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・「5年放置すれば、借金は勝手に消えるらしい」
・「督促が来ている時点で、もう時効なんて無理だ」
何年も前のdカードの請求が届いて、こんな話を目にした人も多いのではないでしょうか?
どちらも正確ではありません。民法166条1項1号は、債権は「債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき」に時効によって消滅すると定めています。しかし民法145条は、「時効は、当事者……が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない」としています。つまり5年待っただけでは消えず、「援用」という意思表示が要るということです。
とはいえ、その手前にもっと現実的な落とし穴があります。民法152条は「時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める」と定めており、少額の入金や「分割にしてほしい」という申し出が、積み上がった年数をゼロに戻してしまうことがあるのです。
本記事では、dカードの支払いに時効があるのか、起算点はいつか、何をすると時効が消えるのか、そして時効を待つことにどんなコストがあるのかを、民法・民事訴訟法・民事執行法の条文とdカード利用規約の記載を中心に、法務省・消費者庁・信用情報機関の公表資料も踏まえて紹介します。
古い請求が届いた人はもちろんのこと、長く放置している支払いがある人も、仕組みをしっかり理解しておきましょう。

5年以上前に滞納したdカードの請求書が、急に届きました。これって、もう時効になっていませんか?

可能性はありますが、「たぶん5年経った」だけで判断するのは危険です。時効は起算点の確認と、援用という手続きが必要です。しかも、うっかりした一言で振り出しに戻ることがあります。

うっかりした一言、ですか?

たとえば「少しずつなら払います」と伝える、請求額の一部だけ入金する。これらは民法152条の「承認」にあたり得ます。承認があると、時効はその時から新たに進行を始めます。まず、何もしないことです。
🔎 30秒でわかる結論
- 債権は「債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき」に時効で消滅する(民法166条1項1号)
- 時効は「援用」しなければ効果が生じない(民法145条)。放置しているだけでは支払い義務は消えない
- 「承認」があると時効はその時から新たに進行を始める(民法152条)。一部の入金や支払いの猶予を求める申し出は承認にあたり得る
- 裁判上の請求・支払督促があると時効は完成しない(民法147条1項)。権利が確定すれば新たに進行し(同2項)、確定した権利の時効期間は10年になる(民法169条1項)
- 督促状が届いただけの催告は6か月の完成猶予にとどまり、再度の催告に効力はない(民法150条)
- dカードの債権は債権回収会社に委託・譲渡されることがある(規約44条1項2項)。差出人が変わっても、元の債務は同じ
📖 この記事でわかること
- dカードの支払いに時効はあるのか——民法166条の5年
- 起算点はいつか
- 5年経っても「援用」しなければ消えない
- 時効を消してしまうNG行動
- 5年経っていそうなときに、まず確認すること
- 「時効を待つ」ことのコスト
- 身に覚えのない請求・詐欺のハガキに注意
- よくある質問
dカードの支払いに時効はあるのか——民法166条の5年
あります。dカードの利用代金も、法律上は金銭債権です。民法166条1項は次のとおりです。
💡 消滅時効の条文
「債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき」(民法166条1項)
カード会社は自社の債権について、いつから請求できるかを当然知っています。そのため実際には1号の「5年」が問題になります。
万が一支払いが難しい場合は、少しでも早い段階で弁護士などの専門家に相談してください。
起算点はいつか
「5年」の数え始めがいつかは、事案によって異なります。ただ、dカードの場合に押さえておきたい規約の定めがあります。
規約34条1項は、支払いを遅滞したときなどに「本規約に基づく一切の債務について当然に期限の利益を失い、直ちに債務の全額をお支払いいただきます」と定めています。期限の利益を失えば、その時点で残額全部が「請求できる状態」になります。そこから債権者は全額を請求できるため、期限の利益喪失の時点が起算点の目安とされることがあります。ただしこれは条文に書かれたルールではなく、契約の内容や弁済の経過によって結論は変わります。
