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・「家計簿なんてつけていないし、レシートも捨ててしまった」
・「陳述書に借金の理由やギャンブルのことを書いたら、免責されないのでは」
こんな不安から、自己破産の書類に手をつけられずにいる人も多いのではないでしょうか?
しかし、家計簿(家計収支表)は、申立ての直前の短い期間の分を書く書類です。確認できた資料では、札幌地裁が直前1か月分、松江地裁の様式と秋田地裁の一覧が2か月分です。何年分もさかのぼって書くものではありません。陳述書も、札幌地裁は職歴の欄について覚えていない項目は「覚えていません。」と書くよう案内しています。ギャンブルが原因の借金でも、裁判所の判断で免責が許可されることがあります(破産法252条2項)。
とはいえ、家計簿や陳述書にうそを書くと、免責を受けられないことや刑罰の対象になることがあるのも事実です。
本記事では、自己破産の家計簿と陳述書の書き方、レシートがない・合わないとき、ギャンブルが原因のとき、うそを書いた場合の扱いについて紹介します。
すでに弁護士から書類を渡されて手が止まっている人はもちろんのこと、「書類が書けそうにないから、自己破産はあきらめよう」と思っている人も、何をどこまで書けばいいのかをしっかりと理解しておきましょう。

弁護士さんから家計簿をつけてくださいと言われました。でも、今まで一度もつけたことがなくて、レシートもほとんど捨てています……。

大丈夫です。今から準備しても書けます。裁判所に出す家計表は、申立ての直前の短い期間の分で、札幌地裁なら直前の1か月分、松江地裁なら2か月分です。書き方の指示は、通帳や給与明細、レシートの金額を見て、おおよそではなく正確に書くことです。通帳や給与明細で書ける分もありますし、今日からレシートを取っておけば、その期間の分はそろえやすくなります。

陳述書のほうはもっと不安です。借金の一部はパチンコに使いました。正直に書いたら、自己破産できなくなりますか?

正直に書いたことで道が閉じるわけではありません。ギャンブルは免責不許可事由ですが、裁判所が事情を考えて免責を許可する「裁量免責」があります。千葉地裁も「大切なのは,申立書の作成や裁判官との面接の際,裁判所に対して本当の事実を明らかにすることです。」と書いています。本当に危ないのは、ギャンブルに使ったお金を「生活費」とごまかすことです。
🔎 30秒でわかる結論
- ★家計簿(家計収支表)は申立て直前の短い期間の分。確認できた資料では、札幌地裁=直前1か月分、松江地裁の様式・秋田地裁の一覧=2か月分。同居家族も含めた世帯全体の収入と支出を書く(札幌・松江・新潟)
- ★書き方は「正確に・一致させる」。札幌地裁は、通帳・給与明細・レシート等の金額を確認して書き、前月からの繰越金を加えた収入合計と、翌月への繰越金を加えた支出合計が一致するか確かめるよう求めている。20万円以上の繰越は内訳の説明が要る
- ★レシートが全部なくても、すぐ諦めなくていい。確認した範囲では、すべてのレシートの提出を求める公的資料は見当たらない。千葉地裁が領収書の写しを求めているのは、水道光熱費などを現金で払って通帳に出ない場合
- ★陳述書は時系列で具体的に。職歴で覚えていない項目は「覚えていません。」と書く(札幌地裁)。借入れの時期は取引履歴で確かめる。具体的事情は1〜2頁程度に簡潔に(松江地裁)
- ★ギャンブルでも裁量免責がある(破産法252条2項)。危ないのは、うそ・ごまかし。うその説明は免責不許可事由(252条1項8号など)で、管財人へのうその説明には刑罰もある(268条1項)
📖 この記事でわかること
- 自己破産の家計簿(家計収支表)と陳述書とは?
- 家計簿は何か月分・いつまで?世帯全体で書く
- 家計簿の書き方|費目・繰越金・収支を合わせる
- レシートがない・合わない・繰越金が多いときは?
- 陳述書の書き方|何を書く?思い出せないときは?
- ギャンブル・浪費が原因のとき|反省文は要る?
- 家計簿や陳述書の嘘はバレる?うそを書いたらどうなる
- 書類づくりのデメリットと、今の状況ごとに最短でやること
自己破産の家計簿(家計収支表)と陳述書とは?

