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・「自営業は債務整理をすると、廃業するしかない」
・「仕事道具や車まで、全部持っていかれてしまう」
こんな不安を抱えている人も多いのではないでしょうか?
しかし、これは誤解です。「債務整理=必ず廃業」と決めている法律はなく、自己破産は「収入や財産で返済できるか」で判断されるもので、借金の額や職業で門前払いになる制度ではありません(千葉地方裁判所の公表資料)。
とはいえ、手続きによって事業への影響はまったく違い、財産の換価や取引先に知られる経路など、正直に知っておくべき事実があるのも確かです。
本記事では、自営業・個人事業主が債務整理をする場合に、事業への影響がどう違うのかを、法律の条文と裁判所の公表資料だけで紹介します。
現在すでに返済のための借入を重ねている人はもちろんのこと、資金繰りに少しずつ不安を感じ始めているという人も、自営業と債務整理の関係についてしっかりと理解しておきましょう。

自営業です。事業の借入と生活費のカードが混ざって、もう返済が回りません。でも債務整理をしたら、店を畳むことになるんですよね……。

「整理する=廃業」とは限りません。たとえば任意整理は裁判所を通さない話し合いで、財産をお金に換える仕組み自体がありません。手続きごとの違いを一緒に見ていきましょう。

仕事で使う車や工具はどうなるんですか?あれがないと仕事ができません。

法律には「差し押さえてはいけない物」のリストがあり、職人さんの仕事道具はそこに書かれています。ただし在庫商品は別、という注意点もあるので、条文どおりにお伝えしますね。

取引先にだけは知られたくないんです。それが一番怖くて。

知られる経路は決まっています。どの手続きなら知られにくいのか、どんな場合に知られうるのかも、ごまかさずに説明します。
🔎 30秒でわかる結論
- 自営業でも債務整理はできる。自己破産は「収入や財産で返済できるか」で判断され、借金の額や職業で決まるわけではない(千葉地裁)
- 任意整理は裁判所を通さない私的な話し合いで、財産を換価する仕組みがない。個人再生は「継続的に又は反復して収入を得る見込み」があれば変動収入でも入口はある(民事再生法221条1項)
- 自己破産でも、農具・漁具・「業務に欠くことができない器具」は差押禁止動産(民事執行法131条)。ただし商品(在庫)は除くと条文に明記されている
- 税金・社会保険料は債務整理では減らない(破産法253条1項1号)。取引先に知られる経路・費用の分かれ目(管財事件)も本文で正直に解説
📖 この記事でわかること
- 自営業・個人事業主でも債務整理できるのか(3つの手続きの入口)
- 手続きごとに「事業への影響」がどう違うか
- 仕事道具・車・在庫はどうなるか(差押禁止動産の条文)
- 管財事件になるかどうかで費用が大きく変わる理由
- 取引先・従業員に知られる経路
- 保証協会付き融資・公庫の借入・税金の扱い
- 法人の代表者(連帯保証)の場合
① 自営業でも債務整理はできる?——「職業」は要件になっていない