💡 ここ、勘違いされがち
ただし、いつ期限の利益を失ったのかは契約と経過によって異なり、ご自身の記憶だけで判断できるものではありません。「最後に払ったのが何年前か」よりも、会社側がいつ全額請求できる状態になったかが問題になります。手元の書面・明細と、信用情報の開示結果を突き合わせて確認してください。
そのため、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談するようにしてください。
5年経っても「援用」しなければ消えない
ここが最大の誤解です。民法145条は次のように定めています。
💡 時効は自動では効かない
「時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない」(民法145条)
つまり、期間が過ぎたという事実だけでは足りず、「時効を主張します」という意思表示(援用)が必要です。援用の方法は法律で決められていませんが、後から「言った・言わない」で争いにならないよう、記録が残る形で行う必要があります。
そして、援用ができるかどうかの判断には、起算点・完成猶予・更新の有無をすべて確認する必要があります。自己判断で相手に連絡すると、次章のNG行動を踏むおそれがあります。この局面は、動く前に専門家へ確認する価値が特に大きい場面です。
古い請求が届いて時効を検討したいという方は、自分で連絡する前に、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。
時効を消してしまうNG行動
良かれと思ってやったことが、積み上がった年数を消してしまうことがあります。自分の行動だけでなく、相手が起こす手続きも時効に影響します。
| 行動・出来事 | 法律上の扱い | 結果 |
|---|---|---|
| 請求額の一部を入金する | 権利の承認にあたり得る(民法152条1項) | 時効はその時から新たに進行を始める(=振り出しに戻る) |
| 「分割にしてほしい」「待ってほしい」と伝える | 同じく承認にあたり得る | 同上 |
| 支払う意思を書面や録音で示す | 同じく承認にあたり得る | 同上 |
| 裁判上の請求・支払督促を受ける | 時効の完成猶予(民法147条1項1号2号) | その事由が終了するまで時効は完成しない |
| 判決や仮執行宣言付支払督促が確定する | 確定した権利の時効期間は10年(民法169条1項) | 5年より長い期間、請求できる状態が続く |
出典:民法145条・147条・150条・152条・166条・169条(e-Gov法令検索)(2026年9月時点)
なお、督促状が届いただけの催告は、民法150条1項により「その時から六箇月を経過するまでの間」時効の完成が猶予されるにとどまり、同2項で再度の催告に完成猶予の効力はないとされています。「督促が来たからもう終わり」ではありませんが、裁判所を使った手続きに進めば話は別です。
✅ このセクションのまとめ
この局面での最大のリスクは、電話口で「少しなら払えます」と答えてしまうことです。請求の連絡が来ても、その場で支払いや猶予の話をしないでください。確認すべきことが済むまでは、返事を保留するのが安全です。
返済が難しく滞納が長引いてしまう場合は、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
5年経っていそうなときに、まず確認すること
① 差出人と債権の流れ
規約44条1項は債権回収会社等への回収業務の委託を、同2項は金融機関等への債権譲渡を、会員があらかじめ承諾する内容になっています。dカードでは、支払期日を過ぎたあとの窓口としてNTS債権回収株式会社 dカード受託センター(0570-783-890)が公式に案内されています。同社は法務省が公表する「債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧」に許可番号7で掲載されている実在の会社です。
② 書面に書かれた日付
請求書や通知書には、契約日・最終入金日・期限の利益を失った日などが記載されていることがあります。起算点を確かめる材料になるので、捨てずに保管してください。
③ 信用情報の開示
CIC・JICCに開示請求をすると、契約や返済状況の記録を自分で確認できます。dカードを発行するNTTドコモ・フィナンシャルグループはCICとJICCに加盟しており、延滞の事実はdカード契約期間中および同契約終了後(完済していない場合は完済後)5年間(CIC)/5年以内(JICC)登録されます。
💡 ここ、勘違いされがち