そもそも、なぜ家計簿や陳述書を出さないといけないんですか?

裁判所が、手続きの進め方と、免責を認めるかどうかを判断するための資料だからです。家計簿で今の暮らしのお金の流れを、陳述書で借金がふくらんだいきさつを、裁判所に伝えます。
松江地裁の記入要領は「破産の申立書類は、破産手続開始決定の可否、同時廃止の可否、免責許可の可否を判断するための重要な資料になります。」としています。法テラスも、自己破産の手続きでは「債務の状況、財産の状況、自己破産に至る経緯などを整理した申立書を作成の上、必要書類を添えて」申し立てると説明しています。
| 書類 | 中身 | 裁判所の資料の例 |
|---|---|---|
| 家計簿(家計収支表・家計表・家計の状況) | 申立て直前の一定期間の、世帯の収入と支出 | 札幌=直前1か月分/松江=申立前2か月分/新潟=同居している人全員を含めた世帯の家計 |
| 陳述書(報告書) | 職歴、家族、借金をした理由といきさつ、支払えなくなった時期、浪費やギャンブルなどの有無 | 松江の様式=職歴(現在から7年前まで)・浪費等の有無など/札幌=時系列で具体的に |
※書類の名前・様式・期間は裁判所ごとに違います。申し立てる裁判所の書式で確認してください。
✅ このセクションのまとめ
家計簿と陳述書は、裁判所が同時廃止か管財事件か、免責を認めるかを判断する資料です。名前や様式は裁判所ごとに違います。
書類を見ても何を書けばいいかわからないという方は、ひとりで抱え込まずに、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
家計簿は何か月分・いつまで?世帯全体で書く

家計簿は、何か月分書けばいいんですか?過去何年分も必要ですか?

確認できた資料では、申立ての直前の1〜2か月分です。札幌地裁は直前の1か月分、松江地裁の様式と秋田地裁の一覧は2か月分で、裁判所によって違います。それと、自分の分だけでなく、一緒に暮らしている家族の分も合わせて書きます。
札幌地裁の「破産・免責申立書の書き方と留意事項」(R6.1版)は、家計表について「申立直前の1か月分(例えば、1月に申立てをする場合は前年12月1日から同月末まで。または、11月の給料日~12月の給料日の前日までの分)について作成してください。」としています。松江地裁の家計収支表の様式には「申立前2か月分」と書かれ、月ごとに2列で書く形です。
世帯全体で書く点は、複数の裁判所が書いています。札幌地裁は「あなたの収入と支出だけではなく、同居する世帯全体の収入と支出について書いてください。」、新潟地裁(令和3年2月改訂)は「申立てをするあなただけの家計の状況ではありません。同居している方全員を含めた世帯としての家計の状況を記載します。」としています。松江地裁も、「家計を同じくしている人の収入も記載し、誰の収入でどのように生計をたてているか分かるように記載してください。」としています。
| 裁判所 | 期間 | 誰の分 |
|---|---|---|
| 札幌地裁(R6.1版) | 申立直前の1か月分 | 家計を同一にする世帯全員分 |
| 松江地裁(家計収支表の様式) | 申立前2か月分 | 家計を同じくしている人の収入・支出も |
| 秋田地裁(添付書類一覧表) | 家計収支表(1)(2)(2か月分) | —(一覧表の該当部分に記載なし) |
| 新潟地裁(令和3年2月改訂) | —(資料の該当部分に期間の記載は見当たらない) | 同居している方全員を含めた世帯 |
| 法テラス(相談に行くときの持ち物) | 1か月間の収入・支出の内訳を整理した家計簿(できれば最近2、3か月分) | — |
💡 「いつまで書くの?」
「家計簿はいつまで書くのか」という疑問には、確認した範囲では、申立ての後も書き続けるよう求める公的資料は見当たりませんでした。ただし、裁判所に出すのは申立て直前の期間の分なので、申立ての時期が決まるまでは記録を続けておくと安心です。具体的な期間は、依頼した弁護士に確認してください。
✅ このセクションのまとめ
家計簿は申立て直前の短い期間の分(確認できた資料では1〜2か月分)で、同居家族を含めた世帯全体の分を書きます。期間は裁判所によって違うので、弁護士に確認しましょう。
家族の収入をどう書けばいいかわからないという方は、書き始める前に、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
家計簿の書き方|費目・繰越金・収支を合わせる

書き方の決まりはあるんですか?食費は大体でいいですか?