そもそも、会社員じゃないと債務整理はできないんじゃ……と不安です。

そんなことはありません。裁判所は「収入や財産で返済できるか」で見る、と説明しています。職業で入口が閉じる制度ではないんです。
自己破産について、千葉地方裁判所はよくある質問への回答でこう説明しています。
💡 裁判所の説明(逐語)
「破産手続を開始するかどうかは、申立人がその収入や財産によって借金を返済することができるかどうかで判断されます。借金の額だけで決まるわけではありません。」
(千葉地方裁判所「破産・免責手続について-よくあるご質問-」Q2より引用)
自営業だから、フリーランスだから、という理由で門前払いになる制度ではありません。ただし、3つの手続き(任意整理・個人再生・自己破産)には、それぞれ入口の条件があります。個人再生は収入の型によって「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2類型に分かれるため、次の表では4行に分けて示します。
| 手続き | 入口の条件(収入まわり) | 自営業との関係 |
|---|---|---|
| 任意整理 | 法律上の要件はない(裁判所を通さない私的な話し合い) | 和解後に払い続けられる原資が必要 |
| 小規模個人再生 | 「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込み」+住宅ローン等を除く借金5,000万円以下(民事再生法221条1項) | 変動のある事業収入でも、見込みがあれば入口はある |
| 給与所得者等再生 | 「給与又はこれに類する定期的な収入」で「額の変動の幅が小さい」こと(民事再生法239条1項) | 収入が変動する自営業は通常こちらではなく小規模個人再生を検討 |
| 自己破産 | 収入があることは要件ではない。「収入や財産で返済できるか」で判断(千葉地裁Q2) | 職業による制限はない |
出典:e-Gov法令検索「民事再生法」・千葉地方裁判所(2026年8月時点)
民事再生法221条1項は、小規模個人再生の対象を「個人である債務者のうち、将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあり、かつ、再生債権の総額(住宅資金貸付債権の額……を除く。)が五千万円を超えないもの」と定めています。「毎月同じ額」とは書かれていません。一方、給与所得者等再生(239条1項)は「給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれるもの」に限られます。売上が月ごとに揺れる自営業が検討するのは、通常は小規模個人再生のほうです。
✅ このセクションのまとめ
債務整理の入口は「職業」では閉じない。自己破産は収入や財産で返済できるかどうかで判断され、小規模個人再生は「継続的に又は反復して収入を得る見込み」が条件。変動収入だから無理、と自分で決めてしまう必要はありません。
② 手続きで「事業への影響」はまったく違う

3つの手続きで、店や仕事への影響はどれくらい違うんですか?

ここが一番大事なところです。財産をお金に換える仕組みが「ある手続き」と「ない手続き」がある、と整理すると分かりやすいですよ。
②-1 任意整理——裁判所も、財産の換価もない
法テラスは任意整理を「裁判所などの公的機関を利用せず、当事者が私的に話合いをして、支払額や支払方法について合意をする手続」と説明しています。裁判所が関与せず、財産をお金に換えて配当する仕組みそのものがありません。事業用の資産に手続き上、直接手が付くことのない整理方法です。
また、裁判所を通さない話し合いであるため、どの借金を話し合いの対象にするかを選ぶ余地があります。ただし、話し合いがまとまるかどうかは相手のあることです。応じるかどうかは債権者ごとの判断であり、結果をあらかじめ約束できる手続きではありません。そして、合意した支払いを続けられる原資がなければ成り立たない方法でもあります。
②-2 個人再生——財産を換価せず、減額後の計画を履行する
個人再生(ここでは小規模個人再生)は、裁判所を通して借金を減額し、原則3年間で分割返済する手続きです。裁判所の解説ページには「原則3年間で一定割合を分割返済」「返済総額が清算価値を上回らなければならない」と示されています。自己破産と違って財産の換価・配当は行われませんが、手元に財産が多いほど、返さなければならない総額も上がる(清算価値保障)という関係にあります。事業用の資産が多い場合は、この点が計画に効いてきます。
②-3 自己破産——換価はあるが、「即・廃業」と決まっているわけではない
自己破産は、千葉地裁の説明によれば「債務者の財産をお金に換えて、債権者に分配する手続」であり、残った借金の支払いを免除して生活を再建するのが免責手続です。事業用の財産も換価の対象になり得ます。同Q6は「財産」の例として「不動産、自動車、生命保険の解約返戻金などのほか、金融業者に対する過払金請求権、他人にお金を貸している場合の貸金請求権なども含まれます」を挙げています。
ただし、次の2つは条文で確認できます。
1つ目。換価すべき財産がない場合、財産をお金に換える手続き自体が行われません。千葉地裁Q5は、管財人を選任しない場合について「この場合は債務者の財産を金銭に換えるなどの手続を行わないので、破産管財人の費用を負担する必要はありません」と説明しています(同時廃止と呼ばれる進み方です)。
2つ目。破産法36条は「破産手続開始の決定がされた後であっても、破産管財人は、裁判所の許可を得て、破産者の事業を継続することができる」と定めています。つまり「破産=その瞬間に必ず廃業」と法律が決めているわけではありません。
💡 ここ、勘違いされがち
破産法36条で事業の継続を決めるのは破産管財人と裁判所であって、本人ではありません。「破産しても当然に続けられる」という意味ではないことは、正直にお伝えしておきます。設備や在庫を多く抱える事業ほど換価の影響は大きく、事業を続けたいなら、どの手続きを選ぶかの検討が先に来ます。
✅ このセクションのまとめ
任意整理には財産換価の仕組みがなく、個人再生も換価はしない(ただし財産が多いほど返す総額が上がる)。自己破産は換価があるが、換価すべき財産がなければ財産をお金に換える手続き自体が行われず、管財人による事業継続を予定した条文(破産法36条)もある。「整理=廃業」と最初から決まっているわけではありません。
万が一支払いが難しい場合は、少しでも早い段階で弁護士などの専門家に相談してください。
③ 仕事道具・車・在庫はどうなる?——差押禁止動産の条文を読む

