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・「自己破産したら、口座の貯金は1円残らず取られる」
・「申し立てる前に、預金を全部引き出しておけば大丈夫」
こんな話を聞いて、自己破産に踏み切れずにいる人も多いのではないでしょうか?
しかし、99万円までの現金は、自己破産しても手元に残せます(破産法34条3項1号・法テラス)。さらに、法務省は「債務者が破産手続開始後に新たに取得した財産」も自由財産(手元に残せる財産)にあたると説明しています。手続きが始まった後に働いて得た給料は、ためていいお金です。
とはいえ、自己破産では預金は現金とは別に数えられ、引き出したことも通帳で裁判所に伝わるため、自己判断で動くと手続きの費用や免責に響きかねないのも事実です。
本記事では、自己破産で預金・貯金がいくらまで残せるか、よく聞く「20万円」の正体、引き出しはいつまで大丈夫か、手続き中・破産後に貯めたお金、妻名義の預金、個人再生・任意整理での扱いについて紹介します。
自己破産を考えている人はもちろんのこと、「少しでも貯金を残したい」と迷っている人も、口座からお金を動かす前にしっかりと確認しておきましょう。

口座に30万円くらいあります。自己破産したら、これは全部なくなりますか。

全部なくなるとは限りません。ただ、預金は「現金」とは別のものとして扱われ、裁判所ごとに目安が違います。まずは、現金と預金の違いから整理しましょう。

だったら、申し立てる前に全部おろして、現金にしておけばいいですよね?

それはおすすめできません。申し立てるときは、通帳を1〜2年分出すよう求める裁判所があり、おろしたことは記帳に残ります。高額の出金は、使い道の説明を求められます。さらに、手元の現金が33万円以上あると、管財事件(費用が高くなる手続き)になる目安にあたる裁判所もあります。動かす前に、弁護士と一緒に決めてください。
🔎 30秒でわかる結論
- ★99万円までの現金は、自己破産しても残せる(破産法34条3項1号。民事執行法施行令の66万円×3/2)
- ★預金は現金とは別に扱われる。よく聞く「20万円」は、水戸地裁・東京地裁が管財事件にするかどうかを分ける目安として示す額で、「20万円まで残せる」という基準ではない。高知地裁(2019年版)は現金と普通預貯金の合計額が50万円を超える場合などとしていて、裁判所ごとに違う
- ★申し立てる前に引き出しても、通帳で伝わる。札幌地裁は申立前1年以上、千葉地裁は過去2年分の通帳の提出を求め、高額の出金は使い道の説明を求めている。水戸地裁(平成31年4月1日実施の基準)は、申立直前に現金にしても「原則として現金として扱い」とする
- ★手続きが始まった後に新たに得た給料・貯金は、自由財産(法務省Q&A)。破産財団に入るのは、原則として「破産手続開始の時において有する」財産(破産法34条1項)
- ★個人再生では預金は全額が返す額の下限(清算価値)に入る(千葉地裁の書式)。任意整理は預金を手放す手続きではない
📖 この記事でわかること
- 自己破産で残せる「現金」と「預金」は違う
- よく聞く「預金20万円」の正体
- 預金の引き出しはいつまで大丈夫?
- 手続き中・自己破産後に貯めたお金はどうなる?
- 妻・家族名義の預金はどうなる?
- 個人再生・任意整理なら、預金はどうなる?
- 債務整理のデメリットと、それでも今動く理由
- 今の状況ごとに、最短でやること
自己破産で残せる「現金」と「預金」は違う