大体ではなく、通帳や明細、レシートの金額を見て書きます。最後に、繰越金も含めて「収入の合計」と「支出の合計」がぴったり合うかを確かめます。
札幌地裁は、家計表について「事前に準備した給与明細書及び領収書・レシート等に書かれた金額を基にして、申立直前の1か月分の収入と支出(いずれも家計を同一にする世帯全員分)を正確に書いてください。」とし、「書き終わったら、前月からの繰越金を加えた収入合計額と、翌月への繰越金を加えた支出合計額が一致するかどうか確認してください。」としています。さらに、「おおよその金額ではなく、収入については、預貯金通帳の振込金額や給与明細書及び公的扶助の決定書等の支給額を、支出については、通帳の引落し額及び領収書・レシート等の金額を確認して」正確に書くよう求めています。
| 札幌地裁の主なチェック項目(R6.1版) | 内容 |
|---|---|
| まとめて入る収入・出る支出 | 年金・児童手当などは、ひと月分に計算し直して書く |
| 公的扶助 | 生活保護以外の年金・児童手当なども漏れなく書く |
| 繰越金 | 翌月への繰越が赤字でないか、不自然に多くないか。20万円以上は内訳(現金・預貯金等)を説明 |
| 自動車 | 駐車場代・ガソリン代・自動車保険料の有無を確認 |
| 保険料・返済 | 契約者・返済しているのが本人か同居者か。保険証券の掛金と通帳の引落し額が合うか |
| 携帯電話代 | 利用明細書を見て書く |
| 弁護士報酬・法テラスへの償還金 | 支払っていれば支出欄に書く |
| 高額な支出 | 内容と必要性を上申書で説明 |
出典:札幌地方裁判所「破産・免責申立書の書き方と留意事項」(R6.1版)(2026年10月時点)
費目は裁判所の様式に並んでいます。松江地裁の家計収支表の様式には、「食 費」「嗜好品代」「外食費」「娯楽費」「債務返済実額(申立人分)」「債務返済実額(同居者分)」などの欄があります。タバコやお酒の代金をどこに書くかの明文は確認した範囲では見当たりませんが、松江の様式なら「嗜好品代」の欄があります。新潟地裁は、世帯全員分の交通費や保険料について「内容説明欄にその内訳を記載し,該当する方の車検証や保険証書等の写しを添付して下さい。」としています。
💡 家計表は通帳や明細と照らし合わされる
家計表は、ほかの書類と照らし合わせて読まれます。札幌地裁は、「当該期間中の預貯金通帳の入金や残高が、家計表の収入や繰越よりも多くなっていないかどうかも確認してください。」としています。保険料は保険証券、携帯代は利用明細、車の費用は車検証と、それぞれ合っているかを確かめましょう。
✅ このセクションのまとめ
家計簿は、通帳・給与明細・レシートの金額で正確に書き、繰越金を含めて収入と支出の合計を一致させます。費目は裁判所の様式に従い、通帳や保険証券などと食い違わないようにします。
家計表の数字がどうしても合わないという方は、無理に数字をつくらずに、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
レシートがない・合わない・繰越金が多いときは?

レシートを捨ててしまった月は、どうすればいいですか?数字が合わないときに、適当に調整してもいいですか?

