高裁判所 昭和49年9月20日 第二小法廷判決(昭和47(オ)1194) 裁判要旨 https://www.courts.go.jp/hanrei/54191/detail2/index.html
- 最高裁判所 平成11年6月11日 第二小法廷判決(平成10(オ)1077) 裁判要旨 https://www.courts.go.jp/hanrei/52217/detail2/index.html
- e-Gov 民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)174条2項4号・231条2項3号・4号 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225
- 法テラス よくある相談「自己破産のメリット・デメリットは何ですか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-hasan-002.html
- 法テラス よくある相談「任意整理とは何ですか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-niniseiri-001.html
- 法テラス よくある相談「任意整理のメリット・デメリットは何ですか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-niniseiri-002.html
本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の判断は弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。(制度・数値は2026年10月時点)
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