「99万円までは残せる」と聞いたことがあります。預金も99万円までなら大丈夫ですか。

99万円は「現金」の話です。預金は条文の上では別の財産なので、同じようには数えません。ここがいちばん誤解されやすいところです。
破産法34条1項は、「破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。」と定めています。破産財団とは、債権者への配当に充てるために、お金に換える対象になる財産のことです。
そのうえで34条3項1号は、民事執行法131条3号に定める額に「二分の三を乗じた額の金銭」は破産財団に属しないとしています。民事執行法施行令1条でこの額は66万円なので、66万円×3/2=99万円です。法テラスも、自己破産のデメリットの説明で「99万円以下の現金は手元に残せる。」と書いています。
ここで条文が書いているのは「金銭」、つまり現金です。預金は、銀行に対してお金を返してもらう権利なので、現金とは別の財産として数えられます。松江地裁の案内も、換価(お金に換えること)の対象となる財産として「預貯金」を挙げています。
| 現金 | 預金・貯金 | |
|---|---|---|
| 法律上の扱い | 99万円までは破産財団に属しない(破産法34条3項1号) | 開始時にある預金は、原則として破産財団に入る(34条1項) |
| 残せるかどうか | 99万円まで残せる(法テラス) | 裁判所の運用や、自由財産の拡張(34条4項)しだい |
| 申立書で求められること(札幌地裁) | 申立時の現金の額を正確に書く。「タンス預金」も書く | 残高0円の口座も含め、全口座を書く。通帳のコピーを出す |
ただし、預金がすべて取られると決まっているわけでもありません。破産法34条4項は、裁判所が「破産者の生活の状況」や「破産者が収入を得る見込み」などを考えて、破産財団に属しない財産の範囲を「拡張することができる」と定めています(自由財産の拡張)。法務省も、これにより「99万円を超える現金や,自動車,電話,ストーブ等の生活に必要な財産も,自由財産に含まれることがあります。」と説明しています。
✅ このセクションのまとめ
99万円まで残せるのは「現金」で、預金は別の財産として扱われます。預金がどこまで残るかは、裁判所の運用と自由財産の拡張しだいです。
万が一支払いが難しい場合は、少しでも早い段階で弁護士などの専門家に相談してください。
よく聞く「預金20万円」の正体

ネットで「預金は20万円まで」と見ました。20万円以下なら取られないということですか。

そう言い切れる公的な基準は見当たりません。裁判所の公開資料にある20万円は、「管財事件にするかどうか」を分ける目安なんです。
自己破産には、破産管財人(財産を調べてお金に換える人)が選ばれる管財事件と、選ばれずに終わる同時廃止があります。裁判所の公開資料で「20万円」が出てくるのは、この振り分けの目安としてです。
📄 水戸地裁「同廃・管財振り分けの運用について」(平成31年4月1日実施)
「1 原則として,次のような場合は管財事件とする。 ⑴ 33万円以上の現金がある場合 ⑵ 次のアからスまでの資産で20万円以上のものがある場合 現金以外の個別財産は,以下の財産の項目ごとに積算し,項目ごとの合計額が20万円以上か否かによって判断する。(中略)ア 預貯金」
東京地裁民事第20部の「よくある質問」も、管財事件として取り扱われる例として「債務者に、33万円以上の現金がある場合」「債務者に、20万円以上の換価対象資産がある場合(預貯金、保険の解約返戻金、未払報酬・賃金など)」を挙げています。あわせて、「管財事件となるか同時廃止事件となるかは、裁判所の専決事項です。」とも書いています。
つまり、預金が20万円以上あると、破産管財人が選ばれて財産を調べる手続きになりやすい、というのが資料の書き方です。「20万円以下なら必ず残る」「20万円を超えた分は必ず取られる」とは書かれていません。
| 裁判所 | 公開資料にある目安 | 注意 |
|---|---|---|
| 水戸地裁 | 33万円以上の現金/預貯金など項目ごとの合計20万円以上で原則管財 | 平成31年4月1日実施 |
| 東京地裁 民事第20部 | 33万円以上の現金/20万円以上の換価対象資産(預貯金など)で原則管財 | 振り分けは「裁判所の専決事項」 |
| 高知地裁 | 現金と普通預貯金の合計50万円超などで管財 | 2019年7月版の資料 |
※水戸地裁は、項目ごとに20万円未満でも「個別財産が積み重なって多額になった場合は,管財事件とする。」としています。いずれも管財事件にするかどうかの目安で、預金を残せる上限を定めたものではありません。お住まいの地域を受け持つ裁判所の運用は、弁護士に確認してください。
💡 ここ、勘違いされがち
管財事件になると、破産管財人の費用(予納金)がかかります。東京地裁の手続費用一覧では、個人の管財事件は「最低20万円 及び 個人1件につき20,397円」です。預金の額は、残せるかどうかだけでなく、手続きにかかるお金にも響きます。だからこそ、申し立てる前の段階で弁護士と見通しを立てておくことが大事です。
✅ このセクションのまとめ
「預金20万円」は、管財事件にするかどうかを分ける目安として裁判所が示している額です。「20万円まで残せる」という基準ではなく、裁判所ごとに中身も違います。
預金がいくら残るのか不安で自己破産に踏み切れないという方は、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
預金の引き出しはいつまで大丈夫?