数字を適当に調整するのはやめましょう。合わないなら、その理由を弁護士に話して、説明を付けるのが正しいやり方です。レシートについては、確認した範囲では、すべてのレシートを提出するよう求める公的資料は見当たりません。確認できた資料では、家計表の対象は直前の1〜2か月分なので、今日からレシートを取っておけば、その期間の分はそろえやすくなります。
レシートの扱いについて、札幌地裁が求めているのは、領収書・レシート等の金額を確認して正確に書くことです。千葉地裁の「預貯金通帳に関する留意点」は、「通帳に、水道光熱費等の記載がない場合は、通帳提出に漏れがある可能性がある。コンビニ等での現金払いの場合は、領収書の写しを別途提出する。」としています。現金で払っていて通帳に出てこない支払いは、領収書が裏付けになるということです。
繰越金が多い場合について、札幌地裁は「20万円以上の繰越がある場合は、その内訳(現金及び預貯金等)を確認して説明してください(別にA4判用紙に書く。)。」としています。財産目録の説明でも、「直近の家計表に高額の翌月への繰越がある場合は、相当額の現金及び預貯金を保有していることがうかがわれます。」とし、申立てのときにその分の現金や預貯金がなければ、「その理由及び使途を説明してください。」としています。
| 困っていること | 公的資料からわかる対処 |
|---|---|
| レシートを捨てた | すべてのレシートの提出を求める資料は確認した範囲で見当たらない。札幌は通帳の引落し額とレシート等の金額を確認して書くよう求めている。通帳や明細で確認できる分はそれで書き、足りない分の扱いは弁護士に確認する。これからの分はレシートを取っておく |
| 現金払いで通帳に出ない | 水道光熱費等をコンビニなどで現金払いしている場合は、領収書の写しを別に出す(千葉) |
| 収入と支出が合わない | 前月からの繰越金を加えた収入合計と、翌月への繰越金を加えた支出合計の一致を確認する(札幌)。通帳の入金・残高が家計表より多くないかも確認 |
| 繰越金が多い | 20万円以上の繰越は内訳を説明。申立て時にその分の現金・預貯金がなければ、理由と使途を説明(札幌) |
| 高額な支出がある | 内容と必要性を上申書で説明(札幌) |
⚠️ 合わない数字を「つくらない」
数字が合わないからといって架空の支出を書き足すと、事実と違う書類を裁判所に出すことになります。法テラスは、免責決定がされない場合の例に「裁判所に一部の財産を申告しなかったり、虚偽の書類を提出する。」を挙げています。破産法252条1項8号も、裁判所が行う調査での「虚偽の説明」を免責不許可事由にしています。合わない理由(現金で何かを払った、家族に渡した、など)を思い出して、弁護士に伝えてください。
✅ このセクションのまとめ
レシートが全部なくても、通帳や明細でわかる分は書けます。足りない分の扱いは弁護士に確認しましょう。現金払いの公共料金などは領収書が裏付けになります。合わない数字や多い繰越金は、つくらずに理由を説明します。
レシートや通帳がそろわず困っているという方は、書類を出す前に、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
陳述書の書き方|何を書く?思い出せないときは?

陳述書には、どんなことを書くんですか?何年も前の借入れなんて、もう覚えていません……。

職歴、家族、借金をした理由と、いつ・どこから・いくら借りて何に使い、いつから払えなくなったかを、時系列で書きます。札幌地裁は、職歴の欄で覚えていない項目は「覚えていません。」と書いてくださいとしています。ただし、その職歴を省略してはいけません。借入れの時期は、取引履歴や債権者一覧表と照らし合わせて確かめながら書きます。思い出せない分は、弁護士と一緒に組み立てていきましょう。
松江地裁の陳述書の様式は、冒頭に「この陳述書の内容は、事実と相違ありません。」とあり、「職歴(現在から7年前まで)」のほか、「浪費等(飲食・飲酒、投資・投機、商品購入、ギャンブル等)」の有無をチェックする欄などがあります。記入要領は、具体的事情について「生い立ち等は省略し、借入れを始めたころから破産申立てに至るまでを時系列に従って記載してください。」、「記載にあたっては、他の記載内容と齟齬がないか検討の上、1ないし2頁程度に簡潔にまとめて記載してください。」としています。
札幌地裁は「書き方の例」として、“いつ”“どのような事情で”“誰から”“いくら”借り入れて(購入し)、“どのようなことに”“いくら”使い、“いつから”“どのような事情で”支払えなくなったのかを書くよう示しています。書き方のポイントには、借入れの事情について「債権者一覧表の取引開始時期と矛盾しないかどうかを確認する。」、支払不能を認識した状況について「その時期についての記載が漏れていることが多いので、注意してください。」とあります。
| 陳述書の主な中身(札幌地裁の書き方のポイントから) | 書くこと |
|---|---|
| 借入れを始めた当時の状況 | 生活状況、勤務先、収入、家族構成、同居者の債務の有無 |
| 借入れの事情 | いつ、いくらを、どのような理由で、どこから借り、何に使ったか(債権者一覧表の取引開始時期と矛盾しないか確認) |
| 借金が増えた経緯 | 返せなかった事情、さらに借りた理由 |
| 返済の状況 | いつまで普通に返せていて、いつから返済のための借入れが始まったか |
| 支払不能を認識した状況 | 減収・失業・追加融資を断られた など。時期の書き漏れに注意 |
| 免責不許可事由がある場合 | その行為に至った経緯と、やむを得ない事情があればその記載 |
出典:札幌地方裁判所「破産・免責申立書の書き方と留意事項」(R6.1版)(2026年10月時点)
💡 例文より「自分の時系列」
「陳述書の例文」を探す人は多いのですが、裁判所が示しているのは、上のような書く項目と順番です。ネットの例文をそのまま写すと、自分の通帳や債権者一覧表と食い違うおそれがあります。松江地裁も「生活費不足」といったキーワードだけでなく、「それに至った具体的理由が分かるようにしてください」としています。自分の取引履歴と通帳を見ながら、自分の言葉で書きましょう。
✅ このセクションのまとめ
陳述書は、借入れを始めたころから今までを時系列で、具体的に書きます。職歴で覚えていない項目は「覚えていません。」と書き、省略はしません(札幌地裁)。例文を写すより、通帳と取引履歴を見ながら自分の事実を書くことが大切です。
借金のいきさつを思い出せず書けないという方は、取引履歴を取り寄せるところから、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
ギャンブル・浪費が原因のとき|反省文は要る?

