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・「借金があると結婚できない」
・「結婚したら配偶者に借金の返済義務が移ってしまう」
こんな不安を抱えている人も多いのではないでしょうか?
しかし、これは誤解です。民法が定める婚姻の要件(731条〜739条)に借金や信用情報の有無は含まれておらず、結婚しても独身時代の借金の返済義務が配偶者に自動的に移ることもありません(民法762条1項)。
とはいえ、二人で住宅ローンを組む場面では信用情報が確認の対象になることや、隠したまま結婚すると生活の中で借金の存在に気づかれやすいことが待っているのも事実です。
本記事では、借金があっても結婚できる法的な根拠と、結婚前・結婚後どちらのタイミングで債務整理をすべきかの判断材料について紹介します。
現在すでに結婚を控えていて借金を抱えている人はもちろんのこと、将来的に結婚を考えていて今のうちに整理しておきたいという人も、借金と結婚の関係についてしっかりと理解しておきましょう。

結婚を考えている相手がいます。でも私には借金があって……。籍を入れるとき、借金があるとダメだったりしませんか?

いいえ、ダメにはなりません。婚姻届に借金を書く欄はありませんし、民法が定める婚姻の要件に「借金がないこと」は含まれていないんです。条文をそのままお見せしますね。

でも、結婚したら私の借金は相手の借金になるんですよね?それが申し訳なくて。

民法は「夫婦別産制」という仕組みを取っています。あなた名義の借金の返済義務を、結婚したという理由だけで配偶者が負うことはありません。ただし例外もあるので、そこも正直に説明します。

信用情報がブラックだと、相手のカードやローンにも影響しますか?

信用情報は「契約した本人」の情報です。結婚した相手の信用情報にあなたの事故情報が移る、という仕組みはありません。ただ、二人で組む住宅ローンの話は別なので、後ほど。
🔎 30秒でわかる結論
- 民法が定める婚姻の要件(731条〜)に借金・信用情報は一切含まれていない。婚姻は「届け出ることによって、その効力を生ずる」(739条1項)
- 夫婦別産制(民法762条1項)=結婚しても、あなた名義の借金の返済義務が配偶者に自動的に移ることはない。保証人は「書面でしなければ、その効力を生じない」(446条2項)
- 信用情報は契約した本人の情報(CIC)。結婚で配偶者の信用情報に事故情報が移る仕組みはない
- ただし正直に:日常の家事に関する債務の連帯責任(761条)、家計がひとつになる現実、二人で組む住宅ローンへの影響はある。だから「整理のタイミング」を本文で解説
📖 この記事でわかること
- 「借金があると結婚できない」が法律上存在しない理由(条文)
- 結婚したら相手の借金を背負うのか(夫婦別産制と例外)
- 信用情報は本人単位という事実と、その限界
- 隠したまま結婚した場合に起きうること
- 債務整理は結婚前と結婚後、どちらがよいか(事実ベースの整理)
- よくある質問(相手の親に調べられる?名字が変われば消える?)
① 「借金があると結婚できない」という法律はない——条文を全部見る
民法が婚姻の成立について定めている主な条文は、次のとおりです。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 731条(婚姻適齢) | 「婚姻は、十八歳にならなければ、することができない」 |
| 732条(重婚の禁止) | 「配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない」 |
| 739条1項(婚姻の届出) | 「婚姻は、戸籍法……の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる」 |
出典:e-Gov法令検索「民法」(2026年8月時点)
このほかに近親者間の婚姻の禁止などの規定がありますが、「借金がないこと」「信用情報に問題がないこと」を求める条文は、どこにもありません。婚姻届に借金の残高を書く欄もありません。役所が信用情報機関に照会することもありません(信用情報は後述のとおり、加盟する会員会社が審査のために使うもので、婚姻の手続きとは無関係です)。
💡 ポイント
「借金があると結婚できない」は、法律の話ではなく、気持ちと信頼の話です。制度としては、あなたはいつでも結婚できます。だからこそ、この記事では制度の事実を先に整理して、気持ちの問題を考えるための土台を作ります。
万が一支払いが難しい場合は、少しでも早い段階で弁護士などの専門家に相談してください。
② 結婚したら、相手はあなたの借金を背負うのか

籍を入れたら「夫婦の借金」になって、相手に請求が行くんじゃないですか?

