自己破産したら退職金はどうなる?8分の1・4分の1の考え方、退職金見込額証明書と会社にバレるか、払えないときの方法

債務整理の基礎知識

※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています

・「自己破産したら、何十年も勤めて積み上げた退職金まで取られるらしい」

・「退職金の証明書を会社に頼んだら、破産することがバレてしまう」

こんな不安を抱えている人も多いのではないでしょうか?

しかし、退職金はその4分の3が、法律で差し押さえが禁止されています(民事執行法152条2項)。差し押さえが禁止された財産は、自己破産でお金に換える対象(破産財団)に入りません(破産法34条3項2号)。まだ会社を辞めていない人(6か月以内に受け取る予定の人を除く)について、千葉地方裁判所の申立書の書式は、退職金の見込額の「8分の1」を財産として書くよう求めています。退職金が丸ごと持っていかれるわけではありません。

とはいえ、退職金の見込額が大きい人は、その一部に見合うお金を求められたり、手続きが重くなったりすることがあるのも事実です。

本記事では、自己破産で退職金がどう扱われるのか、8分の1・4分の1の考え方、退職金見込額の証明書と会社に知られるか、8分の1に当たるお金を用意できないときの方法について紹介します。

自己破産をすすめられた人はもちろんのこと、「退職金があるから破産はできない」と思い込んでいる人も、会社を辞めたり、退職金を前借りしたりする前にしっかりと確認しておきましょう。

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相談者

勤続20年で、今辞めたら退職金が1000万円くらい出るはずなんです。自己破産したら、全部取られるんですか。

あかり

全部ではありません。退職金の4分の3は、法律で差し押さえが禁止されています。まだ辞めていないなら、財産として見られるのは見込額の一部です。千葉地方裁判所の書式では、6か月以内に受け取る予定がなければ「8分の1」です。

相談者

8分の1でも、125万円ですよね。そんなお金、手元にありません。

あかり

退職金はまだ受け取っていないお金なので、そこが悩みどころですよね。どう扱うかは、公的資料に全国共通の定めがなく、申立先の裁判所や破産管財人の運用で分かれます。自己破産以外に、退職金を手放す手続きのない債務整理もあります。

相談者

証明書を会社に頼んだら、破産するのがバレませんか。

あかり

会社に頼まなくて済む場合があります。会社から証明書を取るのが難しいときは就業規則(退職金支給規程)など、弁護士が作る計算書でもよいとする裁判所があります。頼む前に弁護士に確認しましょう。順番に説明しますね。

🔎 30秒でわかる結論

  • ★退職金の4分の3は差押禁止(民事執行法152条2項)。差押禁止の財産は破産財団に入らない(破産法34条3項2号)=退職金が丸ごと取られるわけではない
  • ★千葉地裁の書式は、まだ辞めておらず6か月以内に受け取る予定もない人には、退職金見込額の「8分の1」を財産として書かせる。退職したのにまだ受け取っていない人と、6か月以内に受け取る予定の人は「4分の1」。全国一律の基準として法律に書かれているわけではない
  • ★勤め先から証明書を取るのが困難なときは、就業規則(退職金支給規程)などで代わりにできる(札幌地裁)。勤続5年以内やパート・アルバイトなら、証明書を出さなくてよいとする裁判所もある
  • ★8分の1に当たるお金を用意できないときの扱いは、公的資料に全国一律の方法が書かれていない。申立先の運用によるので、申し立てる前に弁護士と進め方を決めておく
  • ★破産のために会社を辞めて退職金を受け取るのは逆効果になりやすい。受け取った退職金は現金になり、受け取った事実や使い道を申立ての書類で聞かれる

📖 この記事でわかること

  • 自己破産で退職金が財産として見られる理由と「4分の3」
  • 退職金の8分の1・4分の1とは?
  • 退職金見込額の証明書と、会社に知られるか
  • 8分の1に当たるお金を用意できないときは?
  • 自己破産の前にやってはいけないこと(退職・前借り・隠す)
  • 個人再生・任意整理なら退職金はどうなる?
  • 自己破産のデメリットと、それでも今動く理由
  • 今の状況ごとに、最短でやること

自己破産で退職金が財産として見られる理由と「4分の3」

相談者

まだもらってもいない退職金が、どうして財産になるんですか。

あかり

退職したら受け取れる権利(退職金請求権)が、あなたの財産として扱われるからです。ただし、法律でその4分の3は差し押さえが禁止されていて、その部分は自己破産でも手元に残ります。