パチンコに使ったことを書いたら、それだけで免責されないんですよね?反省文も書かないといけませんか?

それだけで終わりではありません。ギャンブルは免責不許可事由ですが、裁判所が事情を考えて免責を許可する「裁量免責」の規定があります。反省文については、確認した範囲では、提出を求める公的資料は見当たりませんでした。札幌地裁の書き方のポイントにあるのは、その行為に至った経緯と、やむを得ない事情があればそれを書くことです。
破産法252条1項4号は、「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。」を免責不許可事由にしています。そのうえで252条2項は、「前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。」と定めています。
千葉地裁の「よくあるご質問」(R1.9改訂)は、「浪費やギャンブルのために借金したときも免責されますか?」に「免責が許可されない場合があります。」と答えたうえで、「事情によっては、裁判所の判断で免責を許可する場合もあります。大切なのは、申立書の作成や裁判官との面接の際、裁判所に対して本当の事実を明らかにすることです。」としています。高知地裁(平成25年10月改訂)も、免責不許可事由に当たる場合でも「破産するに至った経緯などの事情を考慮して,免責許可決定を受けられる場合もあります。」としています。
書き方について、松江地裁の記入要領は、ギャンブルなどの行為の有無を「金額や回数の多寡を問わず(評価を加えず)に記載してください。」とし、「他の原因(例えば浪費等)によって結果的に生活費が不足しているにすぎない場合には、安易に「生活費不足」を選択しないようにしてください。」としています。札幌地裁は、債権者一覧表の使い道の欄について、ギャンブルなどのための借入れなのに「安易に「生活費」と書くことはしないでください。裁判所に対し虚偽の説明をしたとされて、免責を受けることができない場合があります。」と注意しています。
| やること | やってはいけないこと |
|---|---|
| ギャンブル・浪費の有無を、金額や回数の多い少ないにかかわらず書く(松江) | 少額だから「無」にする。免責不許可事由がうかがわれるのに単に「無」と選ぶ(松江) |
| 借入れの使い道を正確に書く | ギャンブル・高額な飲食・ブランド品などの借入れを「生活費」と書く(札幌) |
| そこに至った経緯と、やむを得ない事情があれば書く(札幌) | 「生活費不足」などのキーワードだけで済ませる(松江) |
✅ このセクションのまとめ
ギャンブルや浪費は免責不許可事由ですが、裁量免責があります(252条2項)。金額や回数にかかわらず正直に書き、経緯を具体的に書くことが大切です。確認した範囲では、反省文の提出を求める公的資料は見当たりません。
ギャンブルの借金で免責が受けられるか不安という方は、陳述書を書く前に、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
家計簿や陳述書の嘘はバレる?うそを書いたらどうなる

正直、少しくらい家計簿を良く見せても、わからないんじゃないですか?