生活費をおろすのもダメなんですか。家賃も食費も、口座から払っているんですが……。

生活費をおろして暮らすのは、ふだんどおりで大丈夫です。気をつけたいのは、まとまった額を引き出して手元に置いたり、誰かに渡したりすることです。使い道を説明できるかどうかがポイントになります。
「いつまでなら引き出していい」という日付を定めた法律はありません。その代わり、申し立てるときは過去の通帳をまとめて出すので、いつ・いくら引き出したかは記帳でわかります。
| 裁判所 | 提出を求める通帳の範囲(公開資料より) |
|---|---|
| 札幌地裁 | 申立前1年以上の記帳+支払不能を認識した時期の前後の記帳。申立前1週間以内に記帳。同居者名義の口座も全ページ |
| 千葉地裁 | 申立て前2週間以内に記帳した、過去2年分。給与振込用・引落用など使い道にかかわらずすべての通帳 |
| 新潟地裁 | あらゆる手段でも返せないと思うようになった時期から1年前までさかのぼった記帳を含む通帳 |
一括記帳(長い間記帳せず、出入金がまとめて記帳された部分)がある場合は、取引明細書を取り寄せて出すよう求める裁判所もあります(札幌地裁・千葉地裁)。ネットバンクの口座も対象です(札幌地裁)。
📄 札幌地裁「破産・免責申立書の書き方と留意事項」
「⑨ 通帳に高額の出入金がある場合には、その具体的事情(出入金の趣旨及び使途等)を確認して上申書(別にA4判用紙に書く。)により説明してください。」
申立直前に預金を現金にした場合について、水戸地裁は「申立直前に資産を現金化した場合においても,原則として現金として扱い,現金化する前の性質を帯びた財産とは扱わない。」と定めています。ただし、手元の現金が33万円以上あると、水戸地裁・東京地裁の目安では原則として管財事件になり、破産管財人の費用(東京地裁では個人の管財事件で最低20万円)がかかります。管財事件になっても99万円までの現金が自由財産であることは変わりませんが、手続きの費用が増え、引き出した経緯も管財人に調べられます。
一方、引き出したお金を隠したり、家族や知人に渡したりすると、話が変わります。破産法252条1項1号は、「債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと」を、免責を許可しない事由に挙げています。さらに265条は、債権者を害する目的で財産を隠すなどした場合の詐欺破産罪(10年以下の拘禁刑など)を定めています。
| 行動 | 考え方 |
|---|---|
| 家賃・食費などの生活費を口座から払う | ふだんどおりでよい。高額の出金は使い道を説明できるようにしておく |
| まとまった額を引き出して手元に置く | 使い道の説明を求められる(札幌地裁・千葉地裁)。現金が33万円以上だと原則として管財事件になる目安(水戸地裁・東京地裁) |
| 引き出したお金を家族に渡す・隠す | 免責を許可しない事由(252条1項1号)や詐欺破産罪(265条)の問題になりうる |
| 返せなくなった後に、特定の借入先にだけ返す(偏頗弁済) | 義務のない返済や、時期・方法が義務に属しない返済は、免責を許可しない事由(252条1項3号)になりうる |
| 弁護士費用・裁判所の費用に充てる | 依頼する弁護士と相談して決める |
✅ このセクションのまとめ
引き出しの期限を決めた法律はありませんが、申し立てるときは1〜2年分の通帳を出すため、引き出しは記帳で伝わります。現金が増えると管財事件になりやすく費用も増えるので、まとまった額を動かす前に弁護士に相談してください。
そのため、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談するようにしてください。
手続き中・自己破産後に貯めたお金はどうなる?