民法762条1項を見てください。結婚前からの財産と、結婚後に自分の名で得た財産は「特有財産」=その人単独のもの、と書かれています。借金も同じ整理です。
民法762条1項はこう定めています。「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする」。夫婦は結婚しても、財産関係では別々の人格です(夫婦別産制)。あなたが独身時代に作った借金の返済義務が、婚姻届を出した瞬間に配偶者に生じる、という制度にはなっていません。
「知らないうちに配偶者が保証人にされていたら」という不安にも、条文で答えられます。民法446条2項は「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない」と定めています。配偶者が保証人になるのは、配偶者自身が書面(または電磁的記録)で保証契約を結んだ場合です。結婚したという事実だけで保証人になることはありません。
②-1 ただし、例外はある——「日常の家事」の連帯責任
正直に書きます。民法761条は「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う」と定めています。食費や光熱費など、日常の家計に関する契約はお互いに責任を負う、という規定です。何が「日常の家事」に当たるかは個別の判断ですが、独身時代の借金はそもそも婚姻中の行為ではないため、この条文が想定する場面には当たりません。
✅ このセクションのまとめ
結婚しても、独身時代の借金の返済義務が配偶者に移る制度はない(民法762条1項)。保証人は書面の契約が必要(446条2項)。例外の761条は「日常の家事」に関する婚姻中の債務の話で、あなたの過去の借金とは別の話です。
結婚後に、独身時代の借金について配偶者に迷惑をかけたくないという方は、少しでも早めに債務整理を検討するのがおすすめです。
③ 信用情報は「本人単位」——結婚で移らない。ただし限界も
「自分がブラックだと、相手もブラックになるのでは」という不安について、信用情報機関CICの公表を確認します。CICは情報開示について「情報開示とは、お客様ご本人のお申込みにより、CICに加盟している会員会社(クレジット会社等)との契約内容や支払い状況等の信用情報を確認できる制度です」と説明しています。登録されているクレジット情報の項目も「契約した会社名/氏名/生年月日/電話番号/契約の内容……」と、契約した本人についての情報です。
つまり、信用情報は契約者個人ごとに管理されるもので、結婚によって配偶者の信用情報にあなたの事故情報が登録される、という仕組みはありません。また、審査について CIC は「各クレジット会社では、独自の審査基準に基づいて審査を行っております」としており、審査をするのは信用情報機関ではなく各社です。
③-1 限界も正直に——「二人で組む」契約は別
本人単位の原則には、実務上の限界があります。二人の収入を合わせて住宅ローンを組む場合(収入合算・ペアローン)など、あなた自身が契約者・連帯保証人・連帯債務者になる場面では、あなたの信用情報が確認の対象になります。CICは申込情報を「新規にクレジットやローン等を申し込んだ際に、CICに加盟するクレジット会社等が支払能力を調査するために確認した情報」と説明しており、申し込みの時点で照会される仕組みです(なお、消費者金融など貸金業者との貸付契約については、貸金業法13条2項が指定信用情報機関の信用情報の使用を義務付けています。銀行のローンは同法の対象ではありません)。事故情報の登録期間中は、二人の名義を前提にした住宅ローンの計画に影響が出る可能性がある——これは隠さずお伝えしておきます。詳しくは債務整理と住宅ローンの記事で解説しています。ただし、この影響が続く期間は固定ではありません。本文⑤で見るとおり、整理に早く動くほど契約終了の時点が早く来て、登録期間の起算点も早まります。先送りして「明ける」時期を遠ざけるより、早く動いて影響の期間を縮めるほうが、二人の将来設計にとって選べる道は多く残ります。
なお、債務整理をした場合に官報に住所・氏名が載るのは自己破産と個人再生で、任意整理は官報に載りません。戸籍や住民票に載ることは、どの手続きでもありません(大分地方裁判所・簡易裁判所の債務整理Q&Aほか)。
そのため、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談するようにしてください。
④ 隠したまま結婚すると、どうなるか