工具と軽トラがないと仕事になりません。全部持っていかれるんですか?

法律には「差し押さえてはいけない物」のリストがあります。仕事道具はそこに書かれています。ただし「商品を除く」という但し書きもあるので、両方お見せしますね。
民事執行法131条は「差押禁止動産」を列挙しています。事業に関わるのは次の号です。
| 号 | 差し押さえてはならない物(条文の要旨) |
|---|---|
| 4号 | 主として自己の労力により農業を営む者の「農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子」など |
| 5号 | 主として自己の労力により漁業を営む者の「水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚」など |
| 6号 | 「技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者……のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)」 |
| 9号 | 「債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類」 |
出典:e-Gov法令検索「民事執行法」131条(2026年8月時点)
職人・技術者など「主として自己の労力」で仕事をしている人の道具は、差押えの対象から条文で外されています。一方で、6号のかっこ書きにあるとおり「商品を除く」=販売用の在庫は守られていません。小売や卸のように在庫を多く抱える事業と、腕一本の職人仕事とでは、同じ「自営業」でも影響の出方が違う、ということです。
また、自己破産では99万円以下の現金などの「自由財産」は手元に残せます(破産法34条3項1号)。裁判所が自由財産の範囲を広げる制度(同条4項)もあります。車については、ローンが残っていて所有権留保が付いている場合は信販会社に引き揚げられる可能性という別の論点があります。詳しくは車を残せるかの記事で解説しています。
✅ このセクションのまとめ
農具・漁具・職人の道具・商業帳簿は差押禁止動産(民事執行法131条)。ただし在庫商品は条文上守られていない。自分の事業がどちらに近いかで、手続き選びの重みが変わります。
④ 費用の分かれ目——管財事件になるかどうか

自営業だと破産の費用が高くなる、と聞いたことがあります。本当ですか?