手続きが始まってからの給料も、貯めたら取られてしまうんですか。

手続きが始まった後に働いて得た給料は、取られない財産です。破産財団に入るのは、原則として手続きが始まった時点で持っている財産だからです。ここでいう「始まった」は、申し立てた日ではなく、裁判所が破産手続開始の決定をした時点です。
破産法34条1項が破産財団とするのは、「破産手続開始の時において有する」財産です(ほかに、開始前に生じた原因に基づく将来の請求権も破産財団に属します=同条2項)。法務省のQ&Aも、自由財産の例として「(3)債務者が破産手続開始後に新たに取得した財産」を挙げています。
| 時期 | 預金・貯金の扱い |
|---|---|
| 申し立てる前〜破産手続開始の決定まで | 開始の時に口座にある預金は、原則として破産財団に入る(34条1項)。この時期にためた分も同じ |
| 破産手続開始の決定の後 | 新たに得た給料などは自由財産(法務省Q&A)。ためてかまわない |
| 免責が確定した後 | 手続きとは関係なく、自由に貯金できる |
※開始決定の前に受け取って口座に残っている給料は、「開始の時において有する」財産にあたりえます。また、開始決定の後に支払われる給料でも、開始前に働いた分は、開始前に生じた原因に基づく将来の請求権(破産法34条2項)として一部が財産に数えられることがあります。給料日と開始決定の日の関係は、弁護士に確認してください。
ただし、申し立てる時期によっては、すでに口座にある預金や、開始決定の前に入った給料が数えられることがあります。申し立てる日、給料日、開始決定の見込みを並べて、弁護士と一緒に段取りを組むのがいちばん確実です。
💡 ここ、勘違いされがち
借入先の銀行に口座がある場合は、別の注意がいります。破産法67条1項は、破産債権者(銀行など)が「破産手続によらないで、相殺をすることができる。」と定めています。借入先の銀行の口座に残っている預金は、借金と相殺されることがあります。給料の振込先をどうするかも、申し立てる前に弁護士に相談してください。
✅ このセクションのまとめ
破産財団に入るのは、原則として破産手続開始の決定の時点で持っている財産です。開始決定の後に得た給料などは自由財産で、ためてかまいません(法務省Q&A)。
返済が難しく滞納が長引いてしまう場合は、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
妻・家族名義の預金はどうなる?

妻名義の口座に、妻がパートでためた貯金があります。これも取られますか。

原則として取られません。妻が自分の収入でためた預金は妻の財産だからです。ただ、申し立てるときに、同居している家族の通帳も出すよう求める裁判所があります。「名義を妻にしておけば安全」ではない点に注意してください。
民法762条1項は、「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。」と定めています。妻がパートなどで得てためた預金は、妻の財産です。
一方で、札幌地裁は次のように案内しています。
📄 札幌地裁「破産・免責申立書の書き方と留意事項」
「② あなたが親族等の他人名義で貯蓄している預貯金(例えば、名義人である親族等の資産・収入のみではなく、あなたの資産・収入をも原資としている預貯金)がある場合には、あなた名義の預貯金と同様に書いてください。」
「⑥ あなた及び同居者名義のすべての預貯金口座(ネットバンクの口座を含む。)の通帳の記帳がされている全ページのコピーを提出してください。」
つまり、自分の給料を妻の口座に移してためていた場合は、自分の預金と同じように書くことになります。申し立てる前に自分の預金を家族の口座へ移すのは、財産を隠す行為(252条1項1号)と見られるおそれがあります。
✅ このセクションのまとめ
妻が自分の収入でためた預金は妻の財産です(民法762条1項)。ただし、自分のお金が元になっている家族名義の預金は自分の預金と同じように書き、同居家族の通帳の提出を求める裁判所もあります。
万が一支払いが難しい場合は、少しでも早い段階で弁護士などの専門家に相談してください。
個人再生・任意整理なら、預金はどうなる?