書類は、通帳や債権者一覧表などと照らし合わせて読まれます。食い違いがあれば説明を求められますし、申立書は債権者も見ることができます。そして、うそが分かったときの扱いは重く、免責を受けられなくなったり、刑罰を受けたりすることがあります。良く見せる得はありません。
照らし合わせについて、松江地裁の記入要領は、「家計収支表に高額の支出はないか、通帳に宝くじや競馬のための引き落としの記載がないか確認した上、申述内容に不合理な点が認められないかを検討するようにしてください。」としています。千葉地裁の「預貯金通帳に関する留意点」と同じPDFにある「『破産申立てに至った事情』の具体的記載方法」の文例の注には、「当初退職金は50万円と説明されていたものの、通帳と照合した結果、額が大幅に異なっていたことが明らかになりました。」という例が載っています。高知地裁は「この申立書は,各債権者も閲覧,謄写することができますので,ありのままを記入してください。」としています。
うそを書いた場合について、高知地裁は「あとでうそを書いたことが分かると免責が許可されなかったり,破産詐欺罪で処罰されたりする場合があります」(破産法265条の見出しは「詐欺破産罪」)、松江地裁は「これらの書類に虚偽の記載をして申立てをしたり、財産を隠そうとしたりすると、刑罰を受けることもあり、また、免責が受けられなくなることもあります。」としています。千葉地裁も、免責不許可事由の例に「破産・免責申立書等に虚偽の事実を記載した場合」を挙げています。
| 破産法の規定 | 内容 |
|---|---|
| 252条1項6号(免責不許可事由) | 業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと |
| 252条1項7号(同) | 虚偽の債権者名簿(債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む)を提出したこと |
| 252条1項8号(同) | 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと |
| 252条1項11号(同) | 40条1項1号(管財人などへの説明義務)、41条(重要財産の開示)などの義務に違反したこと |
| 268条1項(罰則) | 40条1項などに違反して説明を拒み、又はうその説明をした者は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金(併科あり) |
| 265条1項(詐欺破産罪) | 債権者を害する目的で財産を隠すなどした者は、破産手続開始の決定が確定したときは、10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金(併科あり) |
※家計表や陳述書のどの記載がどの号に当たるかは、事案ごとに裁判所が判断します。
出典:e-Gov法令検索 破産法(2026年10月時点)
書類に説明のつかない点が残ると、管財事件になることもあります。千葉地裁は、特に価値のある財産がない人でも、「使途不明の借入金や不自然な支出がある場合など,破産に至る経緯が明らかでないときには,破産管財人を選任して,財産の調査等を行わなければならないこともあります。」としています。東京地裁も、管財事件となる例に「債務者の免責調査を経ることが相当な場合」を挙げています。
✅ このセクションのまとめ
家計簿や陳述書は、通帳や債権者一覧表などと照らし合わされ、申立書は債権者も閲覧・謄写できます。うその記載は免責不許可事由になりえ、刑罰の対象になることもあります。説明のつかない支出は管財事件の理由にもなりえます。
書類に書きにくいことがあって迷っているという方は、書類を出す前に、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
書類づくりのデメリットと、今の状況ごとに最短でやること

正直、書類の量を考えると気が重いです。やっぱり大変なんですよね?