「自営業だから一律に高い」という決まりはありません。管財人が選任されるかどうかで費用が変わり、その分かれ目を裁判所が3つ挙げています。
千葉地裁Q5は、破産手続が二つに分かれる理由をこう説明しています。「破産手続は、①申立人が一定以上の財産を持っているか、②財産の状況について調査の必要があるか、③債務を負った原因について調査の必要があるか、などによって、次の二つの手続に分かれます」。①〜③のような事情があると裁判所が破産管財人を選任し、その費用を申立人が負担します。
事業をしていた方は、売掛金・買掛金・設備・帳簿など「財産の状況」や「債務を負った原因」に調査すべき事情が出やすい傾向はありますが、①〜③に当たる事情があるかどうかで個別に決まるのであって、「自営業なら必ず管財事件」という定めではありません。
| 裁判所(公表資料) | 管財人が不要な場合 | 管財人が選任される場合 |
|---|---|---|
| 東京地裁(令和8年1月1日現在) | 申立手数料1,500円+予納金13,046円+郵券4,950円 | 個人管財:最低20万円+20,397円 |
| 千葉地裁(よくあるご質問Q4) | 「印紙、切手代を含めて約1万5000円」 | 「破産管財人の費用として50万円(弁護士が選任されている場合は減額されることがあります)程度」 |
出典:東京地方裁判所民事第20部「破産事件の手続費用一覧(令和8年1月1日現在)」・千葉地方裁判所「破産・免責手続について-よくあるご質問-」。裁判所・事案により異なります。
💡 ここ、勘違いされがち
管財人費用の目安は裁判所によってこれだけ違います。「ネットで見た金額」をそのまま自分の地域に当てはめず、管轄の裁判所の公表資料か、専門家への相談で確認してください。費用を工面できない場合の法テラスの立替制度は費用が払えないときの記事で解説しています。
返済が難しく滞納が長引いてしまう場合は、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
⑤ 取引先・従業員に知られる?——経路は決まっている

債務整理をしたことが、取引先に伝わってしまう経路ってあるんでしょうか。

やみくもに怖がるより、知られうる経路を具体的に押さえるのが近道です。経路は主に「債権者への通知」と「官報」の2つです。
1つ目は債権者への連絡です。弁護士・司法書士に依頼すると、債権者(お金を貸している側)に受任通知が送られます。貸金業法21条1項9号は、この通知の後、貸金業者が正当な理由なく電話や訪問で弁済を要求し、債務者から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、さらに同じ方法で要求を続けることを禁じています。通知が行くのはあくまで債権者です。借入のない取引先や販売先に、制度上の通知が行くわけではありません。
ただし、正直に書いておくべきことが2つあります。自己破産や個人再生はすべての債権者を対象にする裁判手続きなので、買掛金の相手やリース会社が債権者に当たる場合、その相手は手続きの中で知ることになります。また、破産・個人再生では開始決定などが官報に住所・氏名とともに掲載されます(任意整理は官報に載りません。戸籍や住民票に載ることは、いずれの手続きでもありません)。
従業員がいる場合はもう1つ。破産法253条1項5号は「雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権」を免責されない債権として挙げています。従業員の未払い給料は、自己破産をしても支払義務が消えません。従業員を抱えたまま資金繰りが崩れそうなときほど、早く専門家に相談する意味があります。
✅ このセクションのまとめ
制度上の通知は債権者宛て。借入関係のない取引先に通知が行く仕組みはないが、取引先が債権者(買掛・リース等)に当たる場合と官報(破産・個人再生)は正直に想定しておく。任意整理は官報に載らず、対象を選ぶ余地もある分、知られる経路が最も少ない。
⑥ 保証協会付き融資・公庫の借入・税金はどうなる?

コロナのときに借りた保証協会付きの融資も、債務整理の対象になるんですか?