預金を手放さずに済む方法はありますか。

個人再生や任意整理は、預金を処分する手続きではありません。ただ、個人再生では預金の額が返す額の下限に入りますし、借入先の銀行に預金があると、銀行が預金と借金を相殺することがあります。
個人再生は、財産を処分せずに、借金を減らした額を原則3年で返していく手続きです。裁判所は「その返済総額が、債務者が自分の財産を処分して返済に当てる場合の額(清算価値)を上回らなければなりません」と説明しています。
千葉地裁の個人再生の書式は、現金について「原則として99万円までの現金を清算価値から控除」する扱いとする一方、預貯金は「清算価値欄にはその全額が計上されます。」としています。預金は手元に残せますが、その全額が、返す額の下限を決める計算に入るということです。
任意整理について、法テラスは「裁判所などの公的機関を利用せず、当事者が私的に話合いをして、支払額や支払方法について合意をする手続です。」と説明しています。財産を処分する手続きではないので、手続きのために預金を手放すことはありません(ただし、借入先の銀行に預金があると、銀行が取引の約定にもとづいて預金と借金を相殺することがある点に注意)。ただし、法テラスはデメリットとして「債権者の了解と支払原資が必要になる。」とも書いています。
| 自己破産 | 個人再生 | 任意整理 | |
|---|---|---|---|
| 現金 | 99万円まで残せる | 手元に残る。千葉地裁では99万円までを清算価値から控除 | 手元に残る |
| 預金・貯金 | 開始時の預金は原則として破産財団に入る。運用と拡張しだい | 手元に残る。千葉地裁では全額が清算価値に入る | 手元に残る |
| 借金 | 免責されれば支払義務がなくなる | 減額した額を原則3年で返す | 話し合いで返し方を決める |
| 向いている人 | 返せる見込みがない | 収入があり、財産を残したい | 利息の見直しなどで返していける |
※個人再生の最低限返す額は、借金の額と清算価値などで決まります(小規模個人再生は民事再生法174条2項4号・231条2項3号・4号)。
✅ このセクションのまとめ
個人再生なら預金を手放さずに済みますが、全額が返す額の下限(清算価値)に入ります。任意整理は預金を手放す手続きではありませんが、相手の了解と返していける収入が前提です。
預金を残したまま借金を整理したいという方は、どの手続きが合うかを、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
債務整理のデメリットと、それでも今動く理由