ここで注意です。信用情報から記録が消えることと、債務が時効で消えることは別です。信用情報の登録期間が過ぎても、支払い義務が自動的になくなるわけではありません。逆に、記録が残っていても時効が完成していることもあります。
万が一支払いが難しい場合は、少しでも早い段階で弁護士などの専門家に相談してください。
「時効を待つ」ことのコスト

あと1年待てば5年になるかもしれません。それまで黙っていたらどうでしょうか。

気持ちは分かりますが、待っている間も相手は動けます。そこは正直にお伝えします。
待つあいだに起きうることを並べます。
| 待っている間に起きうること | 内容 |
|---|---|
| 遅延損害金が増え続ける | ショッピングの1回払い・リボ払い等は年14.5%、分割払い等の残額は法定利率、キャッシング利用分は年20.0%で日割計算(規約62条1項1号2号・94条) |
| 支払督促・訴訟を起こされる | 時効の完成が猶予され(民法147条1項)、権利が確定すれば時効期間は10年になる(民法169条1項) |
| 差押えを受ける | 判決や仮執行宣言付支払督促があれば給料や預金の差押えが可能。給料等の4分の3は差押禁止(民事執行法152条1項) |
| 信用情報の記録が続く | 登録期間の起算点は「完済していない場合は完済後」=未払いのままではカウントが始まらない |
つまり、時効を待つ戦略は相手が5年間なにもしないことに賭けるという内容になります。すでに督促の書面が届いているなら、相手が動いている証拠です。
💡 「待つ5年」と「始める5年」
一方で、いま決着させれば、信用情報の登録期間の起算点である「完済」が動き出します。5年を待つのではなく、5年のカウントを始めるほうが早いという場合が少なくありません。どちらが有利かは、残高・経過年数・相手の動きで変わります。判断材料を揃えるためにも、まずは無料相談で現状を話してみてください。
古い請求と、いま払える金額の折り合いがつかないという方は、少しでも早めに債務整理を検討するのがおすすめです。
身に覚えのない請求・詐欺のハガキに注意
古い債務の請求を装った詐欺は、実際に発生しています。消費者庁は消費者ホットラインのページで「国民生活センターと消費者庁をかたる偽ハガキにご注意ください」と注意喚起しています。
確認のポイントは次のとおりです。
| 確認すること | 見方 |
|---|---|
| 差出人の会社が実在するか | 債権回収会社は法務大臣の許可が必要。法務省の「債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧」に社名と許可番号が載っているかを確認できる |
| 連絡先が公式のものか | 書面に書かれた番号にすぐかけず、公式サイトに掲載された番号で確認する |
| 内容が具体的か | 契約日・利用先・金額の内訳が示されず、「訴訟予告」等で急がせる書面は要注意 |
| 迷ったら | 消費者ホットライン188で、最寄りの消費生活相談窓口に相談できる |
💡 ここ、勘違いされがち
絶対にやってはいけないのは、不安になって書面の連絡先に電話し、その場で支払いを約束することです。本物の請求であれば承認(民法152条)にあたって時効が更新され、偽物であれば個人情報を渡すことになります。どちらに転んでも損をします。
返済が難しく滞納が長引いてしまう場合は、少しでも早めに弁護士などの専門家に相談してください。
よくある質問
Q. 最後に払ってから5年以上経っています。もう払わなくていいですか?
A. 自動的に消えることはありません。民法145条により、時効の効果を得るには援用という意思表示が必要です。また、その間に裁判上の請求や支払督促があれば時効は完成しておらず(民法147条1項)、権利が確定していれば時効期間は10年になります(民法169条1項)。「経過年数」だけで判断せず、書面と記録で確認してください。
Q. 少しだけ払えば、督促が止まるのではありませんか?
A. 一時的に連絡が減ることはあっても、一部の入金は民法152条の承認にあたり得ます。承認があれば時効はその時から新たに進行を始めます。時効の可能性を検討しているなら、入金や支払いの約束をする前に専門家へ確認してください。
Q. 債権回収会社に変わっていたら、時効の主張はできませんか?
A. 債権が譲渡されても、債務そのものの内容は変わりません。したがって、時効の起算点や完成猶予・更新の有無で判断することになります。dカードの規約44条2項は、会員が債権譲渡をあらかじめ承諾する内容になっており、譲受人から請求が来ること自体は想定された流れです。差出人が変わったことをもって時効の主張ができなくなるわけではありません。