借入先の種類で債務整理の対象から外れる、という決まりはありません。保証協会付きの場合は「代位弁済」という流れを知っておくと、通知が来ても慌てずに済みますよ。
破産法も民事再生法も、債権者の種類で手続きの対象を限定していません。銀行・信用金庫・日本政策金融公庫・信用保証協会の保証付き融資も、債務整理の検討対象になります。(例外的に支払義務が残る「非免責債権」は破産法253条1項に列挙されていますが、事業資金の借入という理由で非免責になる号はありません。)
信用保証協会の保証付き融資が返せなくなった場合の流れは、全国信用保証協会連合会がこう説明しています。「信用保証協会が金融機関に対し代位弁済したものについては、実情に即して中小企業・小規模事業者の方から信用保証協会にご返済いただきます」。つまり、協会が銀行に肩代わりした後は、返済の相手が銀行から保証協会に変わる(求償権)ということです。この求償権も、債務整理の検討対象になる債権です。
💡 ここ、勘違いされがち
税金・国民健康保険料・年金保険料は、どの債務整理でも減りません。破産法253条1項1号は租税等の請求権を免責の対象外と定めています。滞納がある場合は、債務整理とは別に分納・猶予の相談が必要です。税金・国保の滞納の記事で制度を詳しく解説しています。
そのため、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談するようにしてください。
⑦ 法人の代表者の場合——「経営者保証」という別の入口
個人事業ではなく法人(会社)を経営していて、会社の借入の連帯保証人になっている場合は、少し景色が変わります。中小企業庁は経営者保証を「中小企業が金融機関から融資を受ける際、経営者個人が会社の連帯保証人となること」と説明し、その扱いについて「経営者保証に関するガイドライン」があります(全国銀行協会と日本商工会議所が策定。平成25年12月5日公表、平成26年2月1日適用開始)。
ただし中小企業庁のページには、このガイドラインは「中小企業、経営者、金融機関共通の自主的なルール」と位置付けられており「法的な拘束力はない」ことも明記されています。保証債務の整理の相談先としては、中小企業活性化協議会などが案内されています。保証人の仕組みそのものは保証人・連帯保証人の記事で条文から解説しています。
⑧ デメリットも正直に——信用情報と「その後の資金調達」
ここまで「事業を続けられる可能性」の側を条文で見てきましたが、デメリットも同じ精度で書いておきます。
債務整理をすると、信用情報機関に事故情報(いわゆるブラックリスト)が登録されます。登録期間は各機関の公表ベースで、CICが契約終了後5年間、JICCが契約終了後5年以内、全国銀行協会(KSC)は取引情報が契約終了日から5年を超えない期間、破産・民事再生の官報情報は決定日から7年を超えない期間です。この間、新しい借入やクレジット契約は極めて通りにくくなります。事業を続ける場合、運転資金や設備資金を借入に頼る経営が当面できなくなる——これが自営業にとって最も重いデメリットです。ただし、この登録期間の起算点はいずれも「契約終了後」です。借入を抱えたまま先送りするより、整理に動いて契約を終わらせるほうが、登録期間の起算も早く進みます。借入に頼らない資金繰りへ早く切り替えるほど、影響のある期間は短くなります。
また、自己破産では手続き中に一部の資格・職業に制限があります(警備員・生命保険外務員など。免責許可決定の確定で復権します)。該当する業種の方は、依頼時に必ず確認してください。官報掲載(破産・個人再生)、保証人への請求(保証付き債務を整理対象にした場合)も併せて想定しておくべき点です。ただし官報掲載は破産・個人再生に限られ、任意整理を選べば載りません。保証付き債務を対象に含めるかどうかも選べます。手続きごとの違いを先に知っておくことが、影響を絞り込む最短の道です。
事業を続けながら借入に頼らない資金繰りへ早く切り替えたいという方は、少しでも早めに債務整理を検討するのがおすすめです。
⑨ 放置するとどうなるか——事実だけを並べます
「まだ回せているから」と借入で自転車操業を続けた場合に起きることは、感情を抜きにすると次のとおりです。
遅延損害金は、営業的金銭消費貸借では年20%を超えない範囲で設定でき(利息制限法7条1項)、滞納が続けば残高は増えていきます。債権者が裁判・支払督促を経て強制執行に進めば、売掛金や預金口座の差押えもあり得ます。事業用の口座が差し押さえられれば、仕入れも給料の支払いも止まります。税金の滞納は、裁判を経ずに滞納処分(差押え)に進む別ルートです。督促や差押えの段階別の対応は差押えの記事と督促・裁判所通知の記事にまとめています。
☎ 事業と心が両方苦しいときの公的窓口
資金繰りや事業の先行きそのものに追い詰められて、眠れない状態が続いているときは、債務整理の前に、まず話せる公的窓口があります。
・よりそいホットライン 0120-279-338(フリーダイヤル・無料/24時間対応)
・中小企業活性化協議会(中小企業庁が案内する、事業の収益力改善・再生の相談機関)
名乗らずに話せる窓口もあります。ひとりで抱え込まないでください。
⑩ 早めに相談したほうがよい人・まだ様子を見てよい人