正直、言えないまま結婚してしまおうかとも思っています……。

その選択を裁く立場に、わたしたちはありません。ただ、隠したままだと「どこで見えやすいか」は事実として知っておいたほうがいいと思います。
まず制度の事実から。婚姻の成立にあたって、借金の申告は求められていません。「隠して結婚したから婚姻がどうにかなる」という単純な制度はありません。ここから先は法律ではなく、生活と信頼の話です。
隠したままの場合に、借金が見えやすくなる場面は具体的です。督促状や催告書などの郵便物(貸金業法の規制で封書の中身は第三者に分からない形が義務付けられていますが、頻繁な郵便物自体は目に入ります)。滞納が進んだ場合の裁判所からの通知や給与の差押え(差押えは勤務先に通知されるため、家計にも直結します)。そして、家計をひとつにしたときの毎月の返済分の不自然な支出です。放置した場合に何が起きるかの時系列は滞納の時系列の記事と差押えの記事にまとめています。
💡 ここ、勘違いされがち
言う・言わないを決められるのは、あなただけです。ただ、隠すことを前提にすると「延滞できない」プレッシャーが増え、選択肢は時間とともに減っていきます。先に借金そのものを小さくしておけば、いつ・どう伝えるかを選べる余地はそのぶん広がります。決める前に、まず借金を小さくする道から着手するのが最善です。
返済が難しく滞納が長引いてしまう場合は、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
⑤ 債務整理は「結婚前」と「結婚後」どちらがよいか——事実だけ並べる
どちらを選ぶかはあなたの状況によりますが、判断材料になる事実は次のとおりです。
| 観点 | 事実 |
|---|---|
| 信用情報の登録 | どちらのタイミングでも登録されるのは本人の情報のみ。配偶者の信用情報には登録されない |
| 登録期間の起算 | KSC(全国銀行協会)は取引情報を「契約終了日(完済されていない場合は完済日)から5年を超えない期間」と公表。返し終わらないと期間のカウントが始まらない類型がある=先送りするほど「明ける」時期も遠くなる |
| 官報 | 自己破産・個人再生は掲載される。任意整理は載らない |
| 家計への影響 | 結婚後は返済も生活費も同じ家計から出る。整理して月々の支払いが軽くなれば、その分は二人の家計に直結する |
| 手続き上の配偶者の関与 | 債務整理はあなた個人の手続き。ただし裁判所を使う手続き(個人再生・自己破産)では家計の状況を示す資料の提出が必要になり、同居後は家計全体の資料が関わる |
出典:全国銀行協会 全国銀行個人信用情報センター「センターの概要」ほか(2026年8月時点)
ひとつだけ、時間の事実を強調しておきます。信用情報の登録期間は「契約終了後」から数える定めが中心で(CICは「契約終了後5年間」、JICCは「契約終了後5年以内」)、銀行系のKSCは取引情報の起算点を「契約終了日(完済されていない場合は完済日)」と公表しています。つまり、借金を抱えたまま先送りしている間は「明ける」までのカウントが始まらない類型があるということです。「いつか結婚するかもしれないから、それまでそっとしておく」は、実は「明ける」時期を後ろにずらし続ける選択でもあります。早く整理に向かうほど契約終了の時点が早く来て、信用情報が元に戻る時期も早く来ます。
☎ まず公的な窓口という選択肢も
だれかに話すこと自体が怖いときは、営利と無関係の公的窓口から始められます。法テラス・サポートダイヤル 0570-078374(平日9時〜21時・土曜9時〜17時)。公的な窓口の一覧と選び方は相談窓口の記事にまとめています。
二人の家計への影響が大きくなるリスクが生じる前に、まずは無料相談で現状を話してみてください。
よくある質問
Q. 相手の親に、私の信用情報を調べられることはありますか?
A. 信用情報の開示は「お客様ご本人のお申込み」によるものとCICが明記しています。婚約者やその親など、他人があなたの信用情報を照会する制度はありません。開示のやり方そのものは信用情報の開示請求の記事で解説しています。
Q. 結婚して名字や住所が変われば、事故情報は消えますか?
A. 「氏名や住所の変更で登録期間がリセットされる・消える」という定めは、どの信用情報機関の公表にもありません。登録期間は各機関の公表どおり(CIC=契約終了後5年間・JICC=契約終了後5年以内、KSC=取引情報5年・官報情報7年)で考えてください。名字が変わることを期待して待つより、整理を進めて契約終了の時点を早めるほうが、各機関の公表する期間の考え方に沿っています。
Q. 逆に、相手に借金がないか確認する方法はありますか?