破産法34条1項は「破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。」と定めています。まだ支払われていない退職金も、勤め先に対する権利として、この「財産」に含まれます。実際に、千葉地方裁判所の申立書の書式には、財産の項目として「退職金請求権・退職慰労金」の欄があります。

一方で、民事執行法152条2項は「退職手当及びその性質を有する給与に係る債権については、その給付の四分の三に相当する部分は、差し押さえてはならない。」と定めています。そして破産法34条3項2号は、差し押さえることができない財産を、破産財団に属しないものとしています。つまり、まだ受け取っていない退職金のうち、自己破産で財産として見られうるのは多くても4分の1までということになります(受け取った後は、現金・預金として別に扱われます)。

退職金の部分法律の扱い自己破産での扱い
4分の3差押えが禁止されている(民事執行法152条2項)破産財団に入らない(破産法34条3項2号)=手元に残る
残りの4分の1差し押さえることができる財産として見られうる。まだ辞めておらず6か月以内に受け取る予定もない人は、千葉地裁の書式では見込額の8分の1(4分の1の半分にあたる額)を書く

出典:e-Gov 民事執行法152条2項・破産法34条3項2号(2026年10月時点)

なお、確定拠出年金や中小企業退職金共済のように、法律で受け取る権利の差し押さえ自体が禁止されている制度もあります(国税の滞納処分による差押えは、例外として認められています)。勤め先の退職金がどの制度で積み立てられているかで扱いが変わるので、就業規則や加入している制度の資料を確かめておきましょう。

✅ このセクションのまとめ

退職金の4分の3は差押禁止で、自己破産でも手元に残ります。まだ受け取っていない退職金が財産として見られうるのは、多くても4分の1までです。

自分の退職金がいくら財産として見られるか知りたいという方は、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。

退職金の8分の1・4分の1とは?

相談者

「8分の1」と「4分の1」は、どう違うんですか。

あかり

まだ辞めておらず6か月以内に受け取る予定もない人は8分の1、辞めたのにまだ受け取っていない人と、6か月以内に受け取る予定の人は4分の1、というのが千葉地方裁判所の書式の書き分けです。

千葉地方裁判所の破産申立書(代理人申立用)の財産目録は、退職金について次のように書くよう求めています。

📄 千葉地方裁判所の破産申立書(財産目録「退職金請求権・退職慰労金」の注意書き)

「退職金見込額の8分の1(退職後に退職金を未だ受領していない場合及び6か月以内に退職金受領予定の場合は4分の1)相当額を記入してください。」「雇用契約に基づく退職金請求権だけでなく、役員退職金も含みます。」

ここでいう「見込額」は、書式の欄の言葉でいえば「申立現在において自己都合により退職した場合の総支給額(見込額)」です。定年まで勤めた場合の額ではなく、今、自分の都合で辞めたらいくら出るかが基準になります。

今の状況千葉地裁の書式で書く額例:今辞めたら800万円出る場合
会社に勤めている(6か月以内に受け取る予定はない)見込額の8分の1100万円
退職したが、退職金をまだ受け取っていない見込額の4分の1200万円
6か月以内に退職金を受け取る予定見込額の4分の1200万円
すでに受け取った退職金ではなく、受け取った現金・預金として見られる(使い道も書く)残っている額による

※例の金額は計算の仕組みを示すためのもので、実際の扱いは裁判所と事案によります。

出典:千葉地方裁判所 破産手続開始・免責許可申立書(代理人申立用・Word)財産目録(2026年10月時点)

💡 「8分の1」は全国共通の決まりではない

「8分の1」「4分の1」は、千葉地裁が公表している書式の書き分けです。法律の条文に「8分の1」と書かれているわけではなく、扱いは裁判所によって違うことがあります。自分の申立先でどうなるかは、依頼する弁護士に確かめてください。

財産として書く額が大きいと、手続きの種類にも影響します。東京地方裁判所の倒産部は、原則として破産管財人を選ぶ「管財事件」として取り扱う場合の例の一つに「債務者に、20万円以上の換価対象資産がある場合(預貯金、保険の解約返戻金、未払報酬・賃金など)」を挙げています。退職金そのものはこの例示に入っていませんが、財産として書く退職金の額が20万円以上になる人は、東京地裁ではこの例に当たる可能性があります。ほかの裁判所の基準は、申立先で確かめてください。