Q. 時効の援用を自分でやってもいいですか?
A. 法律上、本人が行うことは可能です。ただし、起算点の判断を誤って援用を通知すると、その連絡自体が交渉のきっかけになり、結果として不利な合意につながることがあります。判断材料(契約日・最終入金日・裁判手続きの有無)が揃っていない段階では、先に専門家に確認したほうが安全です。
Q. 古い請求が怖くて、何年も封筒を開けられません。
A. その状態が続くと、裁判所からの書類が届いたときにも期限を逃してしまいます。つらいときは、よりそいホットライン 0120-279-338(24時間・無料)など国が案内する窓口を先に使ってください(厚生労働省「まもろうよ こころ」)。封筒を一緒に開けてくれる人を見つけるところからで構いません。
まとめ:時効は「待つ制度」ではなく「主張する制度」
dカードの利用代金にも消滅時効はあり、期間は原則5年です(民法166条1項1号)。ただし時効は援用しなければ効果が生じません(民法145条)。そして承認があれば新たに進行を始め(民法152条)、裁判上の請求や支払督促があれば完成が猶予され(民法147条1項)、権利が確定すれば時効期間は10年になります(民法169条1項)。
だからこそ、古い請求が届いたときにやることは決まっています。その場で支払いや猶予の話をしない。書面を保管し、日付を確認する。差出人が実在する会社かを法務省の一覧で確かめる。そのうえで、援用できるのか、それとも手続きで決着させるのかを判断します。
時効を待つ選択は、相手が動かないことに賭ける方法です。一方、いま決着させれば、信用情報の「完済後5年」のカウントが今日から始まります。どちらが自分にとって早いのか、判断材料を持って考えてください。
借金に関する相談は、無料で受け付けている窓口が多くあります。まずは話だけでも聞いてみるのがおすすめです。
📚 出典(公的機関・法令)を見る
- 民法 145条(時効の援用)・147条1項2項(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)・150条1項2項(催告による時効の完成猶予・再度の催告に効力なし)・152条1項(承認による時効の更新)・166条1項1号2号(債権等の消滅時効=知った時から5年、行使できる時から10年)・169条1項(確定判決等で確定した権利の時効期間は10年)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 民事訴訟法 382条(支払督促)・391条1項(送達を受けた日から2週間以内に督促異議の申立てをしないときの仮執行の宣言)・395条(督促異議の申立てによる訴訟への移行)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109
- 民事執行法 152条1項(給料等の4分の3に相当する部分の差押禁止)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004
- dカード利用規約(会員規約)2026年7月(株式会社NTTドコモ・フィナンシャルグループ/カード会員番号が「4363」「5344」「5365」から始まるdカード用)=34条1項(当然に期限の利益を失い、直ちに債務の全額を支払う)/44条1項2項(債権回収委託・債権譲渡)/62条1項1号2号・2項(ショッピング利用代金の遅延損害金=分割払い等の残額は法定利率、それ以外は年14.5%)/94条(キャッシング利用代金の遅延損害金 年20.0%) https://dcard.docomo.ne.jp/std/kiyaku/pdf/d-card_kiyaku20251212.pdf
- dカード パーソナルデータの取り扱いに関する同意事項(延滞の事実=CICはdカード契約期間中および同契約終了後〔完済していない場合は完済後〕5年間、JICCは同5年以内) https://dcard.docomo.ne.jp/std/kiyaku/pdf/d-card_personaldata.pdf
- dカード公式「お支払い日に間に合わなかった場合は」(支払期日超過後の窓口=NTS債権回収株式会社 dカード受託センター 0570-783-890) https://dcard.docomo.ne.jp/st/attention/lost_oshiharai/index.html
- 法務省「債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧」(NTS債権回収株式会社〔一覧では全角表記〕=許可番号7・営業許可年月日 平成11年6月1日・本店所在地 東京都港区芝浦三丁目16番20号) https://www.moj.go.jp/housei/servicer/kanbou_housei_chousa15.html
- 消費者庁「消費者ホットライン」(困ったときは、一人で悩まずに、「消費者ホットライン」188にご相談ください/「国民生活センターと消費者庁をかたる偽ハガキにご注意ください」) https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/
- CIC よくあるご質問「支払いが遅れると、ブラックリストとしてCICに登録されるのですか?」(当社が保有する信用情報に、ブラックリストという名のリストはありません) https://www.cic.co.jp/faq/detail/cre/cre01/002582.html
- JICC「信用情報の内容と登録期間」(契約日2019年10月1日以降は契約継続中及び契約終了後5年以内) https://www.jicc.co.jp/aboutus/credit-info/registration
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」(よりそいホットライン 0120-279-338) https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/soudan/tel/
本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の判断は弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。(制度・数値は2026年9月時点)
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