手間がかかるのは事実です。家計表は通帳や明細と合わせる必要がありますし、陳述書は時系列で整理しないといけません。でも、弁護士に依頼すれば、申立書などの作成は弁護士が進めます。あなたの役割は、家計の記録をつけて材料をそろえることと、事実を正直に話すことです。
先に、書類づくりで覚悟しておくことを挙げておきます。
| 覚悟しておくこと | それでも動いたほうがいい理由 |
|---|---|
| 家計表は通帳・明細・レシートと合わせる手間がある(札幌) | 対象は直前の1〜2か月分(札幌・松江・秋田)。今日から記録を始めれば、その期間の分はそろえやすい |
| 陳述書には借金の理由やギャンブルも書く(松江・札幌) | 裁量免責がある(252条2項)。「大切なのは…本当の事実を明らかにすること」(千葉) |
| 説明のつかない支出があると管財事件になり、費用が増えることがある(千葉) | 千葉地裁のQ&Aは、管財事件の費用について「弁護士が選任されている場合は減額されることがあります」としている |
| うその記載は免責不許可事由・刑罰の対象になりうる(252条1項、高知・松江。管財人などへのうその説明は268条1項) | 正直に書けば、そのリスクは自分で避けられる |
千葉地裁は、弁護士に依頼した場合について「申立人の代理人として,申立書等の作成,債権者との対応,裁判官との面接への立会いなどを行います。」と説明しています。法テラスも、債務整理の相談に行くときの持ち物として「1か月間の収入、支出の内訳を整理した家計簿(できれば最近2、3か月分)」などを挙げています。
| 今の状況 | 最短でやること |
|---|---|
| まだ相談していない | 今日からレシートを取っておき、通帳を記帳する。借入先の一覧と、わかる範囲の家計のメモを持って無料相談へ |
| 依頼済みで、家計簿の数字が合わない | 数字をつくらず、合わない理由(現金払い・家族への渡し・まとめ払いなど)を弁護士に伝える |
| 陳述書が書けない・思い出せない | 取引履歴と通帳を弁護士と一緒に見ながら、時系列を組み立てる。覚えていない項目は「覚えていません。」(札幌・職歴欄) |
| ギャンブル・浪費がある | 金額や回数にかかわらず正直に弁護士に話す。経緯とやむを得ない事情があれば一緒に整理する |
✅ このセクションのまとめ
書類づくりには手間がありますが、対象期間は短く、申立書の作成は依頼した弁護士が進めます。あなたの役割は、家計の記録をつけて通帳・明細・レシートをそろえることと、事実を正直に話すことです。
書類の負担や費用が気になって動けないという方は、少しでも早い段階で弁護士などの専門家に相談してください。
よくある質問
Q. 自己破産の家計簿は、いらない場合もありますか。
A. 確認した札幌・松江・新潟・秋田の資料では、どれも家計の収支を書く書類(家計表・家計収支表・家計の状況)が申立書類に含まれていて、いらないとする記載は見当たりません。名前や様式は裁判所によって違い、東京・大阪の書式は公開ページでは確認できませんでした。必要かどうかは、申し立てる裁判所の書式と依頼する弁護士の指示に従ってください。
Q. タバコ代は家計簿に書きますか。
A. 確認した範囲では、タバコ代の書き方を定めた公的資料は見当たりません。松江地裁の家計収支表の様式には「嗜好品代」の欄があります。札幌地裁は、通帳やレシート等の金額を確認して、おおよそではなく正確に書くよう求めています。実際に払っている支出は、様式の該当する欄に書きましょう。
Q. 家計簿の嘘はバレないと聞きました。本当ですか。
A. バレないとは言えません。裁判所の資料は、家計表を通帳の入金・残高や保険証券、携帯の利用明細などと照らし合わせることを前提にしています(札幌地裁)。松江地裁の記入要領も、家計収支表や通帳の記載から申述内容に不合理な点がないか検討するよう求めています。うその記載は免責不許可事由になりえ(破産法252条1項)、刑罰の対象になることもあります(高知地裁・松江地裁)。
Q. 陳述書は自分で書かないといけませんか。
A. 弁護士に依頼すれば、自分ひとりで書き上げる必要はありません。弁護士が申立人の代理人として申立書等の作成などを行います(千葉地裁)。中身はあなたの事実なので、職歴や借入れのいきさつは、あなたが弁護士に伝える必要があります。
Q. 陳述書に書く職歴は、何年前まで書きますか。
A. 裁判所によって違います。松江地裁の陳述書の様式は「職歴(現在から7年前まで)」です。札幌地裁は、借入れやクレジットカードの利用を始めたころからの職歴を、アルバイト・パートを含めてすべて書くよう求めています。
Q. 家計表の数字は、1円単位まで合わせないといけませんか。
A. 札幌地裁の指示では、合わせます。前月からの繰越金を加えた収入合計額と、翌月への繰越金を加えた支出合計額が一致するかを確認し、収支合計欄の金額が一致するかも確認するよう求めています。合わないときは、無理に数字をつくらず、原因を弁護士と一緒に確認してください。
まとめ
自己破産の家計簿と陳述書について、押さえておくことは次のとおりです。
🔎 30秒でわかる結論
- 家計簿(家計収支表)は申立て直前の短い期間の分。札幌地裁=直前1か月分、松江地裁の様式・秋田地裁の一覧=2か月分。同居家族を含めた世帯全体で書く
- 通帳・給与明細・レシート等の金額で正確に書き、繰越金を含めて収支を一致させる(札幌地裁)。20万円以上の繰越は内訳を説明
- すべてのレシートの提出を求める公的資料は確認した範囲で見当たらない。現金払いで通帳に出ない公共料金などは領収書の写し(千葉地裁)