✅ このセクションのまとめ

千葉地裁の書式では、まだ辞めておらず6か月以内に受け取る予定もない人は「今、自己都合で辞めたら出る額」の8分の1、辞めて未受領の人と6か月以内に受け取る予定の人は4分の1を財産として書きます。

どちらの割合で書くことになるかは、少しでも早めに弁護士などの専門家に確認してください。

退職金見込額の証明書と、会社に知られるか

相談者

退職金の証明書は、会社に頼まないといけないんですか。理由を聞かれたら困ります。

あかり

必ず会社に頼まないといけないわけではありません。会社から取るのが難しいときの代わりの方法を、裁判所が案内しています。それに、勤続年数やお仕事の形によっては、そもそも証明書がいらないこともありますよ。

札幌地方裁判所の「申立書の書き方」は、退職金について次の順番を示しています。

順番札幌地裁の案内(要旨と原文)
1勤務先から、仮に申立ての時点で自己都合で退職したとした場合の見込額の証明書か計算書を取る(「0円の場合を含む。」)
2「勤務先からの証明書等の取得が困難な場合は、就業規則(退職金支給規程)を確認して、退職金の支給の有無及び額を記載し、資料として就業規則(退職金支給規程)を提出してください。」
3「これも困難な場合には、経理担当者や上司、同僚から支給実績等の事情を聴取して計算した報告書を提出してください。」

出典:札幌地方裁判所「申立書の書き方」(6) 退職金(2026年10月時点)

つまり、勤め先から証明書を取るのが困難な場合は、就業規則(退職金支給規程)で代わりにできると札幌地裁は案内しています(自分の事情が「困難」に当たるかは、弁護士に確認してください)。また、鹿児島地方裁判所の申立書の記入上の注意は、予定退職金証明書について「就職して5年以内の場合,パート,アルバイト等の場合には,提出不要です。」としています。一方、高知地方裁判所の申立書記載例(令和元年7月版)は「現在の勤務先で5年以上働いている場合は,現時点で退職した場合にいくらの退職金があるのか,支給がない場合でも退職金が無いという証明書を提出してください」としています。退職金が出ない会社でも、「出ない」ことを示す資料を求める裁判所がある点に注意してください。

千葉地方裁判所の破産申立書も、退職金の計算書を「使用者又は申立代理人作成の退職金計算書」としていて、会社だけでなく依頼した弁護士が作る計算書でもよい書き方です。会社に証明書を頼む前に、就業規則の写しや弁護士の計算書で足りるかを弁護士に確かめておくと、進め方を選べます。

ただし、勤め先から借入れ(社内貸付)がある場合は注意が必要です。法テラスは「職場や近所の人が債権者であれば、債権者として、裁判所から通知を受けることになることになりますので、知られてしまう可能性はあります。」と説明しています(原文ママ)。

💡 自己破産しただけで解雇が認められるとは限らない

労働契約法16条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定めています。自己破産しただけで解雇が有効になるとは限らず、有効かどうかは個別の事情で判断されます。ただし、警備員など一部の仕事には資格の制限があります。

✅ このセクションのまとめ

証明書は会社から取るほか、千葉地裁のように弁護士が作る計算書でよい書式もあります。取るのが困難な場合、札幌地裁は就業規則(退職金支給規程)や聞き取りの報告書で代わりにできると案内しています。勤続5年以内やパートなら不要とする裁判所もあります。

退職金の証明書を会社に頼みにくいという方は、どの資料で足りるかを、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。

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8分の1に当たるお金を用意できないときは?

相談者

8分の1といっても、まだもらっていないお金です。今、手元にないときはどうなるんですか。

あかり

それだけで破産できなくなるわけではありません。ただ、公的な資料に、全国共通の払い方は書かれていません。だからこそ、申し立てる前に弁護士と進め方を相談しておくのが大事です。

退職金は、会社を辞めるまで受け取れません。8分の1などに当たる額をどう用意し、どう扱うかは、公的資料に全国共通の定めがなく、申立先の裁判所や破産管財人の運用で分かれます。公的資料で確認できる選択肢は、次のとおりです。

選択肢1=自由財産の拡張を申し立てる(破産法34条4項)