早めに相談したほうがよい
- 返済のために新しい借入をしている(自転車操業)
- 事業用と生活費の借入が混ざって全体像がつかめない
- 税金・社会保険料の滞納が始まっている
- 従業員の給料や買掛金の支払いに手を付けそうになっている
- 保証協会や公庫から督促・期限の利益喪失の通知が来た
まだ様子を見てよい(ただし記録は取る)
- 一時的な入金遅れで、翌月には確実に解消する見込みがある
- 借入はあるが、利益から無理なく返せている
- 支払条件の変更を金融機関と直接交渉できている
迷ったら、判断材料になるのは「返済のための借入をしているかどうか」です。返すために借りる状態に入っているなら、時間はあなたの味方ではありません。いま様子を見てよい場合でも、状況が変わったときにすぐ動けるよう、どの段階で相談すべきかを無料相談で確認しておくのが最短です。
返済のための借入を重ねてしまうリスクが生じる前に、まずは無料相談で現状を話してみてください。
よくある質問
Q. コロナのときに借りた「ゼロゼロ融資」や公庫の借入も、債務整理の対象になりますか?
A. 借入先の種類で対象から外れる、という決まりはありません。破産法・民事再生法は債権者の種類で手続きの対象を限定しておらず、免責されない債権の一覧(破産法253条1項)にも「事業資金の借入」という号はありません。保証協会付きの融資は、協会が代位弁済した後は保証協会への返済(求償権)に変わりますが、この求償権も債務整理の検討対象になる債権です。
Q. 確定申告をきちんとしていない年があります。それでも相談できますか?
A. 相談自体はできます。ただし、裁判所を使う手続き(個人再生・自己破産)では収入や財産の状況を資料で示す必要があり、帳簿や申告の状況は手続きの進み方に影響します。千葉地裁も、申立てには「財産状況・生活状況を正確に記載したり、そのことがわかるような資料を集めたりすることが不可欠」と説明しています。資料が揃っていないことも含めて、早めに専門家に正直に話すのが結局いちばん近道です。
Q. 従業員の給料が払えなくなりそうです。債務整理で給料の支払いも消えますか?
A. 消えません。破産法253条1項5号は「雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権」を免責されない債権として明記しています。従業員の給料に手を付ける前の段階で相談することを強くおすすめします。
Q. 事業をやめる前提でないと相談できませんか?
A. そんなことはありません。本文で見たとおり、任意整理には財産換価の仕組みがなく、個人再生も財産の換価はしない手続きです。破産法にも管財人による事業継続の条文(36条)があります。「続けたい」という希望を前提に、どの選択肢がありうるかを聞く相談は成立します。ただし、どの道を取れるかは債務の内訳と事業の状態によるので、結果は約束できません。
万が一支払いが難しい場合は、少しでも早い段階で弁護士などの専門家に相談してください。
まとめ——「整理=廃業」と決めているのは法律ではない
自営業・個人事業主の債務整理について、条文と裁判所の公表資料で確認できることを並べました。入口は職業では閉じておらず(千葉地裁Q2)、小規模個人再生は変動収入を前提にした書き方になっており(民事再生法221条1項)、仕事道具は差押禁止動産として条文で守られています(民事執行法131条)。一方で、在庫は守られず、税金は減らず、信用情報の登録で当面の借入はできなくなります。
「畳むしかない」とひとりで結論を出す前に、あなたの事業の形でどの道がありうるかを、まず情報として集めてください。この記事がその最初の一歩になれば十分です。
📚 出典(公的機関・法令)を見る
- 千葉地方裁判所民事第4部・破産係「破産・免責手続について-よくあるご質問・お問い合わせ-」(Q1手続の説明/Q2「借金の額だけで決まるわけではありません」/Q4費用約1万5000円・管財人費用50万円程度/Q5二つの手続に分かれる理由①〜③/Q6財産の範囲/Q10本人申立ての説明) https://www.courts.go.jp/chiba/vc-files/chiba/file/setsumeisho.pdf
- e-Gov法令検索「民事再生法」221条1項(小規模個人再生の要件=将来において継続的に又は反復して収入を得る見込み・再生債権総額5,000万円以下)・239条1項(給与所得者等再生=給与又はこれに類する定期的な収入で額の変動の幅が小さいと見込まれる者) https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225
- e-Gov法令検索「民事執行法」131条(差押禁止動産=4号農業・5号漁業・6号「業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)」・9号商業帳簿)・152条(差押禁止債権) https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004