預金のことはわかりました。でも、債務整理そのもののデメリットも気になります。

先にお伝えしますね。デメリットはあります。そのうえで、返せない借金のために貯金を取り崩し続けると、手続きを始める前に手元のお金がなくなってしまいます。
| デメリット | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 自己破産では財産を失う | 「生活に必要な家財道具等の一定の財産以外は、失うことになる。(ただし、99万円以下の現金は手元に残せる。)」 | 法テラス |
| 個人再生では預金の額が返す額に響く | 返済総額が清算価値を上回らなければならない | 裁判所 |
| 任意整理には相手の了解と原資が要る | 「債権者の了解と支払原資が必要になる。」 | 法テラス |
| 借入れ・カードが作りにくくなる | 「信用情報を取り扱う機関に登録されることにより、数年間は、借入れやクレジットカードの作成が難しくなる。」(任意整理) | 法テラス |
一方で、法テラスは自己破産のメリット・デメリットの説明で「自己破産をしたからといって、選挙権がなくなる、戸籍や住民票に記載される、銀行の普通預金口座も使用できなくなる、ということはありません。」とも書いています。借入先の銀行の口座を除けば、自己破産をしても、預金口座そのものは使い続けられます。
毎月の返済のために貯金を取り崩していると、手続きを始めるころには、残せたはずのお金まで消えています。延滞が続いて裁判を起こされれば、預金や給料が差し押さえられることもあります。
✅ このセクションのまとめ
債務整理にはデメリットがありますが、貯金を取り崩しながら返済を続けるほうが、手元に残るお金は減っていきます。残せるうちに相談するのが近道です。
貯金を取り崩しながら返済を続けているという方は、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
今の状況ごとに、最短でやること
| 今の状況 | 最短でやること |
|---|---|
| 口座に数十万円あり、どれだけ残るか知りたい | 全口座の残高がわかる通帳を記帳して相談。住んでいる地域の裁判所の運用を聞く |
| 申し立てる前に預金を引き出そうとしている | 引き出す前に相談。現金にしても数えられ、使い道の説明を求められる |
| 給料日と申し立ての時期が近い | 給料日・申立日・開始決定の見込みを並べて段取りを決める |
| 借入先の銀行に給料が振り込まれている | 相殺されないよう、振込口座の変更を相談する |
| 妻・家族名義の口座がある | お金の出どころ(誰の収入か)を整理して相談する |
| すでに延滞していて、督促が来ている | 貯金を取り崩す前に、今すぐ相談して借金そのものの整理を始める |
そのため、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談するようにしてください。
よくある質問
Q. 自己破産すると、預金はいくらまで残せますか。
A. 全国共通の金額は決まっていません。99万円まで残せるのは「現金」で(破産法34条3項1号)、預金は別の財産として扱われます。水戸地裁・東京地裁は、預金など20万円以上の財産があると原則として管財事件にすると示していますが、これは振り分けの目安です。どこまで残るかは、裁判所の運用と自由財産の拡張(34条4項)によります。
Q. 申し立てる前に預金を全部引き出せば、残せますか。
A. 残せるとは言えません。通帳は1〜2年分の提出を求められ、高額の出金は使い道の説明を求められます(札幌地裁・千葉地裁)。水戸地裁は、申立直前に現金にした場合も原則として現金として扱うとしていて、現金が33万円以上あると原則として管財事件になる目安があります(水戸地裁・東京地裁)。引き出したお金を隠したり家族に渡したりすると、免責を許可しない事由(破産法252条1項1号)になりえます。
Q. 自己破産の手続き中に貯金をしてもいいですか。
A. 破産手続開始の決定の後に得た給料などは、自由財産にあたるので、ためてかまいません(法務省Q&A)。開始決定の前にためた分は、開始の時に持っている財産として数えられます(破産法34条1項)。
Q. 自己破産すると銀行口座は使えなくなりますか。
A. 法テラスは「銀行の普通預金口座も使用できなくなる、ということはありません。」と説明しています。ただし、借入先の銀行の口座は、預金が借金と相殺されることがあります(破産法67条1項)。
Q. 妻名義の貯金も申告しないといけませんか。
A. 裁判所によっては、出すよう求められます。札幌地裁は、同居者名義の口座の通帳も出すこと、自分の収入が元になっている家族名義の預金は自分の預金と同じように書くことを求めています。一方、妻が自分の収入でためた預金は妻の財産です(民法762条1項)。扱いは弁護士に確認してください。
Q. 預金があることを隠して自己破産するとどうなりますか。
A. 財産を隠すことや、裁判所の調査で虚偽の説明をすることは、免責を許可しない事由です(破産法252条1項1号・8号)。札幌地裁は、残高0円の口座も含めてすべての口座を書くよう求めています。必ず申告してください。
まとめ
自己破産と預金・貯金について押さえておくことは、次のとおりです。
🔎 30秒でわかる結論
- 99万円までの現金は残せる(破産法34条3項1号・法テラス)。預金は現金とは別の財産として扱われる
- 「預金20万円」は、管財事件にするかどうかを分ける目安(水戸地裁・東京地裁)。「20万円まで残せる」という基準ではなく、裁判所ごとに違う
- 申し立てる前に引き出しても、通帳で伝わる。高額の出金は使い道の説明を求められ、隠す・家族に渡すのはNG(252条1項1号)
- 破産手続開始の決定の後に得た給料・貯金は自由財産(法務省Q&A)
- 個人再生なら預金は手放さずに済むが、全額が清算価値に入る(千葉地裁)。任意整理は預金を手放す手続きではない