破産法34条4項は、裁判所が「破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた前項各号に掲げる財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、破産財団に属しない財産の範囲を拡張することができる。」と定めています。手元に残す財産の範囲を広げてもらう制度です。申立てができるのは、破産手続開始の決定があった時から、その決定が確定した日以後1か月を経過する日までです(同項)。認められるかは裁判所の判断で、運用の基準は裁判所ごとに違います。

選択肢2=自己破産以外の手続きを選ぶ

退職金の見込額が大きく、8分の1でも用意が難しい人は、個人再生や任意整理のほうが合っていることがあります。任意整理は裁判所を使わない話し合いなので、退職金を財産として書く手続きがありません。個人再生では退職金を手放す手続きはありませんが、見込額の一部が「最低でも返す額」の計算に入ります(後の章で説明します)。

どの選択肢が使えるかは、退職金の見込額、ほかの財産、借金の総額、収入で変わります。「退職金があるから無理」と自分で決めずに、数字を持って相談するのが一番の近道です。

退職金の8分の1を用意できるか不安だという方は、退職金の見込額と借金の総額を持って、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。

自己破産の前にやってはいけないこと(退職・前借り・隠す)

相談者

いっそ会社を辞めて退職金を受け取って、それで借金を返したほうが早くないですか。

あかり

自己判断で辞めるのはおすすめしません。受け取った退職金は現金になって、差押禁止の守りがなくなることがあります。それに、一部の借入先だけに返すと、あとで問題になります。

千葉地方裁判所の破産申立書は、過去2年間に受け取った財産として「退職金の受領、敷金の受領、離婚に伴う給付、保険の解約、定期預金の解約、過払金の回収等によって取得した現金について、受領時期、受領額、使途を記入してください。」としています。札幌地方裁判所の書き方も、退職金について「過去2年以内に受給した分も含みます。」としています。辞めて受け取っても、受け取った事実と使い道は申立ての書類で聞かれます。

やってはいけないこと理由
破産のために会社を辞めて、退職金を受け取る受け取った退職金は現金・預金として見られる。過去2年以内の受領を書かせる裁判所がある(札幌地裁。千葉地裁は使い道も記入)。仕事と収入も失う
受け取った退職金で、特定の借入先や家族だけに返す支払不能になった後などに、そのことを知っている特定の債権者だけに返すと、破産管財人に否認されて取り戻されるおそれがある(破産法162条1項)
退職金の制度があるのに「ない」と書く財産の隠匿や、うその説明と見られれば免責不許可事由になりうる(破産法252条1項1号・8号)
退職金を当てにして新しく借りる・前借りする借金が増えるうえ、借りたときの事情によっては免責の判断に影響しうる(破産法252条1項5号など)

出典:e-Gov 破産法162条1項・252条1項(2026年10月時点)

破産法252条1項1号は、免責を認めない事由として「債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。」を挙げています。免責不許可事由があっても、裁判所が事情を考えて免責を認めること(破産法252条2項の裁量免責)はありますが、それを当てにして動くのは危険です。辞める・受け取る・返すの前に、まず相談してください。

返済が難しく滞納が長引いてしまう場合は、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。

個人再生・任意整理なら退職金はどうなる?

相談者

退職金を守りたいなら、ほかの手続きのほうがいいんですか。

あかり

退職金を手放す手続きがないのは、任意整理と個人再生です。ただ、個人再生は認可の条件を満たす必要があり、見込額の一部が返す額の計算に入ります。任意整理は借入先との話し合いしだいです。

手続き退職金の扱い注意点
自己破産見込額の一部(千葉地裁の書式では8分の1・4分の1)を財産として書く額によっては、お金に換える対象として扱われることがある
個人再生手放す手続きはない見込額の一部が「清算価値」として、最低でも返す額の計算に入ることがある
任意整理裁判所に財産を書いて出す手続きはない(裁判所を使わない話し合い)返す額は借入先との合意で決まる。支払っていく手続きなので原資の確保が必要(法テラス)

個人再生で退職金がどう計算に入るかは、個人再生で退職金はどうなる?の記事で、裁判所の書式をもとにくわしく説明しています。「退職金を守りたい」という希望は、手続きを選ぶ大事な材料なので、最初の相談で必ず伝えてください。

退職金をなるべく残せる手続きがあるか知りたいという方は、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。