A. 信用情報はご本人しか開示できないため、本人に開示してもらう以外に確認する制度はありません。つまり最終的には話し合いの領域です。この記事の内容(返済義務は自動的に移らない・信用情報は本人単位)は、逆の立場でもそのまま当てはまります。
Q. 結婚式や指輪のローンは組めますか?
A. 債務整理後の事故情報の登録期間中は、新しいクレジットやローンの審査は通りにくくなります(審査は各社の判断で、通る・通らないを断定できる公的情報はありません)。再びカードやローンを使えるようになる時期の考え方はクレジットカードの再取得の記事で解説しています。
万が一支払いが難しい場合は、少しでも早い段階で弁護士などの専門家に相談してください。
まとめ——制度はあなたの結婚を止めない
「借金があると結婚できない」という法律はなく、婚姻の要件に借金は含まれていません。結婚しても、独身時代の借金の返済義務が配偶者に自動的に移ることはなく(民法762条1項)、保証人は書面の契約がなければ成立しません(446条2項)。信用情報は本人単位で、結婚で相手に移ることもありません。
残るのは、二人の家計と信頼の話です。それはあなたが決めることですが、決める前に、借金そのものを小さくする道がどれだけあるかを知っておいて損はありません。早く動くほど「明ける」時期も早く来る——それだけは、制度の事実として確かです。
📚 出典(公的機関・法令)を見る
- e-Gov法令検索「民法」731条(婚姻適齢)・732条(重婚の禁止)・739条(婚姻の届出)・761条(日常の家事に関する債務の連帯責任)・762条(夫婦間における財産の帰属)・446条(保証人の責任等・保証契約は書面でしなければ効力を生じない) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- CIC「情報開示とは」(情報開示とは、お客様ご本人のお申込みにより、CICに加盟している会員会社(クレジット会社等)との契約内容や支払い状況等の信用情報を確認できる制度です/クレジット情報の登録項目=契約した会社名・氏名・生年月日・電話番号・契約の内容など) https://www.cic.co.jp/mydata/index.html
- CIC「よくあるご質問」(各クレジット会社では、独自の審査基準に基づいて審査を行っております) https://www.cic.co.jp/faq/detail/cre/cre01/002582.html
- CIC「CICが保有する信用情報」(クレジット情報=契約期間中および契約終了後5年間) https://www.cic.co.jp/guide/credit-information/possession/
- JICC「信用情報の内容と登録期間」(契約内容・返済状況・取引事実=契約継続中及び契約終了後5年以内〔2019年10月1日以降の契約〕) https://www.jicc.co.jp/aboutus/credit-info/registration
- 全国銀行協会 全国銀行個人信用情報センター「センターの概要」(取引情報=契約終了日(完済されていない場合は完済日)から5年を超えない期間/官報情報=当該決定日から7年を超えない期間) https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/about/
- e-Gov法令検索「貸金業法」13条2項(個人顧客との貸付けの契約では指定信用情報機関が保有する信用情報を使用しなければならない)・21条2項(支払催告書面の記載事項)・貸金業法施行規則19条2項(催告書面は封をする等、債務者以外の者に知られない方法による) https://laws.e-gov.go.jp/law/358AC1000000032
- 大分地方裁判所・簡易裁判所「債務整理Q&A」(自己破産・個人再生は官報に掲載/戸籍・住民票には載らない/任意整理は載らない) https://www.courts.go.jp/oita/vc-files/oita/file/R1.10.1saimuseiri-q-a.pdf
- 法テラス「サポートダイヤル」(0570-078374・平日9時〜21時・土曜9時〜17時) https://www.houterasu.or.jp/
本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の判断は弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。(制度・数値は2026年8月時点)
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