全口座の通帳と借入先の一覧を持って相談すれば、自分の地域の裁判所でいくら残せそうか、いつ申し立てるのがいいかを弁護士と一緒に決められます。口座からお金を動かす前に、まず相談してください。
借金に関する相談は、無料で受け付けている窓口が多くあります。まずは話だけでも聞いてみるのがおすすめです。
📚 出典(公的機関・法令)を見る
- e-Gov 破産法(平成十六年法律第七十五号)34条1項・2項・3項1号・4項(破産財団の範囲)・67条1項(相殺権)・252条1項1号・3号・8号(免責許可の決定の要件等)・265条(詐欺破産罪) https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075
- e-Gov 民法(明治二十九年法律第八十九号)762条1項(夫婦間における財産の帰属) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- e-Gov 民事執行法施行令 1条(差押えが禁止される金銭の額=66万円。民事執行法131条3号) https://laws.e-gov.go.jp/law/355CO0000000230
- e-Gov 民事再生法 174条2項4号・231条2項3号・4号 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225
- 法テラス よくある相談「自己破産のメリット・デメリットは何ですか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-hasan-002.html
- 法テラス よくある相談「任意整理とは何ですか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-niniseiri-001.html
- 法テラス よくある相談「任意整理のメリット・デメリットは何ですか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-niniseiri-002.html
- 法務省「借金等の返済が困難となった被災者の方へ」Q5「破産手続をとると,手元の財産は無くなってしまうのですか。」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00098.html
- 水戸地方裁判所「同廃・管財振り分けの運用について」(平成31年4月1日実施) https://www.courts.go.jp/mito/vc-files/mito/file/31.4.1hasankijyun.pdf
- 水戸地方裁判所「同廃・管財振り分け基準の変更等について」 https://www.courts.go.jp/mito/about/osirase/douhaikanzai/index.html
- 東京地方裁判所 民事第20部「よくある質問」 https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minzi_section20/situmonn_tousannbu/index.html
- 東京地方裁判所 民事第20部「破産事件の手続費用一覧」(令和8年1月1日現在) https://www.courts.go.jp/tokyo/vc-files/tokyo/min20_hasanq4_hasantetudukihiyouitiran_R080101.pdf
- 高知地方裁判所「破産申立てについて」(2019年7月版) https://www.courts.go.jp/kouchi/vc-files/kouchi/file/hasan1-1_20190701.pdf
- 松江地方裁判所「破産・免責手続のあらまし」「破産申立書(個人用)等の記入要領」 https://www.courts.go.jp/matsue/vc-files/matsue/2023/20240115_hasanzikensyosiki/1_hasantetudukinoaramashi_moushitateshokinyuuyouryou.pdf
- 札幌地方裁判所「破産・免責申立書の書き方と留意事項」(現金・預貯金・家計表) https://www.courts.go.jp/sapporo/vc-files/sapporo/file/hasan_saisei/R6.1_moushitatesyonokakikata.pdf
- 千葉地方裁判所「預貯金通帳に関する留意点」 https://www.courts.go.jp/chiba/vc-files/chiba/minjisyoshiki/hasan/09-08-ryuuiten.pdf
- 千葉地方裁判所 小規模個人再生手続開始申立書(財産目録・清算価値) https://www.courts.go.jp/chiba/vc-files/chiba/2024/minji/saisei/02_2_20240426.pdf
- 新潟地方裁判所「自己破産申立について(説明と書き方)」(令和3年2月改訂) https://www.courts.go.jp/niigata/vc-files/niigata/file/30205001.pdf
- 裁判所「個人再生」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_18/index.html
本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の判断は弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。(制度・数値は2026年10月時点)
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