自己破産のデメリットと、それでも今動く理由

相談者

退職金のほかに、自己破産で困ることはありますか。

あかり

あります。先に全部お伝えしますね。そのうえで、避けられるものと、手続きを選べば関係ないものを分けて考えましょう。

デメリット事実退職金・仕事との関係
一定の財産を手放す「生活に必要な家財道具等の一定の財産以外は、失うことになる。(ただし、99万円以下の現金は手元に残せる。)」(法テラス)退職金の4分の3は差押禁止で残る
一部の仕事に就けない期間がある警備員など、資格の制限がある仕事がある(復権まで。警備業法3条1号ほか)一般の会社員の仕事には制限はない
信用情報に記録が残る(CICの場合)クレジット情報を「契約期間中および契約終了後5年間」保有するとしている。ほかの信用情報機関の保有期間は異なるカードやローンが一定期間使いにくくなる
官報に載る住所や氏名等が官報に載る(法テラス)官報を見た人に知られる可能性は否定できない(法テラス)
保証人に請求が行く自己破産の免責は保証人には及ばない(破産法253条2項)家族が保証人なら、相談のときに伝える

出典:法テラス よくある相談「自己破産のメリット・デメリットは何ですか。」(2026年10月時点)

一方で、返せない借金をそのままにしていれば、遅れた分の損害金がふくらみ、裁判を起こされて給料や預金を差し押さえられるおそれがあります。給料が差し押さえられれば、勤め先に裁判所から書類が届きます。退職金や会社のことが心配なら、なおさら差し押さえの前に動くのが得策です。

退職金や会社のことが心配で自己破産に踏み切れないという方は、少しでも早めに債務整理を検討するのがおすすめです。

今の状況ごとに、最短でやること

相談者

私の場合は、何からすればいいですか。

あかり

勤続年数と、会社に退職金の制度があるかで分けて考えましょう。

今の状況最短でやること
勤続5年以内・パート・アルバイト証明書がいらないとする裁判所もある。勤め先の名前と勤続年数を持って、そのまま相談へ
勤続が長く、退職金の見込みがある就業規則(退職金支給規程)を確認し、今辞めたらいくら出るかの目安をつけて相談へ。会社に頼む前に、どの資料で足りるかを弁護士に確認
退職金が確定拠出年金や中退共で積み立てられている加入している制度の資料を持って相談へ。法律で差し押さえが禁止されている制度がある
退職したが、退職金をまだ受け取っていない受け取る前に(受け取ったなら使う前に)、すぐ相談へ。千葉地裁の書式では見込額の4分の1を書く
退職金を守りたい自己破産だけでなく、個人再生・任意整理も含めて、どの手続きが合うかを相談

退職金を守りながら借金を整理できる方法を知りたいという方は、少しでも早い段階で弁護士などの専門家に相談してください。

よくある質問

Q. 自己破産したら、退職金は全部なくなりますか。

A. 全部ではありません。退職金の4分の3は差し押さえが禁止されていて(民事執行法152条2項)、差押禁止の財産は破産財団に入りません(破産法34条3項2号)。まだ辞めておらず6か月以内に受け取る予定もない人について、千葉地裁の書式は見込額の8分の1を財産として書くよう求めています。

Q. 退職金見込額証明書は、必ず会社からもらわないといけませんか。

A. 必ずではありません。札幌地裁は、勤務先からの証明書等の取得が困難な場合は就業規則(退職金支給規程)を、それも困難な場合は聞き取りで計算した報告書を出すよう案内しています。勤続5年以内やパート・アルバイトなら提出不要とする裁判所もあります(鹿児島地裁)。

Q. 退職金の制度がない会社に勤めています。何か出すものはありますか。

A. 裁判所によっては、退職金がないことを示す資料を出す必要があります。高知地裁の記載例は、勤続5年以上なら「支給がない場合でも退職金が無いという証明書を提出してください」としています。どの資料で足りるかは弁護士に確認してください。

Q. 8分の1に当たるお金を一度に払えません。破産できないのですか。

A. それだけで破産できないと決まるわけではありません。扱いは申立先の裁判所や破産管財人の運用で分かれ、破産手続開始の決定後に自由財産の拡張(破産法34条4項)を申し立てる方法もあります。公的資料に全国一律の払い方は書かれていないので、申し立てる前に弁護士と進め方を相談しておきましょう。

Q. 公務員の退職手当も同じですか。

A. 基本は同じ考え方です。民事執行法152条2項は「退職手当及びその性質を有する給与に係る債権」の4分の3の差押えを禁じています。国家公務員退職手当法には、退職手当の差押えを別に禁じる規定は見当たりません。地方公務員の退職手当は各自治体の条例で定められています。財産としてどう書くかは、申し立てる裁判所の書式に従います。勤め先の退職手当の規定を持って相談してください。