- 陳述書は時系列で具体的に。職歴で覚えていない項目は「覚えていません。」(札幌地裁)、借入れの時期は取引履歴で確かめる。具体的事情は1〜2頁程度(松江地裁)
- ギャンブルでも裁量免責がある(252条2項)。うその記載は免責不許可事由になりえ(252条1項)、刑罰の対象にもなりうる
通帳(記帳したもの)、給与明細、手元にあるレシートや公共料金の領収書、借入先の一覧、借金を始めたころのことを書いたメモを持って相談すれば、家計表のどこが合わないのか、陳述書に何をどう書くのかを、弁護士と一緒に決められます。書類が書けそうにないことが理由で止まっているなら、その不安から話してください。
借金に関する相談は、無料で受け付けている窓口が多くあります。まずは話だけでも聞いてみるのがおすすめです。
📚 出典(公的機関・法令)を見る
- e-Gov 破産法(平成十六年法律第七十五号)40条1項・41条・252条1項4号・6号・7号・8号・11号・2項・265条1項・268条1項 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075
- 札幌地方裁判所「破産・免責申立書の書き方と留意事項」(R6.1版・債権者一覧表・陳述書・家計表・財産目録) https://www.courts.go.jp/sapporo/vc-files/sapporo/file/hasan_saisei/R6.1_moushitatesyonokakikata.pdf
- 松江地方裁判所「破産・免責手続のあらまし」「破産申立書(個人用)等の記入要領」 https://www.courts.go.jp/matsue/vc-files/matsue/2023/20240115_hasanzikensyosiki/1_hasantetudukinoaramashi_moushitateshokinyuuyouryou.pdf
- 松江地方裁判所「家計収支表」(様式・申立前2か月分) https://www.courts.go.jp/matsue/vc-files/matsue/2022/20220401hasanjikenshosiki/8kakeishuushihyou.xls
- 松江地方裁判所「陳述書」(様式) https://www.courts.go.jp/matsue/vc-files/matsue/2023/20240115_hasanzikensyosiki/5_chinjyutusho.doc
- 秋田地方裁判所「個人破産申立添付書類一覧表(本人申立て用)」(家計収支表(1)(2)(2か月分)) https://www.courts.go.jp/akita/vc-files/akita/file/02tenpushorui.pdf
- 新潟地方裁判所「自己破産申立について(説明と書き方)」(令和3年2月改訂・「家計の状況」の書き方) https://www.courts.go.jp/niigata/vc-files/niigata/file/30205001.pdf
- 千葉地方裁判所「破産・免責手続について-よくあるご質問・お問い合わせ-」(R1.9改訂・Q4・Q11・Q20・Q21) https://www.courts.go.jp/chiba/vc-files/chiba/2025/syoshiki/hasan-yokuarushitsumon.pdf
- 千葉地方裁判所「預貯金通帳に関する留意点」 https://www.courts.go.jp/chiba/vc-files/chiba/minjisyoshiki/hasan/09-08-ryuuiten.pdf
- 高知地方裁判所「破産申立てについて」(平成25年10月1日改訂) https://www.courts.go.jp/kouchi/vc-files/kouchi/file/1001hasan1-1.pdf
- 東京地方裁判所民事第20部「よくある質問」(管財事件となる例) https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minzi_section20/situmonn_tousannbu/index.html
- 法テラス よくある相談「自己破産の手続について教えてください。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-hasan-003.html
- 法テラス よくある相談「債務整理について相談に行く際は、どのような資料を持参するとよいですか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-hasan-005.html
- 法テラス よくある相談「自己破産で免責決定がされないのは、どういう場合ですか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-hasan-011.html
本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の判断は弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。(制度・様式は各資料に記載の時点のもので、2026年10月に公開資料を確認しました。申し立てる裁判所の書式と運用は、依頼する弁護士または各裁判所に確認してください)
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