- e-Gov法令検索「破産法」34条3項1号・4項(自由財産)・36条(破産管財人は、裁判所の許可を得て、破産者の事業を継続することができる)・253条1項1号(租税等の請求権)・5号(雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権)・2項 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075
- 裁判所「個人再生」(無担保債務の総額が5000万円以下/原則3年間で一定割合を分割返済/返済総額が清算価値を上回らなければならない) https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_18/index.html
- 東京地方裁判所民事第20部「破産事件の手続費用一覧(令和8年1月1日現在)」(申立手数料1,500円/同時廃止事件13,046円/個人管財 最低20万円及び個人1件につき20,397円/予納郵券4,950円) https://www.courts.go.jp/tokyo/vc-files/tokyo/min20_hasanq4_hasantetudukihiyouitiran_R080101.pdf
- 法テラス「任意整理とは何ですか。」(裁判所などの公的機関を利用せず、当事者が私的に話合いをして、支払額や支払方法について合意をする手続) https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-niniseiri-001.html
- 大分地方裁判所・簡易裁判所「債務整理Q&A」(官報掲載・戸籍/住民票には載らない・任意整理は載らない等) https://www.courts.go.jp/oita/vc-files/oita/file/R1.10.1saimuseiri-q-a.pdf
- e-Gov法令検索「貸金業法」21条1項9号(弁護士等への委託の書面通知後の取立て制限) https://laws.e-gov.go.jp/law/358AC1000000032
- e-Gov法令検索「利息制限法」7条1項(営業的金銭消費貸借の賠償額の予定=年2割を超えるときは超過部分につき無効) https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000100
- 中小企業庁「経営者保証」(経営者保証とは=中小企業が金融機関から融資を受ける際、経営者個人が会社の連帯保証人となること/全国銀行協会と日本商工会議所がガイドラインを策定・平成25年12月5日公表・平成26年2月1日適用開始/法的な拘束力はない/保証債務整理の相談先=中小企業活性化協議会等) https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/keieihosyou/index.html
- 全国信用保証協会連合会「信用保証制度のご案内」(信用保証協会が金融機関に対し代位弁済したものについては、実情に即して中小企業・小規模事業者の方から信用保証協会にご返済いただきます) https://www.zenshinhoren.or.jp/guarantee-system/
- CIC「CICが保有する信用情報」(クレジット情報=契約期間中および契約終了後5年間) https://www.cic.co.jp/guide/credit-information/possession/
- JICC「信用情報の内容と登録期間」(契約内容・返済状況・取引事実=契約継続中及び契約終了後5年以内〔2019年10月1日以降の契約〕) https://www.jicc.co.jp/aboutus/credit-info/registration
- 全国銀行協会 全国銀行個人信用情報センター「センターの概要」(取引情報=契約終了日から5年を超えない期間/官報情報=当該決定日から7年を超えない期間) https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/about/
- 法テラス「立替制度(民事法律扶助)のご利用にあたって」(資力基準・無利息の分割返済) https://www.houterasu.or.jp/site/soudan-tatekae/goriyou.html
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」(よりそいホットライン0120-279-338=フリーダイヤル・無料・24時間対応) https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/soudan/tel/
本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の判断は弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。(制度・数値は2026年8月時点)
借金に関する相談は、無料で受け付けている窓口が多くあります。まずは話だけでも聞いてみるのがおすすめです。
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