Q. 自己破産したら、会社にいられなくなりますか。

A. 自己破産しただけで解雇が有効になるとは限りません。労働契約法16条は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇を無効としていて、有効かどうかは個別の事情で判断されます。ただし、警備員など資格の制限がある仕事は、復権まで就けないことがあります。

まとめ

自己破産と退職金について押さえておくことは、次のとおりです。

🔎 30秒でわかる結論

  • 退職金の4分の3は差押禁止で、自己破産でも手元に残る(民事執行法152条2項・破産法34条3項2号)
  • 千葉地裁の書式では、まだ辞めていない人は「今、自己都合で辞めたら出る額」の8分の1(6か月以内に受け取る予定なら4分の1)、辞めて未受領なら4分の1を財産として書く
  • 勤め先から証明書を取るのが困難なときは、就業規則(退職金支給規程)や聞き取りの報告書で代わりにできると案内する裁判所がある(札幌地裁)
  • 8分の1に当たるお金を用意できないときは、自由財産の拡張や、個人再生・任意整理を検討する
  • 特定の借入先だけに返す・隠すはNG(破産法162条1項・252条1項)。会社を辞めて受け取る前にも、まず相談

退職金の見込額が分かる資料(就業規則や退職金支給規程)と借入先の一覧を持って相談すれば、退職金をどこまで残せるか、どの手続きが合うかを弁護士と一緒に見立てられます。会社を辞めたり、退職金を当てにして動いたりする前に、まず相談してください。

借金に関する相談は、無料で受け付けている窓口が多くあります。まずは話だけでも聞いてみるのがおすすめです。

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📚 出典(公的機関・法令)を見る
  • e-Gov 破産法(平成十六年法律第七十五号)34条1項・3項2号・4項・162条1項・252条1項1号・5号・8号・2項・253条2項 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075
  • e-Gov 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)152条2項 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004
  • 法テラス よくある相談「任意整理とは何ですか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-niniseiri-001.html
  • e-Gov 警備業法(昭和四十七年法律第百十七号)3条1号 https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000117
  • e-Gov 労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)16条 https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128
  • e-Gov 確定拠出年金法 32条 https://laws.e-gov.go.jp/law/413AC0000000088
  • e-Gov 中小企業退職金共済法 20条 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000160
  • e-Gov 国家公務員退職手当法(昭和二十八年法律第百八十二号) https://laws.e-gov.go.jp/law/328AC1000000182
  • 千葉地方裁判所 破産手続開始・免責許可申立書(代理人申立用・Word)財産目録「退職金請求権・退職慰労金」「過去2年間に受領・処分した財産」 https://www.courts.go.jp/chiba/vc-files/chiba/minjisyoshiki/hasan/00-moushitatesyoikkatsu.docx
  • 札幌地方裁判所「申立書の書き方」(R6.1版)(6) 退職金 https://www.courts.go.jp/sapporo/vc-files/sapporo/file/hasan_saisei/R6.1_moushitatesyonokakikata.pdf
  • 札幌地方裁判所「必要書類一覧」(R6.1版・退職金計算書又は退職金支給規程のコピー) https://www.courts.go.jp/sapporo/vc-files/sapporo/file/hasan_saisei/R6.1_hitsuyousyoruiichiran.pdf
  • 法テラス よくある相談「自己破産すると、職場の人や近所の人に知られてしまいますか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-hasan-008.html
  • 高知地方裁判所 破産申立書記載例(令和元年7月版・退職金) https://www.courts.go.jp/kouchi/vc-files/kouchi/file/hasan1-2_20190701.pdf
  • 鹿児島地方裁判所 破産手続開始・免責許可申立書記入上の注意(予定退職金証明書) https://www.courts.go.jp/kagoshima/vc-files/kagoshima/file/20303003.pdf
  • 東京地方裁判所 民事第20部(倒産部)「よくある質問」(管財事件として取り扱われる場合の例) https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minzi_section20/situmonn_tousannbu/index.html
  • 法テラス よくある相談「自己破産のメリット・デメリットは何ですか。」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-hasan-002.html
  • CIC「CICが保有する信用情報」(保有期間) https://www.cic.co.jp/guide/credit-information/possession/

本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の判断は弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。(制度・数値は2026年10月時点)

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